拒みと疑惑 2




 トリスとマグナのパーティには、実に二名の知り合いがいた。
 カザミネとカイナ。
 フラットつながりという事であれば、ミニスも。
 がどんな力を持っているか知っていて、しかも、サイジェントで一緒に戦った人物。
 リューグとネスティがに色々言われているのを見て、遠巻きに苦笑いをこぼしていた。
さん。」
「カイナ、カザミネさん!」
 ニコニコ微笑み、二人に抱きつく。
 あぁ、なんか凄く懐かしい‥‥一年ぐらいだろうか。
「相変わらずですわね、あの二人ちょっと可哀想。」
「そう?1人で旅して、少し気が強くなったかもしれないけど、基本的には私でしょう?」
 違いない、と微笑みあう。
 まるで変わっていない‥‥というのは、少々失礼かもしれないが、にとって変わっていない人物と会うのは、嬉しくあって。
 聞けば、カザミネは行き倒れそうになっていたところを、トリスやマグナに救われ、カイナは、姉であるケイナのそばにいる為に、このパーティに同行していると聞く。
 少なくとも、友人と称する人間が傍にいてくれるのはありがたいことだった。
 特に、今の現状では。
 リューグやネスティは、明らかに自分を敵視している。
 状況から考えれば無理もない事ではあるのだが、この先も一緒に行動するとなると、いささか問題が大きくなってしまう。
 一緒に行動する上では、信頼関係が必要不可欠。
 自分が言ってしまった言葉は取り戻す事は出来ないが、少し軽率な発言をしすぎたかと後悔した。
 それに‥‥呪いのほうの問題も降りかかってきているし。
 は、カイナならば何か出来るのではないかと、自分にかかった呪いの事を聞いてみた。
「あのねカイナ、ちょっとコレ見て欲しいんだけど‥‥」
「‥‥これは‥‥」
 右手の甲に記されている、紋を見て、カイナの表情が変わる。
 カザミネも、興味があるのか覗き込んできた。
「‥‥呪い、ですか」
「バルレルが言うには、そうみたい」
 カイナが恐る恐るその紋の部分に触れる。
 外傷的にはなにもないから、痛みも何も感じはしないが。
「私は霊属性のものには、大した知識を持っていないですが‥‥、外すのは、かなり困難なんじゃないでしょうか」
「やっぱり‥‥ギブソンとかに聞いてみた方がいいかな」
 こくん、と一つ頷く。
「もしくはソルさんか、トウヤさんですわね」
 とはいえ、サイジェントへは距離がある。
 おいそれと出て行けるような状況ではない。
 それでなくとも、誓約者の彼は、ひょこひょこ外部へと出て行けないのだから。
 幸いにも、バルレルが持ってきてくれ、イオスが煎じてくれた飲み物によって、ある程度の力は回復している。
 しばらくの間は、今身の内にある力だけで、なんとか誤魔化して戦っていくしかない。
 は大きく溜息をついた。
「まいった‥‥。まさか、こんな事になるなんて‥‥」
 ただ、勉強をするためだけにサイジェントを出て‥‥なにやら判らないうちに、大きな波に飲み込まれてしまった。
 無色の派閥の乱の時と、まるっきり同じパターンなのが怖い。
 あの時は、ただ単に違う世界へ放り出されて無力だっただけだけれど。
 とにかく、あのガレアノという男が何を目的として、自分の力を封じたのか、それすらも判らないんだから、怖くもある。
 ビーニャというあの子も、ガレアノと同じ種類の人間。
 ‥‥‥‥考えてみた所で、同じ所に考えが行き当たって詰まってしまう。
 結局、は自分がどうしてこんな状態に置かれたのか、判らない。
「‥‥とにかく、今はこのパーティに溶け込む事を優先させるわ」
「そうでござるな‥‥」
「そうした方がいいわね」
 二人とも神妙な顔で、うんうん、と頷く。
 ‥‥前途は多難なようだ。
「自を出さなきゃよかった‥‥」


 しばらく雑談していると、トリスとマグナがシャムロックが目覚めた事を告げに来た。
「‥‥という訳で、シャムロックさんがトライドラへ報告へいくのを手伝う事にしたの。」
、どうする?」
 どうする、とマグナに問われて、どうもこうもないよ、と答えた。
 パーティの中に入ると決めた。
 だから、ついて行く。
「足手まといになる可能性あるんだけど、それでもOK?」
「大丈夫、護衛獣もいるしね!」
 マグナが嬉しそうに、声を上げた。
 トリスもそんなマグナの対応に、幾分か嬉しそうに微笑む。
 彼女らの兄弟子と比べると、天と地ほどの対応の差だ。
「バルレル、怒らないといいんだけど」
 もはや、怒る気力も持ち合わせていない彼だったりする。
 トラブル続きで、諦めているようだ。
「いつ出発?」
「「すぐ!」」


 一方、ルヴァイドとイオスは‥。
「ビーニャ、どういうつもりだ」
 いらついた表情と声で、ルヴァイドはビーニャを問い詰めていた。
 勿論、砦の事‥‥そして、についてした行動について。
 イオスも固唾を飲んで、それを見ている。
「どういうつもりって〜、ルヴァイドちゃんこそ、どういうつもりぃ?」
「‥‥」
「勝手にあの女を助けたりしてぇ‥‥」
 ルヴァイドは、それに関してはビーニャを責める術を持たない。
 軍の責任者とはいえ、勝手に人を内部へと入れた事は、彼の失点であったから。
 ビーニャはニヤニヤ笑いながら、傍若無人に振るまう。
「これはぁ〜、レイム様に伝えととかないとね。せっかく受け皿を試すチャンスだったのにぃ」
「受け皿?」
 どういう意味なのか、ルヴァイドにもイオスにも判りかねた。
 デグレアの国家に関わる事なのだろうか。
 だが、それについてビーニャはそれ以上の事を話さなかった。
 少なくとも、が何かしら狙われる理由があるという事しか‥‥。



短め。
デグレア組みと別れましたので、しばらくはメインメンツ主体になります、きっと。
想像だけが先行して、書くのが追いつかない‥‥(泣)

2002・7・9

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