ケンカするほど…
「…ったく、ニンゲンのくせに俺にたてつくとはいい度胸じゃねぇか!」
「なによ〜っ、ちょっと意見したぐらいでまたっ!」
「ウルセェ!!大体なっ、召喚術もまともに覚えねぇ奴が…」
「しょーがないでしょっ!私は習ったことなんかないんだからーっ!」
ぎゃーぎゃーぎゃー……
今日もとバルレルの言い争いは激しい。
毎日一度は繰り広げられるこの2人のバトルに、わざわざ入っていく奴なんかいなかった。
はじめの頃こそ、バルレルのマスターであるトリスが止めに入っていたものの…最近では、当たり前のこととして見られているのか、やはり止めない。
そんな訳で、2人の喧嘩はほぼ日常になっていた。
「…ぜぇ…ぜぇ…も、もういい…。」
「あっ、テメェ逃げんのか!!」
くるりときびすを返して、は外へと出て行ってしまった。
バルレルは舌打ちすると、トリスの部屋へと歩いていく。
が出て行くときは、バルレルがトリスの部屋へ。
バルレルが出て行くときは、がトリスの部屋へ。
これが、いつものパターンだ。
どちらにしても、迷惑こうむるのはトリスなのだが。
「おい、ニンゲン。なんだってあいつはあーなんだッ!」
イライラしながら、八つ当たり気味にトリスに話し掛ける。
トリスは苦笑いしながら話を聞いていた。
大まかな話を聞く限り、今回はバルレルが1人で激高しているようだ。
「…うーん、あんたの発言に、がちょぴっと口をはさんだっていう、それだけだよね…今回。」
「……ケッ。」
ふてくされるバルレルに、素直じゃないなと思うトリス。
自分の護衛獣は悪魔なだけに素直でないのは当たり前なのかもしれないが。
「謝らなくていいの?話を聞く限り今回のはアンタの方がー……」
「うるせーよ、おメェに言われる筋合いは…」
トリスの言葉をさえぎり、不機嫌丸出しの彼…けれど、なんだかソワソワし出している辺り、もう大丈夫だろうと踏む。
の所へ行こうか、行くまいか、悩んでいる時に凄くソワソワするのだ。
「…チッ…、イラつくから、散歩にでも行ってくらぁ。」
「そう?行ってらっしゃーい。」
にやにやしながら見てくるトリスに、なんだか嫌な感じをもちつつ、バルレルは屋敷の外に出ての気配を探した――
「テ…テメェ、そんなトコで何のんきに寝てやがる…」
「………ふに?…あ、バルレル……。」
は聖王国の出入り口からちょっと離れた森の中で、クークー寝ていた。
しかも、結構な喧嘩をした後に、だ。
驚くのも無理はない。
いくら出入り口のすぐ近くとはいえ外だ。
ぐーすか寝ていて襲われないとも限らない。
バルレルは、こいつは人の事には頭がよくまわる癖に、自分の事には余り気ィつかわねーんだよな、と頭を掻いた。
「目ぇ覚めたか?」
「うん、…って、何、どうしたの?」
さっきまで喧嘩していた相手にどうしたの、も何もないもんだが。
バルレルは隣にどすんと座ると、をじっと見つめた。
「…ナニ。」
「俺は謝らねーぞ!」
「あ、え、さっきの事?」
今回の喧嘩の理由は簡単な…それも、些細なこと。
いつもよりは内容が深いかもしれないけれど……やっぱり大したことではない。
は、異性に対してかなり無防備だった。
無防備というか、ニブイというか、ボケているというか。
下心ありありのヤローがお茶に誘ってきても、“美味しいものが食べられる”ぐらいの意識しかなくて。
いい人だよね、で済ませてしまうような女なのだ。
バルレルは悪魔だから…というのが理由ではないと思うが、人間の欲望部分…黒い念なんかに敏感で、
その欲、がに向いているというのをちょっと忠告したら、“考えすぎ”といわれてしまい喧嘩になった。
「いいよ、別に謝らなくて。バルレルは本当のこと言ってるんだろうし。」
「……。」
「でも、大丈夫だって。」
なにが大丈夫なんだよ、全然わかってねぇな!と思わず口をついて出てしまった。
――あ、っと口を抑える。
仲たがいしに来たわけじゃなかったので、彼は密かに舌打ちした。
しかし、は微笑むとバルレルの手をきゅっとにぎって下から見上げた。
急に手を握られ、思わず驚く。
「…大丈夫なんだってば。バルレルがいてくれるから。」
「―――は?」
「あんたが、守ってくれるし。」
決してバルレルはの護衛召還獣ではない。
でも、一緒に傍にいる時間は下手したらマスターであるトリスより長い。
バルレルはを気に入っていたし、も彼を気に入っている。
だからこそ、バルレルはが無防備なのが気に食わないのだ。
自分以外に優しくしているだけでも腹が立つ。
言った所で、認めはしないだろうが…バルレルはが好きなのである。
「おメェな……。」
「と、いうことでもう少し寝かして。」
は彼の手を握ったまま、また寝の態勢に入ってしまう。
「なっ……」
「バルレルが傍に居るなら、危なくないでしょ?」
オヤスミーというと、あっという間に眠りに落ちる。
こうなっては起こすのも悪い気がして、そのまま眠らせてしまう。
…まあ、の寝顔を見るのも悪くない、なんて結構恥ずかしいことを思いながら。
「……俺の存在は危なくねーのかよ……。」
なんだか少し複雑な思いを胸に抱きつつ、バルレルはの眠りを守った。
心配して探しに来たアメルが2人を見つけたとき、2人は幸せそうに寄りそいあって寝ていたという――――
ケンカするほど仲がいい、というのはこのことか。
初、サモナイ2創作…とりあえず、ごめんなさい。
なんでバルレルカということはおいといて…(いや、私が好きだからなんですが)
どうもイメージが固まらないうちに書いてしまったために中途半端な出来に……。
大体初で護衛召喚獣って…;;
次は暫く後になりそうですが…ネスティかなぁ…一応クリアはしてあるので、かけないことはない…ハズ。
出てきた際にはお付き合いくださると嬉しいのです…。
サモナイでドリームも見た事ないなぁ…(汗)
ドリームでなければ、ネストリ、リュトリ、と、トリス受け派なんですが。
2001/8/29
…この話は初っ端のものなので、以後書かれたものとは設定が違いますね;
ブラウザback希望
|