買い物


 ショーウィンドーに飾られている品をふと見て、は足を止めた。
 じぃっとそれを見やっていると、背後から声をかけられた。
 見知った声なので警戒などはしない。
、買い物は終わった?」
「ああ、終わったよ。といっても大した買い物してないけどね。……何を見てるんだい?」
「うん、アレをね」
 隣に来た彼に見ていたものを示す。
 ショーウィンドーの中で一際厳重に保管されている、硝子ケースの中に入った首飾りだった。
 宝石が散りばめられて豪華絢爛である。
「あれが欲しいのかい?」
 問われ、首を横に振る。
 確かに綺麗だとは思うが、ああいった類の物を身につけるのは苦手なのだった。
 重くて、動きが鈍くなりそうなのが理由なのだけれど。
 ――そもそも買うつもりはないので、値段の事は考えていない。
「そうじゃなくて。ミーティアがああいうの持ってたなと思って」
「ああ……姫さまか」
 なるほどと頷く
 彼は公式の場に出てゆくミーティアを何度も見ていたので、彼女が持つ宝石のいくつかも目にしていた。
「トロデーンのツタにまみれてるかと思うと……勿体無くてさぁ。ああいうのをミーティアがつけると、凄く綺麗なのに」
 頬を膨らませる
「早く呪いを解かなくちゃ。がんばろ!」
「あ、ああ。もちろんだよ」
 握りこぶしを作って気合を入れた……だが。

 きゅるるるぅ〜。

「……おなか減った」
 実に間の抜けた音が腹から鳴る。
 は苦笑し、の手を引く。
「宿に戻ろう。僕もお腹すいてきた」
「うん」
 手をつなぎ、宿へ向かう。
 ドルマゲスを追うために、まずは腹ごしらえをしなくちゃ。


2008・12・31