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携帯逆裁夢3

友人が逆転裁判やってる横で、ぽちぽち書き上げた品。
泊まりに来て何してんのだか(汗)


逆裁1の4。
成歩堂前提で御剣とお話。

続き


 殺人の容疑者として逮捕され、留置所に入れられた御剣は、まりあからは、やはり少し顔色がすぐれないように見えた。
『君にだけは弁護を頼まん』
 彼ははっきり、成歩堂にそう告げた。
 梃子でも動きそうにない彼の様子に、成歩堂はイスから腰を上げる。
 彼が何かを隠しているのは確実。だとしたら、今必要なのはここで彼と話をしていることではない。
「……また来るよ、御剣」
「あ、なるほど君。ちょっと先行ってて。私御剣さんともう少し話するから」
「じゃあぼくも……」
「すぐ終わるからさ!」
「いや、でもさ」
 複雑そうな表情を浮かべる成歩堂。
 ちょっとだけ出ててねと、半ば強引に、彼と、驚いている真宵を押し出した。
 ふう、と一息つき、改めて御剣に向き直る。
「わたしに聞き忘れでもあるのだろうか。何度も言うが、彼に弁護を頼むつもりはない」
「いや、それはそれとして。私、言いたいことがあって。……まあ個人的に」
 なんだろうかとこちらを見る御剣。
 まりあは微笑む。
「御剣検事、安心して下さい」
「なにを、だ?」
「助けますから」
 彼はまりあをまじまじと見、
「……君は人の話を聞いているのか?」
 呆れたみたいに溜め息をついた。
「聞いてない風ではありますが、御剣検事の意向は分かってますよ」
 言葉を挟もうとした御剣を、まりあは軽く手で制す。
 とりあえず聞いて、の意。
「なんで関わらせたくないかも、今は言ってくれないでしょう? だから返答はいいです。けど、貴方が嫌がっても助けます。少なくとも、なるほど君はそうします。もちろん私も」
「…止めてくれと言っている」
「止めません」
 はっきり、きっぱり断る彼女。御剣の眉根がきつく寄せられる。
 だが嫌悪の表情ではないと、まりあは思う。分かりにくいが、困惑、だろう。
「貴方はこの前の裁判で、なるほど君を助けてくれた。私の親戚で雇用者の彼を。私は恩を感じてます。だから助けます。意地でも」
「余計なことだ」
「それでもです」
 御剣は暫くまりあをじっと見ていたが、ややあって苦笑した。
 何かを失敗した、出来の悪い弟子を許すような、笑み。
「…さすが成歩堂の親戚だな。諦めの悪さがすさまじい」
「…そうでもないっていうか、私のはワガママに近いかと」
「ワガママ?」
 まりあはこくんと頷く。
「知り合いが傷付くの、見たくないんですよ。特になるほど君に関わりの深い人のは」
 その誰かが傷付くと、成歩堂も少なからず衝撃を受けるから。
「……果報者だ、あの男は」
 呟く御剣。
 まりあは笑う。
「いやあ、苦労してると思いますよ、私みたいな親戚が側にいて」
 言うと、彼女は立ち上がる。
 そろそろ行かなければ。
 成歩堂はどうか分からないが、真宵が痺れを切らしそうだ。
「また来ますね。今度は口を割らせる材料を持って」
「ム……。そうならないように願っておこう」
 絶対に見つけますからと笑いつつ立ち去るまりあ。
 彼女の背中が扉の向こうに消えたのを見て、御剣はそっと息を吐いた。
「……親戚、か」
 果たして成歩堂がそう思っているのだろうか。
 まりあに、部屋から押し出される前に見せた、彼の表情。明らかに『親戚の女性』にするものではなかった。
「……苦労が多いな、成歩堂」
 全く気配を感じ取られていない幼馴染を、少し不憫に思う御剣だった。