我が職場は、外より熱い…。
などと思いながらアップ。
(粘着してる?)
あ、と思った瞬間には衝撃があって、我知らず体が斜め方向に向かって押し出される。
体を捩って威力を削げるような、生温いものではなく。
マリアは声を噛み殺したままで、場外へと吹っ飛ばされた。
「……アイク。私に何か恨みでも」
「いや、ない」
しれっと答えるアイクに、マリアは小さく唸る。
乱闘帰りの廊下をアイクと二人で歩きながら、今日の試合を思い返す。
思い起こせば起こすほど、マリアは眉間を寄せていく。
「どうした」
「やっぱりアイク、粘着してた。私に」
「……そうか?」
「結果を見たら分かるでしょ。私をぶっ飛ばした人、貴方しかいないんだし」
マリア、アイク、スネーク、ネスで4人の乱戦だった。
マリアは3度場外に飛ばされた。そのいずれもアイクの手によるものだ。
確かに他の人に、ダメージを蓄積されてはいたが。
気づいたらアイクが側にいる、というのは偶然にしては少し不自然のような。
「……すまん」
「謝ることはないよ、だって乱闘だもの」
ただ不思議なだけであって、謝罪を求めているわけじゃない。
アイクは立ち止まって、暫し床を見つめた。
マリアもならって止まる。
「……俺は多分、あんたを誰かに傷つけさせたくなかったんだと、思う」
マリアは目を瞬く。
「乱闘中は、基本的には衝撃だけで、怪我はしない仕様だよね?」
「知っている。それでも、あんたが誰かの攻撃でやられるのは好きじゃない、ようだ」
他人の攻撃でやられるのなら、いっそ自分の手で!
と、そういうことだろうか。
アイクは大きくため息を吐く。
「何がしたいのか、俺にもよく分からん。次からは気を付ける」
忘れてくれと言い放ち、彼は歩を進めた。
マリアは何かを訊ねたい気がしたが、疑問が口に上ることはなかった。
聞きたいことが、形になってくれなくて。
ただ何となく、思う。
「アイクの不器用な優しさ、なのかなあ……?」
疑問調でひとりごち、先を行くアイクを追った。