積み上げた想い





10才の夏、あいつは突然俺の前に現れた。
そう……まるで白い嵐のように。
天性の明るさと魅力的な笑顔で俺を翻弄し、あげくさっさと去っていってしまった。
でも、困ったことにその激しい嵐はそれ以来ずっと俺の中に住み着いていて。
再会を果たす度に大きくなっていったんだ。



そして……俺が16の誕生日を迎えた夏。
ず〜っと疑問だった、あいつに対しての思いに俺は答えを見つけた。

きっと初めて会った瞬間から心を奪われていたんだろう。


それは、“恋”という名の白い嵐――。



あれから2年。今日、俺は18になった。
あの時から……16であいつに、に交際を申し込んだ時から決めていた。
心にしまっておいた大切な言葉を告げる日。
間もなく、日が落ちる……。
宵闇に包まれ星が瞬く幻想的な空間は、きっと俺に力を貸してくれるはずだ。
そう、勝負の時は、もうすぐ――。





1日のデートを終え、後は帰るだけとなった時。
俺はさりげなく近くの公園にを誘った。
断わられたらどうしようか、とドキドキもんだったけど案外あっさりOKされて。
俺と離れたくないんじゃねーか?なんて一人で喜んでみたり。
……いかんいかん、今日は浮かれてる場合じゃなかった。
ずっとずっと決めていたんだ。
ちゃんとブツだって用意してあるし……気に入ってくれればいいんだけど。
場所だって考えに考え抜いて、星空が綺麗な公園を選んだんだし。
そう、今日の俺は誰がどう見たって条件はバッチシだ。
言うぞ……さあ、勝負の時だ、今言わなきゃ一生言えなくなるかもしれない…。
い、いやいや待てよ。早まるとろくなことにならない。
ここはひとまず深呼吸して気を落ち着けてから……!
「良太」
「うぇっ…!?えっ……あ…な、何だよ!」
「……何さっきからビクビクしてんの?」
俺のうろたえぶりをおかしそうに笑う。
魅力的な笑顔は今も健在だ。
……チクショウ…俺が精神統一してる時に声かけてきて、その上そんな笑顔見せるなんて卑怯だ!
反則技だぞ!!
おかげで頭が少々パニック……ダメだぞ俺!落ち着け!落ち着くんだ!!
「……今日で、良太も18才だね。こ〜んな小さかった頃がなんか懐かしいな…。
あの頃の良太は、い〜っつも私のあとつけ回してて、可愛かった」
「なっ……誰がつけ回したよ!ありがたくもお前のボディーガードしてやってたんだろうが!!」
いや、これは言い訳だな……自分でもわかってんだよチクショー!
そうだよ、あの頃の俺はただと一緒にいたくて無意味につけ回してたよ!
「ボディーガードね〜……ま、そういうことにしといてあげる」
……まるっきりの子供扱いだな、おい。
やっと18になったってのに、前となんら変わりゃしねー……。
10才かそこらのガキの頃のこと持ち出すなんて、ずりーよ。
俺はの子供時代を知らないんだから、勝てるわけないじゃんか。
全く……かーなーり今ので出鼻くじかれたぞ。
気分転換に咳払いでもしてみるかな。ゴホン!と。
「あー……あの、さ………」
「ん?何?」
ブランコに嬉しそうに座りながら見上げてくる、この角度が好きだ。
優しい笑顔も、その柔らかな眼差しも、甘えてくる所も逆に甘えさせてくれる所も、全部……!



……が、好きだ。



やっぱ、ガキ扱いされても何されても、俺はこいつが好きなんだな。
「俺、今日で18になったんだ……」
「うん、知ってるよ。さっきもそう言ったじゃない」
「……もう、結婚できる年なんだぜ?」
含みのある問いかけに黙り込む
少しは期待してもいいのかな……この沈黙は。
今日一日ずっと大事に内ポケットに閉まっておいた小さな箱を取り出す。
「OKなら、受け取ってほしい……どうしようもないくらい、俺…が好きだ」
「……良、太…」
「もう、小さかったガキじゃない。一生を守ってやれる大人になったつもりだぜ?
……ずっと一緒にいたいんだ…俺と、結婚してくれ」



時間が、止まったかと思った。
が答えをくれるまでの間、俺の心臓は口から出てきそうな勢いで高鳴りっぱなしで。
きっと、ほんの数秒のこと。
でもこの時の俺にとっては、まるで一昼夜にも匹敵するくらい長く感じられた。
「……6つも年上の、おばちゃんでもいいの?」
泣き笑いのような顔……必死に涙をこらえてるのバレバレだ。
そっと手を伸ばし柔らかなほほに触れ、つまんで引っ張る。
「年の差なんか関係ねーよ。が、例え俺より10才年上でも、20才年上でも。
なら、俺はやっぱり心底ホレて夢中になって、こうやってプロポーズしてたと思うよ?」
ニッと笑うと、やっとも微笑みを返してくれた。
指輪を手渡し、当然のごとく抱き寄せる。
ためらいもなく背にまわされる腕がいとおしい。
一生、守っていきたいとあらためて強く思った。
「もう……飽きられちゃったかと思った…」
「え…?」
「最近、あんまりデートしてくれなかったし、一緒にいても上の空だったし……。
やっぱり同年代の子の方がいいんだろうな、って思ってた。私といるの、ムリしてるのかな、って…」
ぎゅっ、と抱きつきながら呟かれる言葉に、少なからずショックを受けた。
こんなに大事な奴を不安にさせてたなんて……。
「ごめん……指輪買うためにちょっとバイトのシフト増やしたからあんま時間なくて…。
上の空だったのは、近づいてくるこの日のセッティングをどうしよう、って悩んでたからだよ。
……がいるのに、誰が浮気なんかするかっての…」
そっと体を離して濡れる瞳を覗きこむ。
いつの間にか、俺より小さくなった体……。
瞼にキスを落とし、その後口唇をついばむ。
「一生、だけだよ……」
左手を掴むと、ゆっくり渡した指輪をはめてやる。
絶対離さない……誰にも譲らない、渡さない。
「……私も、一生良太だけよ…大好き」
テレたようにほほをかきながら笑うをもう一度抱きしめ、目を閉じた。
やっと手に入れた幸福を噛みしめるように。
そして、この幸せが永遠に続くようにと祈りながら囁いた。
出会ってから今日まで、決して言わなかった、胸の奥に大切にしまい続けてきた言葉を――。



「愛してる……」



初めて告げた言葉のお礼は、愛しい彼女からの満面の笑顔だった。





企画もの第二弾!!
無事仕上げることができて感無量です(笑)
よかった、1発ものにならなくて・・・!

今回は18才版良太です。
きっとカッコよく成長してくれたことでしょう!
子供の頃の情熱をそのままに、きっと一生あなたのことを守ってくれますよ♪

第三弾は・・・もう少し長いお話になるといいなあ(汗)
晃も良太も今までにない短さ!!
読んで下さる心優しい皆様、大変申し訳ないです。
次・・・頑張ります。

ここまで読んで下さった皆様&管理人へ

                 感謝と愛をこめて♪

                                 葵 詩絵里

‥‥テキトーなタイトルつけてすまん!!(汗)
                                 水音

2002・6・16

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