お願い




「ギブソンとミモザについていくだって!?」
 ソルの声が、フラットに響き渡る。
 同席していたガゼルとトウヤは、久々に彼が声を荒げたのを聞いた気がする。
 その彼の声の矛先は、トウヤと同じ世界から、彼と一緒に召喚されたに向けられていた。
「うん、聖王都の、蒼の派閥本部に行くって言うから、便乗させてもらおうと思って。」
「っなんで!」
「召喚術の勉強してこようと思って。」
「俺が教えるんじゃダメなのか?」
「いいんだけど、色々見て回りたいし。」
 折角だからと、ニコニコ笑っている
 言い負かされずに、トントンと話を切り返す。
 それでも、ソルはどうしても彼女を出て行かせたくなかった。


 リィンバウムに運命とも言えるような事故で召喚された、トウヤと
 トウヤは、リンカーとしての力をつけ、もまた召喚術師としての力をつけ、トウヤに加勢し、仲間と共に魔王を打ち負かした。
 その後、リィンバウムに腰を落ち着けた二人は、その時の仲間達と過ごしていたのだが、そこへいきなり、が出て行くと言い出したのだった。
 他の仲間ならいざ知らず、とトウヤは一心同体的な所もあり、そんな彼女が出て行くと言い出すなんて、ソルには考えもしない事で。
 考えたくなかった、というのもある。
 ソルは、一緒にすごしていく中で、を大切な女性だと認識していたから。
 猛反対の理由は、自分が離れたくないからだった。

「ちょっとの間だけ、ちゃんと戻ってくるし‥‥‥‥。」
「っ‥‥勝手にしろ!」
「あっ、ソル!!」
 イラついた表情で、出て行ってしまうソルに、は深い溜息をこぼす。
 どうして、あんなに怒るのか判らない。
「‥‥ガゼルも、トウヤも‥‥反対?」
 今まで押し黙っていた二人にを見る。
 ガゼルは、う〜んと唸った。
「俺は、別にいいと思うぜ?ちゃんと定期で連絡さえすれば。」
「‥‥トウヤは?」
 不安そうに見つめる
 もし、トウヤがダメと言うなら、行かないつもりだ。
 彼がダメという場合、大抵はその行動にリスクが大きい時で、の身の安全を第一に考えての事だったから。
「‥‥僕も、反対しないよ。あの二人が一緒ならね。」
「よかった!‥‥でも、ソルが‥‥。」
 シュンとするの頭を撫で、トウヤは優しく言う。
「大丈夫さ、ソルは不安なだけだから、が離れていくのが。」
「トウヤも、私いなくなったら、寂しい?」
「当たり前だよ、でも、にしたい事があるなら、止められないだろ?」
「ありがと‥‥。ソル捜してくるね!」
 いってらっしゃい、という間に、は駆け出して行った。
 ガゼルがじとっとトウヤを睨む。
「‥‥ホントにお前等、ハタから見ててラヴラヴだよな‥‥。ソルがヤキモキするのも判るぜ‥‥。」
「普通にしてるんだけどなぁ‥‥。まぁ、をそこらの男にやるつもりはないけどね。」
 お茶を飲みつつ、さらりとすごい事を言う。
「‥‥ハラグロめ。」


 ソルはサイジェントから少し放れた荒野にいた。
 とトウヤは、この荒野の向こうで召喚された。
 その方向を、ぼーっと見ているソルに、は声をかける。
「ソル!」
「‥‥か。」
 振り向かず、じっと前を見続ける。
 はソルの隣に座った。
「‥ソル、私は‥‥」
「行って来いよ。‥俺の勝手な言い分で、お前を止められる訳じゃないからな‥‥。」
 諦めたような表情。
 はどうしても、ソルにも納得して欲しかった。
 気持ちよく、行って来いと言って欲しい。
 それは、自分の我侭かもしれないが‥‥。
「ソル、どうして怒ってるの?」
「‥‥お前がっ‥俺の知らない所で、俺の知らない誰かと付き合いだしたりしたら嫌だからだ!」
 誰にも渡したくない。
 まだ、自分は好きだと言えていない。
 それなのに、彼女は出て行ってしまう。
 戻って来た時に、隣に男がいたりしたら‥‥自分はどうなるのか考えたら、怖くなって。
「私は、誰かと付き合ったりしないよ。」
「そんなの分かるかよ‥‥。」
「どうして?」
「男に言い寄られて、お前、断りきれるのか?」
 お願いされると、断りきれない節のある彼女だから、余計に心配なのだ。
 なら、さっさと告白してしまえばいいのに、勇気が出ない自分も情けない。
 は、ちょっと考えてソルを見た。
「ちゃんと断れるよ。」
「‥‥どうして。」
「そういう時は、ソルの事思い出すから。」
「―――っ」
 彼女の微笑みに負け、思わずその体を抱きしめてしまう。
 少しびっくりしたようだったが、嫌がることもせず、ソルの背に腕を回した。
 一秒だって、離れたくないのに、彼女は行ってしまう。
 好きだと言えば、彼女は行かないだろうか。
 ‥‥そんな事をして繋ぎとめても、彼女の負担になるだけだと知っているから‥‥言えない。
「行って来い。ちゃんと‥‥帰って来いよ? そしたら‥‥俺、お前に言いたい事があるんだ‥‥。」
「今じゃ、ダメなの?」
「‥‥今はダメだ。帰ってきたら、言う。」
 体を離し、見詰め合う。
 ソルは、にキスをした。
 ‥‥本当は、口唇にしたかったのだけれど、それは後に取っておくと言う事で、頬に。
 としては、頬でも凄い破壊力なのだけれど。
 彼女の顔は、真っ赤だ。
「‥‥行って来るね。」
「ああ、待ってるからな。」
 そうして、再度抱きしめあう。



荒野の風は、二人を緩やかに撫でた。





久々サモナイ夢。しかも、ソル。
私は、ソル大好き人間です(笑)
しかし、またも駄文っぷりを披露してしまいました‥‥ほんとにもう;;
リューグとかも書きたいんだけど、クリアしていないので‥‥ネタがっ。
まあ、またボツボツと書いていきます‥‥。
しかし、荒野で抱き合う二人って、図的にはカッコいいような。
吹きさらしで強風だと、大変な事ですが(笑)

2002・3・14

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