光の旋律 光の渦に巻き込まれ、それこそが闇なのだと気づかない。 光が強すぎて、ふとした闇が見えていない。 同じように、これは闇だと教えられ続け、それが光だと気づかない者もいる。 人間というのは、愚かなものだ。 レイムは、ゼラムを一望しながら、そう呟いた。 ゼラムへと帰る道すがら、アグラバインおじいさんの話の全容を聞き、は唸った。 ……なんだか、凄い事になって来たなぁ、と。 アメルはあの――禁忌の森の中にいた子供で、おじいさんは元、デグレア軍人。 おじいさんは、デグレアに<召喚術を上回る力>を手に入れろ命じられていて、禁忌の森へと入っていった――。 結界の張り巡らされたあの禁忌の森へと入れたのは、今はアメルが持っている、天使アルミネの羽のおかげらしい。 バルレルのお墨付きだから、間違いなく天使の羽だろう。 悪魔っていうのは、天使嫌いらしいし。 「じゃあ、デグレアはまだその<力>を狙って、アメルを……」 がトリスに呟く。 彼女はこくりと頷いた。 「とりあえずは、ゼラムに戻って、ギブソン先輩にも話を…それに、書状を蒼の派閥に届けるのもあるし」 「そだね…」 戻ろうと言い出したのはネスティらしいが……本当に、書面やら報告だけが、ゼラムに戻りたかった理由なのだろうか? 少し後ろを歩いている彼は、酷く思いつめたような表情をしている。 マグナの明るい声にも、余り反応していないように見受けられるし…。 「おい」 「え?」 突然、リューグが話し掛けてきて、は横を向く。 ……なんか、凄く不機嫌っぽい顔がそこにあるんですが。 また何か、お気に召さない点でもございましたでしょうか? 「なに??」 「…お前、俺達がじいさんの話聞いてる間、どこにいたんだよ」 ……イオスと一緒にいた、なんて言ったら斧の餌食か? 嘘をつくのは性分ではないのだけれど、まんまストレートに言ってしまうと…この場でリューグと一戦交える事に繋がりかねない。 「森の中にいた。村見てたんだ、けど?」 「…ふぅん…」 嘘じゃない。 ただ、全部を話していないだけ。 リューグは少し不満そうに唸るが、はそれ以上の追随を許さないといったように、アメルの隣に陣取る。 「アメル、大丈夫?」 「え、はい、大丈夫ですけど…」 彼女は微笑み、と他愛のない話を始める。 ……強くなったんだと、誰もがそう思う彼女の態度。 まだまだ脆さを秘めているけれど、フォローしてくれる誰かがいる。 それが、仲間というものだ。 彼女は大丈夫、はそう思って微笑みを交わす。 「そういえば、さんの仲間が来るとかなんとか、言ってませんでしたっけ?」 「え、あ――ファナン目指してるとか言ってたし…まだ暫くは会えないかな…」 は苦笑いしながら、地面を残念そうに見る。 シオンからの前情報である、トウヤとソルがこっちに来る、というのは、一応一緒に行動している皆に言ってあった。 でなければ、余計な誤解や詮索が入ってしまうと思っての事。 「どんな方ですか?」 好奇心の塊のような目をして聞いてくるアメルに、は唸った。 どんなって…。 リンカーと、そのパートナーです。 ……言えない言えない!! 「性格とか?」 「はい」 性格……うーん。 「一人は物静かで、怒ると滅茶苦茶怖くて…もう一人は明るい…んだけど、理屈やで――えーと……」 「…なんかもっといい印象与えるような言葉はないのか?」 ネスティがあきれた様に横から口をはさむ。 確かに、そういい言葉での紹介ではないのだが、実際がそう思うのだから仕方がない。 「…えと、とりあえず、没個性ではないという事で…」 「………僕が悪かった」 ネスティが額に手をあて、ため息する。 アメルとトリスがくすくす笑った。 ゼラムへと無事に着いた一行は、まず、ギブソン、ミモザ邸へと足を運ぶ事にした。 ただし、シャムロックとネスティのみ、先に派閥の方へと足を運ぶ。 済ませなくてはならない事は、さっさとやるべし、と、そう言う事らしい。 トリスとマグナは慣れた足取りで、<家>へと歩いていく。 もバルレルも、随分久しぶりだと感じる街の空気を、胸一杯に吸った。 「…おい、」 「ん?」 バルレルが突然服のすそを引っ張り、顎で商店街の向こう側を示す。 ……一見、特に何もない。 「なんか、嫌な感じ、しねぇか?」 「………」 目に見えては、何もないのだ、確かに。 ただ――何だか凄く嫌な感じがする。 ――何だろう? 「、早く!」 「あ…うん…」 後ろからミニスにせっつかれ、慌てて歩き始める。 気持ち悪い気配がそこにある中、結局確かめる事も出来ず、邸へと向かう。 バルレルもそこを気にしながらも、カイナとケイナに押され、仕方なく歩き出した。 ……あれは、悪魔の…嫌な気配のような気がしたのだが…? 「おっかえりーーーー!!おーおー!新顔さんが増えたわね〜」 家の正面扉をくぐるなり、ミモザの晴れやかな声が耳に入る。 トリスとアメル、が一斉に「ただいまー!」と同じように声を上げた。 にとっては、久々の安堵できる場所。 …そういえば、荷物はどうなったんだろうか? ガレアノの術で勝手に転送されてから、ずっと戻っていない。 捨てられてる――なんて事はないだろうが…最悪、ミモザが捨てたとしても、ギブソンが拾ってくれるだろうし。 こういう所、彼らの性格はは非常によく均整が取れている。 ぶっちらかしのミモザに、整頓のギブソン。 ガゼルやリプレに言ったら、大笑いされたものだ。 は苦笑いしながら、ミモザに抱きつく。 「…いきなりいなくなって、ゴメンなさい…」 「ホント、心配したのよ〜?」 ぐりぐりと頭をなでるミモザ。 ……まるで、師弟関係みたいだとトリスもマグナもその姿を見て思った。 「ギブソン先輩は、何処にいるんですか?」 トリスが小首をかしげながら聞く。 そういえば……姿が見えない。 折角自分の後輩が無事な姿で帰ってきたというのに、顔を見せないというのは少々薄情ではないのか。 ミモザはを見て、ふっと微笑む。 彼女には、その微妙な微笑の正体が分からない。 不思議そうにしていると、ギブソンが大広間部屋から姿をあらわした。 一斉に、ただいまコール。 「やあ、皆無事だね。……ネスティは、派閥の方へ足を運んでるのかい?」 「はい。ちょっとした所用で…直ぐ戻ってくると思いますけど」 マグナが代表するように発言すると、ギブソンはそうか、と頷いた。 それから、少し考えるようなそぶりを見せ――に微笑む。 ミモザと同じような、どこか含みのある笑い。 「、君にお客さんだよ」 お客――? 「広間にいるから、早く行くといい」 は不思議そうなパーティメンバーの視線を背中に感じながらも、広間に向かって、ゆっくりと歩みを進めた。 何だか、凄く――胸の鼓動が高鳴る。 どうしてだろう? ギブソンは、単にお客、としか言わなかった。 大体、待ち望んでいる彼らであるはずがない。 では、この期待感は一体何処から来るんだろう。 ギブソンとミモザの家――慣れ親しんだ雰囲気からだろうか。 過剰な期待を抑えるように、胸で大きく息を吸い、広間への扉をパタ、と開けた。 そして、そのままは固まる。 どうしていいのか、よく分からなくなって。 頭の中が真っ白になって。 あぁ、本当に、心から――。 ただいまを、言いたくなった。 メッチャ途中ーーーーー!!(滝汗) 次!次行きましょう!! 2002・11・1 back |