西からきた少女 2



「それでは、試験を開始する。各々、自分の護衛召喚獣を呼び出すのだ。」
 フリップの言葉と共に、それぞれが呪文を詠唱し、任意の護衛召喚獣を呼び出す。
 マグナはロレイラルより、レオルドを。
 トリスはシルターンより、ハサハを。
 そして、はサプレスより、バルレルを召喚した。
 マグナとトリスの方は、それなりにすぐ仲良くなったようだが‥‥。
「いいか、俺はテメェのことなんざ知ったこっちゃねぇぞ。」
「‥‥‥‥そんな事言われても、協力してもらわないと――。」
「ケッ!」
 とりつくしまもないって感じ?
 そんな二人の様子を、マグナとトリスはあたふたしながら見ている。
 フリップはニヤつきつつ、召喚獣と共に戦い、勝つのが試験合格の条件だと言い放つ。
 放たれた魔物にトリスとマグナはてんやわんやしつつ、応戦する。
 当然、の方にも魔物はくる訳でして。
「バルレル、手伝って欲しかったりするんですけど‥‥。」
 そっぽ向いて、激不機嫌そうな顔をしているバルレルに、実に控えめに言ってみるが‥。
「ハンッ、俺様の力を借りたいなら、テメェもそれなりの能力見せてみやがれってんだ!」
「‥‥‥‥しょうがないなぁ。」
 その余裕の表情を見て、フリップはに対してのみ、更に魔物を向かわせた。
 マグナとトリスは、試験官の信じられない行動に驚きを隠せない。
 すでに二人は敵を倒しており、合格ラインに乗っかっていて、後はの決着がつくのを待つだけだった。
 余りの事に、ラウルがフリップに怒りを飛ばす。
「フリップ殿!どういうおつもりじゃ!!」
「あの小娘は、そこの二人とは違う。少々ハンデをつけるのは、当たり前だろう。」
「だからといって‥‥っ」
 は目の前に現れた、身の丈ほどのサハギンを見た。
 明らかに、マグナやトリスが戦ったものとはレベルが違う。
 だが、彼女は慌てる事なく、腰にさした短剣を抜いた。
「さて、と‥。では、いきますかね。」
 痺れを切らして攻撃してきたサハギンの一撃を、あっさりかわすと、その勢いのままに剣で脇腹を薙ぐ。
 そのまますり抜け、意識を集中して言葉を放った。
「エビルファイア!」

 ――一同が、ぽかんと呆気に取られる中、はなんでもなかったように剣を納め、バルレルに近寄る。
「こんな感じなんだけど、OKかな?」
「‥‥お、おメェ護衛される必要、ないんじゃないか‥‥?」

 試験に合格し、派閥の中をラウルに案内してもらう。
 一通り見て回り、とりあえず休憩してから調べ物をすることにしたは、バルレルと共に導きの庭園でくつろいでいた。
「あ、さーーーーん!!」
「??え、あぁ‥トリスに、マグナ‥だっけ?」
 近付いてきたトリスとマグナに、挨拶をする。
 三人+護衛獣は、座って話しをする事にした。
「ええと、ちゃんと自己紹介するね。私は、西の方からきたの。」
「私はトリス、こっちはマグナ。」
「よろしく。」
 にこにこ笑って挨拶してくれるマグナも、明るいトリスも、はすぐに好きになった。
 フラットの皆を思い出すような、暖かさがあって。
でいいよ、さん付けってなんだか変な感じだから。」
「じゃあ、俺達も敬語ナシでいこうな。」
「OK。」
 こんないいコ達なら、文句なく友人になりたいよ、なんて思える。
 ‥‥イイコとか言っても、と同年代なんだけども。
「それにしても、なんであんなに強いんだ?」
「そうだよね、ラウル師範から聞いたんだけど、なんか勉強しにきたって‥‥。」
 それに、ギブソン先輩とミモザ先輩の家に泊まってるって聞いたし。
 マグナとトリスの言葉に、は少々驚いた。
 知り合いだったとは、聞いていなかったから。
 まあ、よくよく考えれば、ギブソンとミモザの後輩にあたる訳だから、知っていても不思議ではないのだけど。
「うん、勉強しにきたの。‥‥強いっていうか‥‥そうだなぁ‥。かなり実践積んだのよ、それはもう凄く。」
「へぇ‥召喚術は誰が?」
 ソルに‥と言おうとして、慌てて口をつぐむ。
 名前でバレる事はないかもしれないが、リスクは避けるべきだ。
「名前は言えないんだ、ゴメンね。」
 なんだかんだヒミツ主義みたいで嫌なぁと思うものの、トウヤになるべく例の事件の事や自分達の事は伏せておいてくれと頼まれているのだから、仕方ない。
「‥‥でも、一つだけ。私はね、別の世界からきたの。」
「「‥‥ええっ!!?」」
 二人して、ナイスリアクション。
 くすくす笑いながら、少しだけ説明する。
 儀式中の事故で、リィンバウムに呼ばれた事。
 帰れないらしい事。
「‥‥なんか、大変なんだ‥‥。」
 トリスが盛大に息を吐く。
 でも、自分としては、これはこれでいいと思えているのだから、可哀想でもないのだ。
「ところでトリス達は、任務もらったの?」
「‥‥一応。」
 二人の顔が少々曇ったのを、は見過ごさなかった。
 何か、嫌な任務でも与えられたのだろうか‥‥。
 詳しく話を聞いてみると、まるで追放のような名ばかりの任務で。
 あのフリップと言う男‥‥、はっきり言って、ヤバイぐらい嫌いだ。
 だが、派閥の正式な人もを蹴る事は、師匠に迷惑をかけることにもなる。
 トリスもマグナも、ラウル師範にこれ以上の迷惑をかけないため、任務を受けて旅に出るという。
 ‥‥偉い。
「そっかぁ‥。私もついていきたいところだけど、まだココでやる事あるから‥‥。」
 ゴメンと言うと、トリスもマグナも首を振った。
 謝る事ではないのだから、と。

「折角友達ができたのになぁ‥バルレルも残念だよね。」
「知るか。」
 ‥‥‥可愛くない。
 ギブソンとミモザの家に当分やっかいになる事になった、とバルレル。
 この時はまだ、自分達がトリスやマグナに‥‥また凶悪な悪魔に関わるなんて、これっぽっちも思っていなかった。




全く方向性見えてませんの第二話…(汗)
とりあえず、自分護衛獣はバルレルです。大好きなのです、彼。
物凄いオリジナルですみませんな感じになりそうですけれど、
基本ベースは本編なんで。いえ、番外編余裕で入ると思いますが。
更新ペースなるべく崩さないように頑張ります。

2002・3・19

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