今日こそは、絶対この想い打ち明けるぞ! バイトより大事なモノ 「あ、あのさあ、話があんだけどさ」 「何?要。またバイトのお手伝い?今日は何よ」 仕方ないなあ、とふくれっ面を見せながらも微笑んでくれる。 この瞬間が凄く好きで、いつもついつい頼んじゃうんだよなあ…。 「今日のバイトはビラ配り……」 って何言ってんだ俺!せっかく一大決心してきたってのに意味ないじゃんか! そうじゃなくて、今日の本題は……! 「ビラ配りは楽だから好き〜。じゃ、行こっか。いっぱい配って稼がないとね♪」 「いつもサンキュー!」 ……今この時だけ、俺は自分の本能を呪いたくなった。 翌日 絶対絶対今日こそは言うぞ! 頑張れ俺、負けるな俺! 本能なんか理性で押さえ付けてやれ! 「あ、あのさ…大事な話が……」 「またあ?今日のバイトは何よ。その態度だと難易度高いやつでしょ。 …んー……高層ビルの窓拭きとか?」 「大正解〜!ピンポンピンポ〜ン!」 「しょうがないなあ、要は……。まあ分け前もらってるからいいけどさ〜」 行こっか、と鞄を持って歩いて行く後ろを泣きながらついて行く。 くそぅ……明日だ。明日こそは必ず……! さらに翌日 「あ、あのよう……」 「今日は何?私ウエイトレス系とかもやってみたいな〜」 「あ、ちょうど今日は喫茶店のバイトなんだ。一緒に来るか?」 「本当!?もちろん行く行く!」 ……あえなく撃沈。どうして会話がバイトから離れないんだ〜! ちくしょう……リベンジあるのみ! さらにさらに翌日 「なあ、…ちょっといいか?」 「……ずばり、今日は着ぐるみの日ね。私パンダさんがいい!もう覚えたから」 「よく覚えてたな〜。その記憶力に免じて、コアラさんは俺が入ってやろう」 「わーい!あれ、中々楽しくて好きなんだよね♪」 にこにこ笑いながら行かないでくれ……。 違うんだ〜!そうじゃなくて……俺が言いたいのはあ! 「要〜、何一人で座り込んで世界作ってしかもどっぷり浸っちゃってんの〜?置いてっちゃうよ!」 「あ、ちょっと待ってくれよ、置いてくなぁ!」 しくしくしく……明日こそは…! さらにさらにさらに……(以下、延々と続く) 「弘樹―っ!」 「よしよし、要も大変だね……」 泣きつく俺の頭をポンポンと叩いてくれる。 くうう、なんていい奴なんだあ!それに比べの野郎……! 「わざとやってるとしか思えない……チクショー!」 「やけになるなって、要」 「だってよー……」 ああも毎日毎日絶妙のタイミングで話そらされるとなあ……(しかもバイトに)。 計画的にやってるとしか思えなくなってきてるぞ。 決意してからかれこれもう十日以上経過してるんですけど。 「全く……何考えてんだよ、お前の幼馴染は」 「その何考えてるかわからない奴にホレたのはそっちだろ?要」 「う……」 ちくしょう、人の痛い所をつきやがって……! 「あーあ、俺嫌われてんのかな〜」 うわ、言うんじゃなかった……。 言葉にしたら余計重くのしかかってきやがった。 それって何だよ……告白すら聞きたくないくらい嫌われてるってことか? 想いすら迷惑だって?んなこと言われたら泣くぞ、俺……。 「要、先走りすぎ。大丈夫だよ、きっと」 「なぐさめはよしてくれ」 プイ、とそっぽを向くと隣で笑ってる弘樹がいる。……本当に、大丈夫なのかなあ…? 「少なくとも、嫌いな奴のバイト手伝ったりしないだろ?だから平気だよ」 「……そうかなあ…信じるぞ?」 「信じていいよ。要のこと嫌い、なんて僕聞いたことないから」 「ふ〜ん……」 相槌を打ちながらため息を一つ。 これで幸せが逃げたらのせいだぞ、と内心毒づきながら。 ……まあ、ここは一つ弘樹大先生の言葉を信じてみますかね。 神頼み、ならぬ弘樹頼み、だなこりゃ。 さらに数日後 俺はここ数日で諦めた。 と言っても勘違いすんなよ。告白するのを諦めたわけじゃないからな! タイミングってやつを計ってるのよ。フフン、俺ってあったまいー! あれから毎日バイトの手伝いを頼んでるし。 イコール!毎日この俺と一緒にいるわけよ。 過ごす時間が長くなれば、それだけ俺を『男』として意識しやすいだろう? これを積み重ねていけば、きっといつかは……! ああ、俺って健気……(←自画自賛) ってわけで、今日も元気にバイト頼みにレッツゴー! 「なあなあ、今日も手伝ってくれるか?」 「え?う、うん……」 あれ?今日は珍しく歯切れが悪いなあ。どうしたんだろ……。 「都合でも悪いのか?だったら無理しなくていいぜ?」 顔を覗き込みながら告げる。体調でも悪いのかな? …ってかこいつ、さっきから全然俺の顔見てねーでやんの。 なんか、らしくないなあ…一体何だってんだよ。俺なんかしたかなあ……。 「……都合悪いっていうか……予定は入ってないんだけど……」 「んじゃなんだよ。目ー見て話せよ、」 じっと見つめても、視線は合わされないまま。 本当に何だってんだよ……。 ため息をつきたい心境になりつつ黙っていると、ボソッとが言ったんだ。 「……ただ、私ってなんだろって思っただけ」 ――思っただけ、と言われても。 そう言われたら俺は返す言葉を一つしか持ち合わせていないわけで。 「……は、だろ?」 「そうだけど!」 もういいよ、と一言残してその場を去ろうと立ち上がる。 ちょっと待てよ、こんな中途半端な状態で行かすかっての! さっきからこいつは何が気に入らないってんだよ、おい。 これ以上俺は何も言えないぜ…? 「もう、要はさっさとバイト行けばいいでしょう!?私より何倍も大事なバイトにさ!」 「……なんでそこでそういう台詞が出てくるんだ?お前より大事……って俺がいつそんなこと言ったよ」 「言わなくてもわかるよ。要の思考なんか単純だもん」 言ったなこのやろ……人が気にしてることを。 売り言葉に買い言葉……ってこういうのを言うのかな。 俺がさすがにキレそうになった時、は信じがたいことをぬかしてきた。 「私がどれだけ要のことを想ってても、要にとっては所詮便利な女で終わりなんだよね。 バイト手伝ってくれる利用価値のある女。違うとは言わせないんだから!」 「………は?」 ちょっと待った。思考停止中……。 「言い訳は聞かないから!」 くるりと背中を向けて走り去ろうとするのを寸前で捕まえる。 う〜ん、俺ってなんて反射神経いいんだろ。 これもバイトの賜物……って違うだろ!今こいつなんて言ったんだ? 「……あのさあ、わりーんだけどもっ回言ってくんない?」 「はあ?どの面下げてそんなこと言えるわけ!?」 「下げる面はこれしかないんだけど……ってそうじゃなくて! ……今もの凄い台詞聞いた気がするんだけどさ…もしかして俺、うぬぼれてもいいのかな」 が俺のこと想ってくれてる……ってことは……もしかしなくても俺達…。 うわ〜お、作戦成功?つーか大成功?? 「うぬぼれ……って……え?」 あ、やっと俺の目を見やがった。 やっぱりの目って綺麗だよなあ……なんつーか、吸い込まれそうな色…。 俺は視線を絡み合わせたまま、捕まえた手を強く握りしめた。 「……この俺が、なんとも想ってない奴にわずかとはいえ分け前なんか渡すと思うのか? 弘樹になんか一回もやったことないぞ。自慢じゃないけど」 「……私だけ?」 「そう、だけ」 「なんで?」 「あーのーなあ……ここまで言ってんだから気づけよ」 がりがりと頭をかきむしり、前髪をかきあげる。 気のせいか、少し潤み出している双眸をじっと見つめた。口唇がかすかに震えてる。 「……ちゃんと言って……要…」 「俺は、お前が……のことが、好きだ。……ってこと。 バイトなんかより、全然の方が大事。……わかったか?」 一言一言はっきりと告げる。 はあ〜、やーっと言えたぜ……思えばここまでの道のり、えらく長かったなあ。 「要……」 「……できれば、返事欲しいかなー……なんて」 が緊張しないように、笑顔を見せてくれるように。 俺はちょっとおどけてウインクなんぞをしてみせる。 こういう所が健気なんだよなあ、俺って(再び自画自賛) 「……同じだよ……私も。要のこと……好き」 言ったと同時に勢いよく胸に飛び込んできた愛しい奴を、そっと抱きしめる。 やっと捕まえた……俺だけの……。 「よかったあ、嫌われてなくて」 「バーカ、それは俺の台詞」 「……なんか、結構遠回りした気、しない?」 「いんじゃねー?俺達らしくてさ」 からから笑った後、俺は気取った口調で囁いた。抱きしめる腕に少しだけ力を込めて――。 「俺だけのお姫様、本日のバイトコースは繁華街ゲームセンターの臨時店員となっておりますが、 いかがいたしましょうか?」 これからゆっくり時間をかけて教えてやるよ。 俺がどれだけを大切に想ってるかを……さ。 はい、お疲れ様でした!撤収!!(←ただいまの精神状態) うわあああああ!!今とてつもなく恥ずかしいです!! 世に出さずゴミ箱にポイとしちゃえばよかった……。 言い訳のしようもない駄文で本当に申し訳ありません(汗) みおっちゴメンね、こんな物贈りつけちゃって…。 あうあう……謝罪しだすとキリがなさそうなのでやめておきます。 こんなどうしようもない物を最後まで来て下さった皆様、どうもありがとうございました! 愛する(笑)管理人と読んで下さった皆様に深い感謝を込めて―― @葵 詩絵里 ※ かなり好きな感じのお話です、私的に(笑) 要久々〜、最近ガンガン株が上がってるので、また書き始めようかとも思える彼。 相方の要は要らしいと思う今日この頃。 @水音 2002・5・4 ブラウザback |