乱闘のお城にご滞在



「なんていうかさ、巷では『勇者』と言われている人が、『乱闘』ってのはどうかと思うの」
「確かにそれは……けど、気にしたらいけないところじゃないか、『ここ』に関しては」
 確かにねえと言いながら、は設えられたベッドに思い切り寝転んだ。
 ふかふかで気持ちいい。
 例えるなら、ゼルダのベッドぐらい気持ちがいい。
「そういえば、彼女も来てるよね、ここ」
「彼女って」
「ゼルダ」
「ああ。それと……何故だかガノンドロフもいるな」
「どうせなら、ミドナも来たらいいのにねー」
 リンクは無茶言うなと苦笑した。


 どことも知れぬ場所にある、巨大な城。
 そこに集められた、所謂『実力者』たち。
 目的は、乱闘。
 殺しあいではない。純粋に互いの力と技との競い合い。
 ただし、その人選ときたらデタラメもいいところで、リンクが倒したガノンドロフやら、本来ならハイラル城にいるはずのゼルダやら。
 他の乱闘面子も、敵対していようがしていまいが、全くお構い無しの状態らしい。
 『乱闘者』たちには、それぞれ個室が与えられている。
 この部屋がリンクのものであるように、にも部屋が宛がわれていた。
 入り口のプレートに『様』とあったのだから、きっとそうだと思う。
 乱闘の招待状などは貰った覚えがない。
 でも入場者用の扉が見えたし(他の村人には見えもしていない不思議)、入れた。
 招かれざる客に、部屋を宛がったりはしないだろう、ということで居座っている。
「私も乱闘することになるの、かな?」
「どうかな。まあ確か強制ではないし、嫌なら断ればいいさ」
「……けど、ちょっとリンクとは戦ってみたいんだよね」
 の発言に、リンクは目を瞬く。
「俺と? どうして」
「いつも守ってもらってるけど、弓の腕だけは負けてないはずだし」
「俺は、とは戦いたくないな……」
 苦笑しながら、リンクは窓際に寄る。
 もベッドから起き上がり、彼の横に立って外を眺めた。
「不思議なとこだよねえ」
 視界に入るだけでも、様々な地形が見てとれる。
 穏やかな平原や、森や川。
 時折、空には天空城らしきものも見える。
 乱闘場所へは城の区画にある扉から、それぞれ移動ができた。
 が見たこともないような場所や、リンクやミドナと冒険した、影の民が使っていたみたいな、鋼色の壁の場所もあった。
 一通りリンクとゼルダに案内してもらったが、驚くことばかりだ。
「不思議といえば、リンクが二人いるのも不思議。なついてくれて、嬉しいけど」
「トゥーンリンクな」
 にじゃれつくトゥーンリンクを見ていると、少し複雑な気分になるらしく、リンクは軽く息を吐く。
 彼の様子には気づかず、は笑顔を浮かべた。
「みんなと仲良くできたらいいな。ガノンドロフともちゃんと話してみたいしさ。せっかくだし」
「……あんまり危ないことするなよ?」
「大丈夫だよ。なんかあのガノンドロフ、ゼルダに頭が上がらないっぽいし」
「ところ変われば、ってやつかな……」
 しみじみ言うリンク。
 その直後、ノックがあった。
「はい」
「リンク、召集だよ」
 顔を出したのは、青い髪色が綺麗な王子、マルスだった。
 むしろ特筆すべきは、髪ではなく、稀に見る美形の方かも知れないが。
「やあ。ここには慣れたかい?」
「まあ、まだまだこれからですよ。マルスとリンクで乱闘を?」
「他には、アイクとトゥーンリンクだね」
「……見事に剣士ばっかりだな。訓練には丁度いいけど」
 リンクは言って、剣と盾を身に付けた。
 その間にマルスがの手をとる。
 間近で見る彼は、失礼ながらそこらの女性より綺麗だ。
、見に来るよね?」
「え? うん、そうだね」
「じゃあ僕を応援してくれるよね」
 満面の笑みで言われ、も同じ笑みを浮かべ、
「うん、みんな応援するから!」
 答えた。
 隣にいるリンクが笑いをこらえ、マルスはといえば、やはり面白そうに笑っている。
「マルス、行こう。時間がなくなる」
「なあリンク、彼女はいつもああなのか?」
「多少、他人の好意に疎い所はあるよ。だから俺も苦労してるんだけど」
「二人で何こそこそしてるの? 行くんでしょ」
「うん、行こう
 マルスがの手を引き、部屋を出ていく。
 リンクは余計な敵が増えていると思いつつ、彼女らの後を急いで追った。



スマブラXの初設定というか、まあはじめです。
(雑記掲載日 2008・6・5)