本当は半年も前に決まっていたこと……。

            でも、君を驚かせたいからぎりぎりまで黙っていたんだ。

             この計画…僕の愛しい恋人は喜んでくれるだろうか…?



My Only ……




「海外転勤……!?」
「半年前に辞令がきてね、アメリカへ行かなきゃならないんだ」
出発を一週間後に控えた今日、ずっと内緒にしてきたことを打ち明ける。
久しぶりのデートで突然の発言……。
可愛い可愛い恋人……さあ、どんな反応を見せてくれるかな。
「……半年…って、そんなに前に決まってて……何で今まで…」
すでに潤みだしている双眸を見つめ、困ったように笑う。
本当に、いつまで経っても泣き虫はなおらないね。
そういう可愛い所が好きなんだけど。
「……期間が少し長いんだ。短くても3年……長くて、5年か10年か…」
あえて疑問には答えずに話を続ける。
正確に決まってないからなんとも言えない、と付け足しながら。
でもね、今日、本当に伝えたいのはこんなことじゃないんだ。
もちろん転勤の話も大事だけど、そんなこととは比べ物にならないくらいの大切な話。
辞令を受けた時から決めていた、二人の将来に関わる、とても大切な……。
……」
「晃のバカ!!」
……急な転勤話…少しくらいは怒るだろうな、と予想はしていたけれど。
大粒の、真珠のような涙を流しながら、
今にも殴りかかってきそうな勢いでなじることないと思うんだけど。
軽くため息をつきながら優しく微笑みかける。
「……話を聞いて、…。……僕は…」
「聞きたくない!何も話すことなんてないじゃない!」
……?」
様子が変だ……こんなに怒ることないじゃないか。
なだめようとのばした手は力いっぱい拒絶された。
毛の逆立った猫のように威嚇し、僕を寄せ付けない。
「………」
「あ、晃のバカ!アメリカでもどこでも勝手に行っちゃいなさいよ!……大っ嫌い!!」
叫ぶなり踵を返して駆け出してしまう。
これは……何かとんでもない誤解をしているな…?
でも、一体何の……。
まあいい、今はとにかく追いかけないと。
疑問は、を捕まえて直接問いただせばいいんだから。





!……さあ、捕まえたぞ」
「っや……放してよ…!」
やっとの思いで腕をとったのも束の間、もの凄い勢いで暴れ始める
どうにかして僕の腕を解こうと必死になっている。
!!」
さすがに苛立ち、声を荒げたら首をすくめて途端におとなしくなった。
上目づかいに様子を伺ってきてたりする。
ため息を一つつくと優しく抱きしめた。
泣きじゃくるの涙を止めようと背を叩く。



「……やだよ…っ晃…!」
「?何がだい?」
「いやだ……別れたく、ない…っ」
その言葉を吐き出すだけで精一杯のようだった。
後は、ただ僕の胸で涙を流すだけ……。
驚いた――の中ではそこまで話が変換されていたのか。
別れ話を持ち出されると思い込んで、僕から逃げた……。
全く、とんだ人騒がせなお姫様だ。
、僕の話を聞いて」
優しく囁いても嫌々と首を振る。
両手で耳をふさいで拒否を示すが、僕もそんな抵抗に構ってる余裕はない。
誤解は早めに解いておかないと、はすぐに泥沼化するから。
それに、誰かにをさらわれてからじゃ遅いからね。
「ちゃんと聞くんだ………」
両手でほほをはさみ、顔を持ち上げる。
額にキスをし微笑みを浮かべた。
「早とちりの得意なお嬢さん。僕の話を最後まで聞いて欲しい」
瞳が嫌だと言っているが、それはあっさりと無視をする。
真剣な眼差しで見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「アメリカへ転勤が決まって、いつ戻れるかわからない。だから――」
ぎゅっと目をつむるの瞼にキスを落とし、先を続ける。
全く、これを今日は言いたかったっていうのに。
「だから、僕と結婚して一緒にアメリカに来てほしい」
一息で言い切った瞬間、閉ざされていたの目が大きく開かれる。
何が起こったかわかっていない表情に苦笑すると、もう一度同じことを告げた。



結婚してほしい、と――。



何度もまばたきを繰り返すに微笑む。
「だから、早とちりだって言ったんだよ」
「……晃…」
「返事は?
優しく髪をなでると、止まりかけた涙が再び溢れ出した。
体当たりするように胸の中に飛び込んでくる。
もう返事は聞かなくてもわかっているけれど、やっぱり言葉にしてもらいたい。
繰り返し髪をなでながら優しく問い掛ける。
…返事は?……僕と一緒に来てくれるかい?」
「ん……うん…!行く…!連れてって……晃と…ずっとずっと一緒にいたいよ…」
涙ながらの告白……一気に肩の力が抜けた。
少なからず緊張していたみたいだ。
やっと、この腕の中にを捕まえた……。
「一生、愛してるよ…」
囁きに、涙の微笑みが返される。
手に入れた幸せをかみ締めるように、そっと口唇に甘いキスをした。





〜後日談〜



『結婚〜〜〜〜〜!!?』
にプロポーズした翌日、僕たちは今後のことの報告をしに片山家を訪れていた。
大まかな経緯を話した途端、叫ばれてしまったわけで……。
「んと……だから、晃と一緒にアメリカに行くね」
少し緊張しながら一番言わなければならないことを告げる
「アメリカ!?御剣さん、海外転勤なんですか!?」
「まあ、そういうことなんだ。だから、向こうに行く前にプロポーズしたわけで…」
うろたえる片山君の横で何やら不穏な空気を見せ始める叔父が一人。
一人で不気味に笑い出した。
「……叔父さん…?」
不安そうに声をかけるに、びしっと指を突きつける。
「許さん……許さんぞ〜〜〜!!」
「ええ〜〜〜〜!!?」
結婚は認められないってことか……でも、簡単に引き下がる気は…!
「叔父さん、お願い!私は晃と一緒にいたいの!だから、アメリカに行かせて……!」
「式を挙げなければ、俺は断じて認めんからなあ!!」



ダン!とテーブルに足を乗せながら力説され……
不覚にもその勢いに飲まれ僕は頷いてしまっていた……。
式は、向こうで豪華に挙げようと思っていたんだけどなあ……。



結局、挙式しなければ意地でも認めないと言い張る叔父に負けて、
急ごしらえながらもなんとか間に合わせることに成功した。
出発の前日に結婚式、なんて…慌しいからやりたくなかったんだけどね。
でも、ウエディングドレス姿のは綺麗だったし、何より皆が喜んでくれたから……それでいい。
招待状を受け取った3日後に式、なんていう前代未聞なことをしたというのに、ほとんど全員が列席してくれたことも嬉しかった。



……この僕が、感動してしまったことを愛しい奥さんに告げるのは、さて…いつがいいだろうか…?









〜あとがきという名の言い訳〜


6月企画第一弾、ようやっと上がりました……。
今月いっぱいの企画だというのに、一体今日は何日なのでしょうか(爆)
第一弾で終わらないように頑張ります。


そのうち書いてみたい!と思っていたプロポーズもの、いかがでしたでしょうか?
作品とは呼べない、内容の薄いもので大変恐縮ですが……(汗)
ここまで読んで下さった皆様と、6月に入ってもあまり(←ここ強調!)せっつかないで待っていてくれた心広い管理人へ


                       愛と感謝を込めて――


                                      葵 詩絵里

‥‥せっついてるんだけどね、心の中では‥(汗)
私も頑張って書きます、はい。叔父のは先に予定があるから、先延ばし(日本語が変)
‥‥‥‥6月も半ばに入りそうな気配ですな〜、あはは;;

                                     水音


2002・6・12

back