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スマブラX夢

 渡航前に携帯から夢とか。
 今朝からずっと終点の曲が頭に流れている…。
 とにかく行ってきます。


続き


 アイクと夢主。

「どうしたら、そんな風になれるんだ?」
 アイクの問いは、側で弓の調整をしていたマリアにとって唐突だったらしい。
 あぐらをかいて床に座っている彼女は目を瞬かせ、矢尻を摘まんだ形のまま首を傾げた。
 明らかに言葉足らずではあるが、
「えと……弓のこと?」
「そうだ」
 マリアにはアイクの言わんとすることが分かったらしい。
「アイクと一緒だよ。懸命に訓練する。それだけ」
 弓を使ってみたいのかと訊ねられ、アイクは首を振った。
 自分には弓という武具は合わない気がする。
 人並みには扱えるかも知れないが、マリアのように正確無比には無理だ。
 それに。
「人には素質があるだろう。俺の仲間にも弓使いがいるが……まあ、俺が弓を修得したいなどと言ったら、鼻先で笑われるだろうな」
「そうなの? 確かに才能云々は関係あるかもだけど……けど私にはないと思うよ」
 アイクは片眉を上げる。
 マリアは矢のしなりなどを確認し、矢筒にしまった。
「それまで弓に余り触ったこともなかったリンクが、勇者の弓をいきなり見事に使いこなしたりするの見たらね」
 才能ある人っていうのは、こうも違っているのかと驚いた。
 言って笑うマリアには、何の痛みも妬みも見られない。
 ただ純粋に、リンクが凄いのだと言えてしまう彼女は、本当に彼を信頼しているのだろう。
 アイクは微かに眉を潜める。
 何が理由でか、一瞬、リンクに酷く腹がたった。
「ずっと、リンクと旅をしていたのか」
「そう。私とリンクと、あとミドナっていう友達と」
「……そうか」
 乱闘に参加しているのは、それぞれの世界で名の知れている者ばかりだ。
 聞きかじりではあるが、確かリンクはハイラルを救った勇者であるはず。
 ゼルダはハイラルの王女(年齢の関係で姫と呼称されているようだが)だし、ガノンドロフに至っては、彼らとは敵対していた魔王であるし。
「マリアも勇者なのか?」
「私は違うよ。何の力もないもん」
「……自分を余り卑下するな。リンクもゼルダも、お前の力を必要としている」
「卑下してるつもりは……でもたまにね、物凄く自信がなくなったりするの。アイクはそういうの、ある?」
「なくはない。だが意味のない不安に時間を割くなら、高みを目指して剣を振る」
 マリアは、
「アイクは凄いよ」
 微笑んだ。
 彼女はいつもこうして、感情を真っ直ぐにぶつけるように思う。
 常頃、彼女と一緒にいられるリンクを羨ましく思った。
「あんたを側に置いて、暮らしてみたいものだな」
「今一緒に暮らしてるじゃない」
 多分、自分が求めている『暮らし』とは形が違うと思いながら、アイクは黙ってマリアの頭を撫でる。
 アイクは自分のしたいことを優先させてきたし、だから誰かを側に置くことなど、考えもしていなかった。
 特定の誰かを作るのは、面倒だとさえ思っていたから。
 その自分が、会って間もないマリアに不可思議な感情を抱いていることは、かなりの驚きだった。
「……俺は一体、あんたの何に惹かれてるんだろうな」
「……はい?」
 間の抜けた声を返すマリア。アイクは首を振る。
「いや……気にするな」
 マリアは首を傾げ、気になるよと雰囲気で訴えながらも、質問はしなかった。


 たいした会話もなく、その後も一緒に居続ける2人。
 ただ在るだけ。
 無言の空間さえ心地いいと、アイクは微かに微笑む。

 ――こんな日が、ずっと続けばいい。