アイクと夢主。
あとでちゃんと書きなおしたいと思います。
リンクもゼルダも、それぞれ乱闘に出ていた。
マリアには要請がなかったので、じゃあ暇つぶしに近場を散策しようと、城の近くにある森をぶらぶら歩いていた。
余り離れず、近場をふらついていると、
「あれ、あの人は……」
青年が独り、剣を振るっているのが目に入った。
深い青の髪。
均整の取れた筋肉が、見るからに重たそうな大剣を操っている。
凄い。
彼が剣を振ると、周囲の空気が割り開かれるような気がする。
リンクとは全然違う種の剣士だ。
「……俺に何か用があるのか」
「あ、いや、ごめんなさい。邪魔する気はなかったのだけど」
彼は剣をもうひと振りすると、鞘に収めた。
マリアは彼に近寄る。
「初めまして、マリアです」
「俺はアイク。グレイル傭兵団の団長をしている。お前はリンクの仲間、だったな」
「はい。団長さんも、乱闘に参加するんですよね」
「アイクでいい。それから敬語もいらん」
了解しましたと微笑み、マリアはアイクの剣をしげしげと眺めた。
リンクのマスターソードより大きくて、ついでに重たそうだ。
なのにそれを片手で操っている。
余程の豪腕なのだろう。
「お前も参加するのか。獲物は……腰の短剣か?」
「いえ、じゃなくてううん。私の主要武器は弓」
「そうか。手合わせしてみるか?」
真っ直ぐ見つめられながら言われる。
マリアは少し考え、
「アイクって、手加減しない性質(たち)でしょ」
言いきる。
「誰かに聞いたのか」
「ううん。でも、なんかそんな感じがしたから。私、対人は苦手なんだけど……稽古つけてくれる?」
弓を持ってくるから。
彼を覗き見ると、アイクはふっと表情を緩めた。
――優しい顔だなあ。
「マリア」
「ん?」
「……いや。弓を取ってくるといい」
「うん! すぐ戻る!」
アイクが頷くのも待たずに、マリアは駆け出した。
「ただいま……ってマリア!? 何かあったのか?」
「ああ、リンク……」
マリアは、疲れた面持ちで扉に手をかけていたが、リンクの姿を見て立ち止まった。
「乱闘終わったんだ?」
「ああ。それよりさ」
「うん、ちょっと、さっきまでアイクに稽古つけてもらってたんだけど……あはは、彼強いね」
「アイク、手加減しないだろ」
「ほんとに全然しない」
彼に毎日鍛えられたら、相当強くなれそうだ。
リンクは息を吐き、後頭部を掻く。
「無理するなよ? 練習なら俺も付き合うし」
「ありがと! ……ちょっと夕御飯まで寝る。ほんとに疲れたから」
「分かった。後で呼ぶよ」
よろしくと言い放ち、マリアは部屋に入る。
後で弓の調整もしなければ。
腰の短剣をサイドボードに置いて、ベッドに寝転がる。
「アイク、強いなあ……頑張らなきゃなあ……」
私も乱闘に出るみたいだし。
ふう、と瞼を閉じる。
そのまま布団もかけずに寝てしまい、リンクが呼びに来るまで、全く目覚めなかった。