Energy Crystal 「守くん?今お邪魔かなぁ。」 機材置き場の扉をコンコンと叩いてみる。 守が中にいるのは分かっているは、暫く待った。 後に待っていたその人が出て来る。 「あ、 さん、今日は。どうしたの?」 研究室に一緒に歩いて戻る。 「うん、ちょっと研究の方どうなったかなーって。」 本当はナビに言われて、また無理してイデアを荒れさせているんじゃないか 見てきて欲しい、といわれて来たのだが。 「そうだったんだ。ありがとう、気にしてくれて。」 微笑む守に、罪悪感が芽生える。 研究が気になっていたのは本当のことなのだけれど、それでもやっぱり 素直にありがとうと言われると、なんとも居心地が悪い。 「成果、出た?」 「あんまり。仕方ないよ、まだ少量エネルギーで始めて、時間が経ってないからね。」 苦笑いをこぼす守に、残念、と肩をすくめる。 物理の事は良く分からないが、一生懸命な守を見ているうちに、も少し興味をもつようになった。 それから、たまにこうして遊びに来ているのだが。 「あ、そぉだ。ハイこれ。」 カバンの中から包みを取り出し、守に渡す。 「?」 守が包みを開けると、中から出てきたのはビンに入ったクッキーだった。 「これ、さんが?」 「うん、ちょっと不出来だけど。甘いモノ食べるとイライラしないっていうし。」 折角だから一緒に食べようと思ってと笑うに、守は頬を染めて俯いた。 「さん、料理得意なの?」 言い、クッキーを一口。 「うぅん、実は料理はあんまりしたことないの。大体弘樹が作ってくれちゃうから。」 謙遜ではなく、本当に料理は余りしなかったりする。 人並みにはこなすが、人並み以上のことは出来ない。 優美に教えてもらった方がいいぐらいだと、本人は思っている。 「確かに…でも、片山君って…いつも学食とか購買だよね?」 「うん。朝、私のこと起こしたりとかしてるし…たまに作る時は私の分も作ってくれるよ。」 ほくほく顔のに、複雑な心境の守。 片山、と名がついているが、血は全く繋がっていないのを、覚醒仲間は知っている。 に思いを寄せている守としては、嫉妬のいい材料だったりするのだが。 「さんの手料理かぁ…食べてみたいなぁ…。」 ポロッと出てしまった本音に、守は慌てて自分の口を抑えた。 だが、言った言葉は空中に投げ出されれば戻ってはこない。 「私の手料理かぁ…そーだねぇ…じゃあ、夜食って事で作ってくるよ。」 「ほ、本当!?」 「どうせ、今日も遅くまで研究でしょ?今から帰って作ってくるね。」 安易にこぼした一言で、こんな風になるとは思っていなかったので、 守にしてみれば嬉しい誤算といったところだろうか。 かくて、は守のお弁当を作ることになった。 とはいえ、本当に普通のお弁当。 よくよく考えたら、は守の好きな食べ物を知らないので、 極力、当り障りのない所で、卵焼きとかウィンナーとか… まぁ、卵アレルギーがあればこれでも駄目なのだけれど。 とにかく、出来上がったものをもって、研究室へ。 「お待たせぇ〜。」 「あ、本当に作ってきてくれたんだ…!」 「約束、したでしょ?」 にこやかに微笑む に、守も自然と顔が緩む。 「どぉ?」 無言で食べていく守に不安になる。 …まさか本当に卵が駄目とか、味が濃かったとか… 「はぁ〜、ご馳走様でした。」 見れば、お弁当の中にはき例に食べつくされていた。 「おいしかったよ、ありがとう。」 その一言にホッとして、微笑む。 緊張の色がぷっつりと切れた。 「よかった…なんにも言わないから、ヤバかったかと…。」 「そんなことないよ、美味しかった。」 守はお弁当の箱をきちんと元の状態に戻し、自分のカバンの中に入れようとした。 「あ、これ借りていくね。ちゃんと洗って返すから。」 「そんな事しなくていいよ。食事の片付けまでが私の責任。」 ぱっと守の手から箱を奪い取ると、自分のカバンへ入れた。 「さぁて、と。あんまり遅くなるとナビが煩いから帰るね。」 「あ、じゃあ送って…。」 「大丈夫だよ、研究頑張ってね!でも、無理しちゃ駄目だよ?」 じゃあねっ、と笑顔で手を振り、さっさか帰る。 「…まったく…危ないなぁ。」 苦笑いしながらも、覚醒しているのだから、余程の事がない限りは大丈夫だろうと思考を切り替える。 …でも、やっぱり気になると研究も手につかないもので。 「…やっぱり気になる。」 いそいで研究室の電源を落し、カバンを引っつかんでの後を追う守。 おいついたら、明日学校に一緒に行こうと誘おうと思いながら……。 2001/6/12 ブラウザback |