最後の刻 3






 アメルとが、ルヴァイドとイオスの治療を済ませ、機械遺跡に戻った時――その周りの空間は歪み、遺跡はその形をほぼ完全に失い、元遺跡の前に、皆がいた。

 傷ついた体をかばうようにして立っている仲間数人に、素早くアメルがかけより、治療を施す。

「い、一体これは……」
 余りの遺跡の変貌振りに、口を半分開けながら、がバルレルに状況を問う。
「ああ、メルギトスを倒したと思ったら、機械遺跡自体に取り憑いて…このザマだ」
「じゃあ…あの、奥のは……」
「メルギトスだ。自称…機械魔メルギトス、だとよ」
「治療、終わりました!」
 アメルの言葉で、皆、それぞれ武器をしっかりと持ち直す。
「これが……最後の、最後!!」
「行こう、皆!!」
 トリスとマグナの声に、メンバーたちは己を、皆を、勇気を奮い立たせようと、声を上げた―――。


 赤紫の世界に、時折、黒が流れる空間。
 そこにいるだけで、押しつぶされそうなプレッシャー。
 以前、大悪魔と称する者と戦った者達は知っている、悪意という名の腐敗臭。
 醜悪さを全面に押し出したような世界は、大悪魔たる者が作り出す世界。
 少しでも気が折れれば――負けだと思えば、プレッシャーと悪意と醜悪さに揉まれ、どうなるか分からない場所。
 そこで、皆は悪魔とも機械とも言えぬ敵と、戦い続けた。
 傷つけては傷つけられ、果てのない力と魔力のぶつかり合い。
 確実にメルギトスの力を削ぎ、少しずつ進んでいく仲間たち。

 ケイナ、レナード、エルジンが、コアと見られる球体を攻撃し、その全てを破壊すると、メルギトスの攻撃が、苛烈さを増した。
 両手と思わしき左右のものが、突如、キャノン砲よろしく、攻撃を仕掛けてきて――
「きゃああ!!」
「うわぁああっ!」
「っ!!」
 マトモに食らった数名が、体を思い切り端まで吹き飛ばされ、背を打ちつけ、気絶してしまった。
 とバルレルは、丁度、射程距離外にいて被害はなかったが――他にも何人か、気絶しないまでも、傷を負った者たちはいた。
「こっ…のぉ…!!」
 は剣を持つ手に力を込めると、メルギトス本体に向かって突っ込み、腹部と思わしき部位に、痛烈な一撃を食らわせた。
 切れ目から、ぬるりとした液体が飛び散り、彼女の腕にかかる。
「いっ…」
 液体は、ビリッとした痛みを、彼女にもたらした。
 酸性ではないらしいが、体にいいものでは、まず、ない。
 メルギトスは、の攻撃で大したダメージを負ってはいないらしく、上からいやらしげな笑い声をよこした。
「ククク…花嫁よ、一人で懐に飛び込んで来るとは、無謀を通り越して愚かですよ…」
「うるさい!!」
 トリスとマグナ、リューグ、トウヤもソルもまだ、少し手前の方で、メルギトスの攻撃に耐えている。
 次々に湧いてくる敵に、四苦八苦している状態だ。
 その時――ハッと気づいた。
 メルギトスは――自分をわざと、己の近くに呼び寄せた――?
「な、何これっ…気持ち悪いっ!!」
 メルギトスの思惑だと気づいた時には既に時遅く、の手足に、彼の体から、触手のようなモノが出てきて絡みつき、宙吊りになっていた。
!!」
 トウヤとソルが何とか敵を殲滅させた瞬間、直ぐ近くで声が上がった。
「うわっ、何だチクショウ!!」
「バ、バノッサ!?」
 驚いた事に、バノッサの手足にも、と同じモノが絡み付いていた。
 トウヤとソルが、慌てて触手を切り払うが、ニュルリとしたそれは、切断面から、また触手を伸ばしあい、くっ付いて、何事もなかったかのように元に戻る。
 の方は、バルレルが何とかしようと、触手を槍で絡めとり、力任せに引きちぎるものの、やはりくっ付いて戻ってしまい、殆ど時間稼ぎにもなっていない。
 メルギトスが、己の体の下の部位で行われているそれを見て、ゲラゲラと下品な笑いをこぼした。
さん、バノッサ、貴方たちの力、頂きますよ」
「なっ…きゃああ!!」
「うわぁっ!」
! バノッサ!!」
 皆が叫ぶ中、二人は触手に完全に体の自由を奪われ――皆の目の前で――メルギトスに、飲み込まれた。

 ゴクリ、という音が、生々しく響く。

「ククク…花嫁の力と、バノッサの魔王の力が、私をより強大にする…。無力な人間たちよ、ちっぽけな悪魔よ、己が運命を呪うがいい!」
 メルギトスが咆哮と共に、全身から光を発したかと思うと、その光が一人一人を貫き、皆に激痛を与える。
 まるで、槍で串刺しにされたのではないかと思える、痛み。
 矢次に放たれる攻撃の前に、殆どの仲間が倒れ行く。
 だが、それを全身で受けながらも、弱点と思われる部位の前まで来た者たちがいた。
 トリス、マグナ、ネスティ、
 トウヤ、ソル、アメル――そして、バルレル。
 皆、既にボロボロではあったが、気が折れてはいない。
 己の力を信じ、仲間を信じ、全力でメルギトスに立ち向かう。
 召喚術で、武器で、とバノッサを助けようと、必死にあがいた。

「バルレル、俺とトウヤが上へ投げる! とバノッサを…」
「分かった」
 ソルの言葉に、素直に頷くバルレル。
 何処から見ても、とバノッサがどの部位にいるのか、直ぐに分かった。
 上――メルギトスの胸部。
 淀んだ空間の中で、醜悪なメルギトスの姿の中で、そこだけが明るい光に満ちていたから。
 そこで……彼女と彼は、力を吸われている。
 多分、中で意識が同一化してしまっているのだろう。
 でなければ、もバノッサも、大人しくあんな中にいるはずがない。
 少しでもいい。
 中で、目覚めてくれれば――あがいてくれれば――。
「バルレル、行くぞ!」
「おう!」
「行けぇっ!!!」

 トウヤを足がかりにし、ソルの召喚術の爆風で勢いをつけて浮き上がり、胸部に思い切り槍を突き立てる。
 思ったより硬かったが、何とか中へと突っ込む。
 突き立てた部分から、ドロドロした粘液のようなモノが出てくるが、バルレルは無視し、光の中にいる二人を見た。
 メルギトスは槍の痛みなど感じもしないのか、呻く事もなく、ただ、バルレルの存在をうるさそうにするだけで、下にいる、トリスやマグナたちに、容赦のない攻撃を加えていく。
 淡く光り、目を閉じているとバノッサに向かって、
 バルレルは思い切り叫んだ。
「起きやがれ!! 寝てる場合か!!」


 は、奇妙な心地良さの中にいた。
 母親の羊水の中にいるような――はるか昔に、絶対の安心を持って過ごした時のような、心地よさ。
 だが、体から何か――起きろ、と叫ぶものがある。
 何故、起きなければいけないのか。

(ずっと、この心地よさの中にいればいいんですよ)

 そう言う声が、どこからか響く。
 起きるなという声は、清らか過ぎて、逆に悪意すら感じるが、そんな事、今のにはどうでもよかった。
 目を閉じ、宙に浮く感覚を享受する。

(そのまま、安らぎの中で眠っていればいいんですよ)

 ――違う。

 ふと、の頭の隅が、むくりと起き上がった。
 この声は、自分の求めている声――大事な声ではない、と。
 そこへ、唐突に…まるで割り込みをかけるかのように、不釣合いな怒鳴り声が響いて来た。

「さっさと起きろ! !!」



 ばっと目を開けると、粘膜らしきものの向こう側に、バルレルが見えた。
 襲い来る触手を、何とか払いのけながら、突き刺さった槍を足場に、必死にとバノッサを呼ぶ。
 目を横に向けると、隔ての壁の向こうで、バノッサも同じように目を覚ましていた。
「なっ…なに、どこ……ここっ」
 頭が混乱している。
 ――冷静になれ、と自分に言い聞かせ――そして、思い出した。

 ここは、メルギトスの、中だ。

 ぞくり、と背筋を薄ら寒いものが駆け上がる。
「バルレルっ!!」
 は粘膜の向こう側へ行こうとするが、殴っても、剣で切り裂いても、びくともしない。
バノッサの方も、同じらしい。
「さっさと出ろ! この馬鹿!」
「ばっ…で、出られないんだってば! この馬鹿!」
 言いあいをしている場合ではないというのに、ぎゃーぎゃー叫ぶ二人。
 バノッサは無駄にも関わらず、剣で無茶苦茶、粘膜を切り裂いているし。
 そのうち、触手が二人を改めて絡み取った。
「っ…!!」
「邪魔なもん出すんじゃねえよ!!」
 バノッサが抗議するが、そんなもの受け入れてもらえるはずもなく。
 バルレルの方も、触手の攻撃にいい加減、耐えられなくなってきていた。
 足場が槍だけという不安定さに、イラ付いてもいるようで。
「…こっちから、槍が刺さったんだ……ならっ」
 外からなら、破れるかもしれない。
 バルレルは思い切り力を込め、胸部に爪を食い込ませ――そのまま奥へと進める。
 だが、いかんせんサイズが小さいため、せいぜい肩口までしか入らず、たちのところまで、手が届かない。
「ちっくしょう…、誓約解いたままだったな!」
「え、うん…」
「いくぜぇっ!!」
 バルレルの全身が紫色に包まれたかと思うと、狂嵐の魔公子の姿へと変化していた。
「バルレル!?」
「うらあっ!!」
 バルレルは、全力で体をメルギトスの中へ食い込ませる。
 バノッサの方には手が届いたので、そのまま粘膜を魔力で破壊し、引っ張り出して、下にいるトウヤとソルに投げて渡した。
「次はお前だ! は、早くしろ…このドロドロ…キツイんだよっ!」
 切り裂かれた部分から流れ出る粘液は、バルレルの体力を著しく奪っていく。
「わ、わかった!」
 がバルレルに手を伸ばそうとした瞬間――
「魔公子…花嫁は、渡しませんよ!」
「きゃああ! いやーー!!」
!」
 ぐにゃり、と肉壁が迫ってきたかと思うと、は更に胸の奥へと、しまい込まれてしまう。
 バルレルは迫ってきた肉壁に、押し出されるようにして宙に投げ出され、仕方なく着地した。
!!」
 下で必死に戦っていた皆が、声を荒げる。
 メルギトスの体力自体は、かなり削られているはずなのに、攻撃が苛烈すぎて、力が入りきらず、致命傷には至らない。
 バノッサも攻撃に加わるが、まだ、が中にいるからか、メルギトスの力は削ぎきれない。
 バルレルは、トリスやトウヤ、マグナたちに、静かに告げた。
「お前らは、メルギトスを倒すのに全力を尽くせ。俺は――俺は、もう一度、行く!」
「バルレル!」
 ネスティが声を上げた瞬間には、バルレルの姿はメルギトスの胸部に向かって、足場を何とか見つけて駆け上がっていっていた。
「…僕らは、こっちに専念しよう!」
 ネスティの言葉に、一同が頷く。
 倒せない敵はいない――そう、信じて。


 肉壁の中で、は必死にあがいていた。
 場所的に、先ほどより間違いなく奥へと来てしまっている。
 自分の力――花嫁の力がメルギトスに力を与えている。
 何とか、出なければ――。
 だが、剣で切り裂いてみても、ドロリとした粘液が流れ出てきて、自分の体力を減らすだけ――。
 さっきのように、完全に閉ざされた場ではないようだが、表に出るのに、どれほどの力を要するだろうか。
「……バルレル……」
「……っ!!」
「!? バルレル!?」
 名を呼んだ瞬間に声が返ってきて、思わず驚きの声を上げる。
 粘液でべとべとになっている肉壁に、ヂリッとした痛みを伴いながらも手を置く。
「どこ!?」
「多分、真正面だ! …い、今、助ける…」
「私の方からも行く!」
「馬鹿! 大人しくしてろ! 粘液がお前に害を及ぼすだろうが!」
「バルレルだってそうでしょ!!」
 言うが早いか、はバルレルの声のする方に向かって、短剣を振るう。
 切ると、そこから粘液が溢れ出て、の体を蝕む。
 だが、無理矢理入ってきているバルレルの方が、はるかに辛いはず。
 そう思えば、受け身でいるのは柄ではなく。
 何度、剣を振るっただろう。
 薄い粘膜の向こうから、バルレルの顔が現れた。
、今っ…」
「あんた、傷だらけ……」
「うるせぇ、ちょっとどいてろ!」
 言うと、バルレルは己の魔力を思い切り溜め、粘膜に向かって放つ――。
 膜は、溶けるようにしてその道を開いた。
 は慌てて彼にずりよった。
 道が狭すぎて、立つ事は不可能なのだ。
「だっ、大丈夫!?」
「…こんなもん、大したもんじゃねぇ…さっさと戻るぞ。道がまた塞がる」
「うん」
(渡さないといったでしょう。……ついでです。邪魔な狂嵐の魔公子も、閉じ込めておきましょうか)
「!?」
 突然、とバルレルを粘膜が包み込む。
「チッ…芸がねぇな」
 先ほどと同じように、魔力をぶつけて溶かそうとするものの――彼の魔力は、粘膜に吸収されてしまった。
「なっ!!」
「やだ! どうして!!」
(…下のハエどもがうるさいですからね、始末し終えるまで、そこにいてください)
「出しなさいよ!!」
 叫んでみても、もうメルギトスは返事をしなかった。
 ――もしかしたら、もうすぐ……決着が付くのかもしれない。
 いくら、花嫁の力が体内にあるとはいえ、はまだ未熟。
 そのうえ、四棲のうちの二匹は既に解放済み――しかも、下で戦っているのは、誓約者とパートナー、調律者に、魔王の欠片を持つ者、天使に、融機人という、半ば反則的な強さを持つ者たち。
 消耗している証拠に、メルギトスの体内が、あちこち亀裂を走らせ始め、痙攣を起こしつつある。
「トリスたち、やってくれるかも!」
「メルギトスのアホに負けるかよ、あいつらが」
 自分たちが何も出来ないのが悲しい所だが――。
「…バルレル、一緒に、魔力ぶつけてみようか」
「……そうだな、ここでクサクサしてんのは、性にあわねぇ」

 とバルレルが、一緒になって魔力を放射する――と。
 いとも簡単に、粘膜が溶けた。
 そのまま肉壁に押し出されるようにして、外へ放り出される。
 そこで見たのは――メルギトスが、絶叫している所だった。

「みんなぁっ!!」
! バルレル!」

 皆、もう限界といった顔をしていたが、とバルレルが無事なのを確認すると、その顔をふっと綻ばせた。
 上からメルギトスが、うるさいほどの絶叫を上げている。

 バルレルに抱えられ、地面に降り立つと、トリスが駆け寄ってきた。
「ねえトリス、倒したの!?」
「うんっ!」
「そっか、だから粘膜が破れたんだ…」

「た、たかが人間と侮ってましたね…完全な誤算です…」
 メルギトスが苦々しく語る。
 だが、その目はまだ、死んでいない。
 そう、肝心な事を忘れていたのだ。
「ですが、まだ平原で戦っている人間の力がある……邪悪を振りまき、世界を混沌に叩き込む力はある…!!」
 言うと、メルギトスは己を限界まで高め、何か――おぞましい物を放出しだした。
 源罪。
「まずい! 源罪だ!!」
 ネスティが叫ぶ。
 これを纏ってしまった者は――触れた者は――余程の意志力を持っていない限り、悪意に翻弄され、見境がなくなり、邪悪に身を焦がすと言われる――。
 『無色の派閥の乱』では、目にしなかったものだ。
「ちくしょう! どうすればっ…!!」
 マグナが叫ぶ。
 人間は、近づく事ができないのだ。
 マグナもトリスも、トウヤやソルでさえ、源罪に巻かれれば、どうなってしまうか、分からない。

「……ケッ、簡単な話じゃねぇか」
「?」
「俺が行くぜぇっ!!」
「バルレル!!!」
 叫び、走ってメルギトスに突っ込むバルレル。
 確かに、悪魔の彼であれば、源罪は問題ないだろう。
 だが――たった一人で……。
 は、胸が熱くなるのを感じた。
 呼べ、と何かが叫ぶ。
 その心のままに、は叫ぶ――。
 全てを、終わらせるために。


「四棲解放!」
 の声に、バルレル以外の全員が驚いて彼女を見る。
 既に二つを解放していることを知っている皆は、その行動を止めようとして――言葉を呑んだ。
 彼女とて、いや、彼女だから、それがどんな大事な事か分かっているはずだから。

「二つの紫炎、ネロフレア、今一人、アフェルド!!」
 の右手の甲が紫色に光り輝き、彼女を紫の風が取り巻き――そして、その直ぐ側に、紫を基調とする、二人の人型悪魔が現れた。
 一人は女、もう一人は男。
 トリスたちが見守る中、ネロフレアとアフェルドは、バルレルに加勢するかのように、攻撃に加わった。
 ネロフレアは源罪を吸い上げ、アフェルドは魔力波を何発も打ち込む。
「ぐおおおお!!」
 メルギトスの呻きが、高く響く。
 は次いで、もう一つを呼び出した。
「四棲解放! 緑の癒し、エルアリア!!」
 額の紋が緑に光り輝き、美しい女性が現れる。
 エルアリアは、トリスたちをすっかり回復させると、これ以上源罪が振りまかれないよう、バリアのようなものをメルギトスとその周りに張りこんだ。

 はその場で、四棲を維持しようと、必死になって魔力を保つ。
 源罪が薄れたのが、目に見えて分かった。
 それを見て、今まで周りでくすぶっていた皆が、バルレルの加勢に回る。
 もはや、メルギトスの高らかな笑いは、聞こえない。
 ただ、敗者の絶叫のみが、の耳に届いた―――。



 エルアリアが、消えた。
 それと共に、バリアも消え、メルギトスが崩れ行くのが分かった。
 何を言っているのかは、には分からなかったが――勝利した、という事だけは、分かった。
 皆、一度回復したにもかかわらず、目に見えて疲労している。
 バルレルも、小さな姿に戻っていた。
「……あは、あははっ、勝ったんだ!!」
 の言葉に、皆、疲れたような――でも、至極嬉しそうに微笑む。
 まだ、問題はあるけれど、でも、勝った。
「やったよ!!!」
「…ほんとに、勝ったんだな…」
 トリスは元気よく、ネスティは呆けたように言う。
 それぞれ、マグナやアメル、トウヤもソルも、一安心といった感じで、その場に座り込んでしまった。

 もへたり込みたかった――が、
 彼女には、もう一つ、片付けなければならない事があった。
 何故か、飛ばずに未だに浮いている、ネロフレアと、アフェルドの事だ。
 四棲を使うと、何処かへ飛んで、封印されてしまうはずなのだが――?

 不思議そうなの表情に、ネロフレアとアフェルドが答えた。
「…宿主よ、我らが花嫁よ。私、ネロフレアは、貴方の中に、また戻る」
「我、アフェルドもまた、お前の中に戻る」
「あんた達…」
 が驚くのも無理はない。
 今まで出した三匹は、出てきて、ほとんど喋る事などしなかったから。
 ネロフレアとアフェルドは、静かに頷いた。
「事があれば、語る。我ら二人は、お前が拠り所。軽率に呼ばれるのは困るが……必要に迫られれば、呼べ」
「あ、ありがとう!」
 言うと、二人は微笑み――に要求した。
 『封印せよ』 と。
 は右手を二人にかざし、意のままの言葉を口にした。

「四棲封印、ネロフレア、アフェルド」

 出てきた時とは逆に、ネロフレアとアフェルドが紫の炎に包まれ、すぅっと、の右手に納まった。

「これで、全部終わったぁ〜……」
「……おい?」
 バルレルが側によって、ごろんと転がったを見る。
 すると――
「…おい、コイツ、寝てやがるぞ」


 お母さん、お父さん、私、四棲使っちゃったけど……でも、花嫁の役目だと思ったんだ。
 だって、リィンバウムを護るのが、サプレスの花嫁の役目、でしょ?




と言う事で、無理やりですが、最終決戦終わりました…あぁぁ;;
私の中で、メルギトス(変化後)は、かなりデカイ存在になっとります。
人の何十倍って感じ。腰から上を見上げると、という。
ゲーム中だと、そうでっかく感じないんですけど、話中ではそうしてしまいました。

2003・8・1

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