閉じられた童話 2





 夕食。
 アメルが作っているのを、トリスとが手伝っていた。
 バルレルは機嫌の悪さが緩和したのか、食事を作っている彼女達を見ている。
 に、「食えるものを作れよなぁ」等と言い、ほっぺたを引っ張られていたりするのはご愛嬌。
 トウヤとソルは、まだ呪いについての研究をしているようで、この場には来ていない。
 どうやら、彼らの食事分は別に取っておいて、時間が空いたときに食べてもらう――という風になるようだ。

 夕食はアメル特製おいもパンに、シオンの大将に提供してもらった麺を使ったソバという、なんともチグハグな物だった。
 しかも、汁の配分を間違えたようで、ちょっとばかり塩辛かったが、それでも美味しい事は美味しい。
 食事が終わると、いつもはそれぞれ好きな事をしているのだが、今日に限っては大抵が広間に残った。
 結局、ネスティは童話の事が頭から切り離せず、それを知っている人間がいないかという、確認作業のようなもので。
 はトウヤとソルの様子を見に行った後、トリス、アメルと一緒にお風呂に入りに行ってしまったので、この場にはいない。

 まず、伝承などには詳しそうなルゥに、矛先がたった。
 ところが、難関だったのは、ネスティが――歌をきっちり覚えているかという所で。
「…正直、歌を一度で覚えるというのは…苦手で…どこか間違っているかもしれないし」
 すると、ハサハがとととと歩き、ネスティの横に座った。
 彼女は深呼吸し、気持ちを落ち着けてから―――歌うというより、切れ切れながらも、そのフレーズを言う。
 ハサハが全てを言い終えた後、ルゥは唸った。
「うーん…ルゥには分からないわね。ただ…その一部にひっかる部分はあるんだけど」
「一部?」
「ずぅっと前に、おばあ様から聞いたような…」
 ネスティは思い出せないか? と言ってみるものの、案の定、彼女から出てきたのはNOの返事だった。
 落胆するネスティに、ミモザが口を挟む。
「それは、何処で聞いたの?」
「例の吟遊詩人…レイム…彼が歌っていたんです」
 側で何気なく聞いていたバルレルの耳が、ピクっと動く。
 誰が気づく事もなかったけれど。
 フォルテとケイナも口を挟んだ。
「少なくとも、聖王都に昔からある童話じゃねぇなぁ…多分」
「そうね、結構色々書店とか回ってみたりしたこともあるけど…見た事ないもの」
 カイナが、少し考えた後――声を上げた。
「シルターンにも、似たようなものはありましたが、童話ではなくて、神話というか…伝説や伝承の類でしたね」
 同意するように、レオルドとエスガルドが唸った。
 どうも、彼らの世界にも同じようなもの――伝承があるらしい。
 結局、その伝承の事も彼らの意識からは相当なくなっている物らしく、詳しくは聞けず仕舞い。
 聞いた所で、接点があるでもなし…。
 どうして、こんなに気になるのかネスティ自身よく分からなかったが、自分の血の流れが、もしかしたら何か警告しているのかもしれない。

 すまなかった、と立ち上がり、無駄だとは思うが、ギブソンの書庫をあさってみようとした。
 ――が、ドアの前まで来て、突然バルレルに声を掛けられ、気をそがれる。
 バルレルは、実に不満気な表情をしていた。
「おい、メガネ」
「なんだ?」
「……余計な荷物を背負い込む事ねぇぞ」
「どういう意味だ…?」
 彼は、なにかを知っているのだろうか?
 でなければ、こんな警告染みた事を言うはずがない。
 ネスティの考えなどお構いなしに、バルレルは彼の探究心を打ち砕こうとしていた。
 それが逆効果になるかもしれないのも、重々承知で。
「てめぇは禁忌の森へ行く。あの三人のニンゲンの事だけ、心配してろよ」
「……だが」
に起こってる事を知ったとして、テメェはどうすんだよ。余計な心配してる暇、あんのか?」
「…………君は、なにか知ってるのか?」
「……さぁな」
 それ以上の追求を許さない、という素振りで、くるりと後ろを向いてしまい、彼はそのままの部屋へと入っていった。
 ネスティは――彼のいう事はもっともだと思った。
 これから自分達を待ち受ける物は、容易なものではない。
 を取り囲む一連の事を気にしていては、問題が更に悪化しかねない状況。

 そうだ。
 バルレルの言うとおり――今は、自分がやるべきことを最前に考えよう。
 終わったら…無事に終わったら、また考えればいい。
 ネスティは、すぅ、と息を吸い、ゆっくり吐き出すと、歩き出した。
 書庫を、背にして。









2003年一番先のアップは、サモでした。
まだ先が長いので、なるべくスピード上げてゆきたいですなぁ。
3が出る前に!!

2003・1・3

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