ゼシカ参戦



 トラペッタから歩き続けてリーザス村へ。
 そしてそこで起こった事件。
 ドルマゲスが、ゼシカという少女の兄、サーベルトを屠った。
 そして今、ゼシカはたちと共に海原へ出ている。
 目的は、兄の敵討ちだ。
 彼女は左右にくくってあるオレンジ色の髪を潮風になびかせ、船の縁に肘をついて海原を眺めている。
 は幾分か厳しい顔をしている彼女の隣に立ち、す、と飴玉を渡した。
「あ……えっと、、よね」
「うん。これからよろしくね、ゼシカ」
 改めてご挨拶、とはにっこり微笑んだ。


 2人とも口の中で飴を転がしながら海原を見やる。
 ゼシカがに何気なく聞く。
「ねえ、たちは?」
「ヤンガスとは船室で船が着いてからの陸路のことを考え中。王様とミーティアは、船尾の方でお休み中。で、あたしはゼシカとお話」
「ふふっ、そうね。ねえ、はお姫様なのよね?」
 嫌な質問だなぁという表情が思い切り出てしまったに、ゼシカは小さく笑う。
に聞いた通りね」
「なんて聞いたの?」
「ものすごーくお姫様扱いされるのを嫌うって」
「……だってさぁ、あたしはホントのお姫様じゃないんだよ? それなのに姫様扱いされるのって、なんかヤなんだってば」
「そういうものかしら」
「なんていうかね、上品で清楚で可憐っていうイメージがあるんだよね、姫っていう言葉。ミーティアはそれを地で行ってるけど、あたしはねぇ……」
 からからと笑う
 ふ、と言葉を止め、真剣な目でゼシカを見やる。
 ゼシカもを見返した。
「ゼシカ、あんまり思いつめない方がいいよ」
「そんなこと言われたって……無理だわ」
 確かにその通りだった。
 仇のドルマゲスを追う旅路。
 しかも旅に出たてとなれば、思いつめるなと言う方が無理がある。
 兄の事を思えば自然とドルマゲスも付随して来るし、そうなると気持ちがギスギスしてしまうのは、ゼシカでなくともそうだろう。
 は舌先で飴を転がし、うーんと唸る。
「あたしもねー、旅を始めた一番最初の頃は色々急いててさ。みんなを助けるために、早く力をつけて、ドルマゲスを倒さなくちゃーって思ってた」
「……その通りだと思うわ」
「うん。確かにドルマゲスをこのまま放っておくことはできないよね。ただ、だからって余裕が全くなく、旅をしていっちゃいけないんじゃないかって思う」
 分からないという風に、ゼシカは首を横に振る。
 彼女にとっては一刻も早くドルマゲスを倒すことが重要なのだと、は理解している。
 でも、一緒に旅をするのだから、自分の考えも知っていて欲しい――。
 そう思うのは、我侭でしかないのは分かっているけれど、それでもは言わずにいられない。
「どれだけ旅が長引くか分からないし。だからこそ、ずぅっと気を張ってちゃ駄目なんだよ。ドルマゲスを倒す前に、自分が倒れてたら意味がないでしょ」
「それは……そうね」
「全部を気楽に考えろっていうんじゃなくて、少しでも緩めてあげられる場所は、緩めておいた方がいいって思うんだよね。トロデ王に言わせれば、あたしは緩く考えすぎらしいけど」
 カリカリと頭を掻く。ゼシカは苦笑した。
「そんなこと言われてるの?」
「うん。には猪突猛進型だとか、結構なこと言われたりするけどね。自分じゃ普通にしてるつもりだからなんとも」
 とにかく、と仕切りなおし、はゼシカの手を握った。
もヤンガスもあたしもいるから、倒れないうちに気を緩めてね」
「――ええ、ありがとう。って優しいのね」
 言うゼシカに、は首を横に振った。
 とんでもない、と。
「優しくなんてないよー。あたしは、あたしがやりたいようにやってるだけだし」
「やりたいようにやってて、それが、わたしには優しいと感じるんだから凄いと思うけど」
「……あ、ありがと」
 あははと笑いながら、照れ隠しに海原を見やる。
「……兄さんの仇、絶対にとるわ。その時が来たら、全力でいくために――適度に力を抜かないとね」
 言い、ゼシカはに微笑みかけた。


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なにやら、こう……短くてスミマセン。愛はあるんです、愛は!!
2005・9・2
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