たしなみ どことなく膨れっ面を下げて階段に座り込んでいる少女を見止め、は首をかしげる。 何か普段と雰囲気が違うような気がし、それが間違いでない事に気づく。 普段とは違う格好をしているからだ。 そろりと歩み寄り、は彼女の隣に腰かけた。 ボーっとしているのか、彼女はに気づいていない様子だ。 「?」 ぽん、と肩に触れると、弾けたように顔がこちらを向いた。 驚きに目を瞬かせている。 「あ、あれ、、いつの間に」 「今だよ。どうかした?」 「うー……眠くて。それに、ちょっと疲れててイライラしてるのかも」 「疲れたって、何かしたのか?」 うん、と頷く。 話を聞けば、どうも今朝からずっと教育係に貴族としてのたしなみというやつを勉強させられていたらしい。 普段は物凄く楽な格好をしているが、ドレスを着ている理由が分かった。 加えて彼女は堅苦しい事を嫌う。 近衛兵の兵舎に平気で遊びに来たり、訓練所で弓を構えているのを考えると、その『教育係との訓練』はとても苦痛だった事だろう。 はあくびと伸びをした。 「もう眠くて眠くて……教会のミサだって、たまに辛い事があるっていうのに……」 「あはは。大変だな、は」 「そう思うなら、が代わりに」 無理だよと苦笑すると、やっぱりそうだよね、と深々としたため息をつかれた。 「息抜きに付き合ってあげるから、そんな泣きそうな顔しない」 軽く頭を撫でてやる。 彼女はニッコリ微笑んだ。 「ってお兄ちゃんみたい」 「が妹か……苦労しそうな気がするよ」 「うわぁ、酷い!」 「ごめんごめん。さて、息抜きは何がいい? 散歩?」 「うん。あ、でもちょっと待って! 終わったら訓練所行きたいから着替えて来る」 待っててねと、急いで駆けて行くの姿を見ながら苦笑する。 トロデ王には悪いが、彼女に貴族教育をしても……余り実りはない気が。 何しろ、弓を持ち、野を駆ける方が性にあっているようなので。 「うーん、走るお姫様ってとこかなぁ」 |
2005・7・5