西からきた少女 「ほぅ‥では、お前さんがあの‥‥。」 ふむふむと品定めをするように、ラウルが少女を見る。 少女‥‥・は、嫌そうな顔をする事もなく、にこにこしたまま出されたお茶をすすった。 リィンバウムにきて一年。 誓約者となり魔王を倒したトウヤと共に戦ったは、己の召喚術の不安定さに不安を覚え、それを正すため、勉強するため、ギブソンとミモザにくっついて、サイジェントを出て、聖王都ゼラムへときた。 現在、二人の口利きで、蒼の派閥本部のラウルを紹介してもらい、この施設の一部を使わせてもらえるよう、頼み込んでいる最中である。 ラウルの”あの”の意味は、言わずと知れた事。 ”無色の派閥の乱”で誓約者と共に戦った人間、しかも、誓約者と同じ世界からきた人間。 物珍しいといえば物珍しいので、そう言われる事に嫌悪感はなくなっている。 それはともかく、はどうにもこの閉鎖的な空間が身に馴染まない。 なんだか実に‥‥なんと言うか、他とは違うものをはじき出すような空気があって。 異世界からきた自分には、どうにも居心地が悪い‥‥気がする。 「さん、だったかな?」 「呼び捨てにしてくださって構いません、ラウル様。」 「あいわかった。は部外の人間だ、わしの権限で一部を開く事はできるが、そうなると見れない箇所や本なども出てきてしまう。」 「‥‥どうすればいいんですか?」 「総帥にお伺いを立て、試験を受けられるようにしよう。」 ――試験? どういう事なのだろう。 まさか、召喚術に筆記試験があるのだろうか。 「見習い召喚師が、正式な召喚師と認められるために受ける試験があるのだが、それを受ければ、蒼の派閥を自由に出入りできるようになると思うんじゃ。」 蒼の派閥に属する事になってしまうのではないかと、不安になる。 だが、どうやらラウルから総帥へとお願いして、登録しない形へと収めてくれるらしい。 は深くお礼を言った。 「まずは、試験に受かる事を考えないと‥‥。」 「自分の護衛召喚獣を呼ぶ試験なんじゃが‥‥、大丈夫かね?」 「‥呪文は‥分かります。まぁ、なんとか‥‥やってみます。」 先の戦いではポンポン術を連発していたが、じゃあ召喚術に長けているかと言われると、そうでもなく。 呼び出した召喚獣の威力にムラがあったり、力をいれすぎてがヘロヘロになったり、とにかく基礎ができていないのだから、仕方がない。 事故で一緒に召喚されてきたトウヤはとは、かなりの違いだ。 高位召喚獣が召喚できて、下位召喚獣がダメだったりするし。 そんなんで受かるのか不安になるが‥‥、自分のためだ、頑張るしかない。 そんなこんなで、派閥試験を受ける事になった。 案外あっさりと異例を認められたようで、は心の広い総帥に感謝した。 ラウルに引率され、試験会場へ足を向ける。 「実は、今日お前さんといっっしょに試験を受ける子が二人いるんじゃよ。」 「え、そうなんですか??」 「ワシの孫みたいなもんでな、トリスとマグナと言う。兄弟なんじゃが‥‥気が合えば、友達になってやって下さらんか。」 なんだか友達がいないような、引っかかった言い方だなぁなんて思う。 だが、こちらに友人が少ないのはの方。 「私でよければ、喜んで。」 にこにこ笑いながら、どんな子なのかと思いをはせつつ歩いていくと、試験会場へ到着した模様。 中へ入ると、実に不機嫌そうな顔をした試験官がいた。 「‥‥貴様が突然やってきて、試験を受けるという無礼極まりない女か。」 「‥‥‥‥(唖然)」 出会い頭に文句を言われたのは‥、ガゼルやバノッサ以来久しぶりだと思う。 「フリップ殿、失礼ではありませんか。」 ラウルが咎めるが、当の本人は全く気にする様子もない。 は引きつりながら、とりあえず自己紹介する。 「‥‥え、と。です。お手間おかけして申し訳ありませんが、どうぞ宜しくお願い致します。」 宜しくしたくはないだろうがな!! と、言ってみたくなったりして。‥‥言わないけれど。 「フン、ワシは試験官のフリップだ。あの”無色の派閥の乱”の功労者に会えるとは、光栄の極みだ。」 うわー、イヤミくさーーーーーい。 ‥なんて、やっぱり思っても言わない。 事を荒立ててはいけないのだ、とにかく今は。 「‥もう時間だというのに、ラウル殿の所の見習はまだ来ない様子ですな。」 またもイヤミたっぷり‥‥。 私、この人かなり好きになれないかもしれないと、は心の中で思った。 「よもや逃げ出したのではないでしょうな。」 バターーーーーーーーン! 「「すみません!!遅れましたっ!!」」 扉がいきなり大きな音を立てて開き、女の子と男の子が入ってくる。 なんとなくだが、その登場の仕方で、はこの子達と仲良くなれそうな気がした。 いつブッツリ切れてもおかしくない、サモナイ2長編夢。 ドリーサイトになる以前の私の傾向を知ってる方なら、どんなんだか分かると思いますが、 私、続き物(連載)って、進みが異様に遅かったり、いきなり連載がストップしたり、 挙句の果てにはいつの間にかなくなってたりします。 マイペースでのんびりやろうと思ってるんですが‥;;お付き合いくださると嬉しいです。 なんで、自分に負担をかけないように、一話が短いと思いますけど、お許しを(汗) 今回は、初めなので‥‥主人公’sと会う‥‥前の話。(会えなかった‥‥) さんの設定とかは、別途きちんと上げると思います。とりあえず、 トウヤと一緒にリィンバウムに召喚された女の子であるという事だけでも充分。 ボツボツ頑張ります〜。総受けチック目指して。 2002・3・18 back |