愛情リゾット





部屋に入り込む日差しの眩しさに珪は目を覚ました。
一瞬、自分がどこにいるかわからず微かに息を詰める。
ゆっくりと机に突っ伏している体を起こし、ぐるりと部屋中を見回してため息をついた。
昨夜は、遅くまでアクセサリー作りに没頭していたため気づかぬ内に眠ってしまったらしい。
痛む体を動かし、固まったままの首や肩をほぐすように回した。
作りかけの材料をいつもの場所に大切にしまい、シャワーを浴びようと立ち上がる。


瞬間、世界が揺らいだ気がした――。


(体が……動かない…?)
突然の事態に、だが落ち着いて対処しようと深呼吸を繰り返す。
そして気づく……いつもより体が熱いことに。
舌打ちしたいその状況に、最早ため息しか出てこなかった。
季節はもう秋。
机で、毛布もかけずに一晩を過ごし、無事でいられる時季ではない。
まして最近はモデルの仕事が忙しかった珪だ。
抵抗力が落ちていても不思議ではなかった。
若くても、人の子であるということ。
風邪は万病のもと……本日はおとなしくしていようと仕方なく心を決めた珪だった。





「……はい…熱があって……風邪だと思います。……すみませんが、
欠席でお願いします……はい、失礼します」
学校に連絡を入れてしまえば、後は寝ているしかすることがない。
せっかくの休みだから作りかけのアクセサリーを仕上げてしまおうかとも思ったが、
あまり気分も乗らない。
今日はモデルの仕事も入ってないし、一日のんびり寝て過ごして早く風邪を治してしまおう。
でないと、アイツに会えないから――。
欠席することに何も感慨は抱かなかった珪だったが、
ただ一人に会えない事実に割合ショックを受けていた。
机で寝てしまった己の責任、とわかっていても一日会えないということが重く圧し掛かる。
「たった一日だけだっていうのに……」
本日何度目かのため息をつくと、珪はあきらめたようにベッドへ戻って行った。
かくなる上は、今日一日で風邪を治して翌日学校へ行くしかない。
(アイツは、俺に会えなくても平気なのか……?)
考えて、すぐにそれは放棄した。
彼女の気持ちはすでにわかっている。
初めて自分から交際を申し込んで、OKをもらった相手なのだから。
きっと、会えなくて淋しいと思ってくれているはずだ。
だからこそ、早く風邪を治さなくては……。
常より熱い息を吐き出しながら、珪は睡魔へと身を委ねていった。





――同日、わずかに時間をさかのぼり早朝


めでたく珪の彼女になった少女、は朝早くから台所に立っていた。
今日は自分の大好きな人が生まれたというとても大切な日。
随分前から何をプレゼントしようか悩んでいて、先日やっと決まったのだ。
猫好きな珪のために、猫型のクッキーをあげようと。
ラッピングも鈴の模様が猫を連想させたので決めたもの。
この日のために連日クッキーの練習をしてきたは、張り切って調理に取り掛かった。
10月16日、誕生日当日にまさか本人が欠席するなど夢にも想うはずもなく……。



、もう時間でしょ〜!?そんなにゆっくりしてると遅刻するわよ!」
母の怒鳴り声に支度の途中で眠ってしまったことを知る。
遅刻ぎりぎりの時間に飛び上がり、焦って支度を整えた。
「もう、お母さんのバカ〜!もっと早く言ってくれてもいいのに〜!」
「そんなこと知りません。いつになく早く起きたと思うとこれだ……少しは成長しなさい!」
「…ってお説教聞いてる暇もないよ〜!帰ってから聞く!行ってきま〜す!」
制服のスカートを直しながら靴を履き、呆れ顔の母と弟を残して飛び出した。
もちろん大切なプレゼントは、抱えたカバンにちゃんと入っている。
教科書を忘れても、これだけは忘れたりしない。
学校までの道のりを走りながら、はプレゼントを渡した時の珪の反応を楽しみにしていた。
初めてできた彼氏の、初めての誕生日である。
想像するだけで胸が膨らむ……幸福感が全身を満たす。
知らぬ内に顔が笑ってしまう。
微笑みを浮かべたまま、ひたすら学校目指して全力疾走していた。


同時刻、珪が熱で苦しんでいることを知らぬまま……。





ぎりぎりセーフで教室にかけこんだは、呼吸を整えながら己の席に着いた。
もうあと1,2分で担任である零一が来てしまうだろう。
いつものように同じクラスである珪の姿を探し……席があいていることに気づく。
「あれ……?」
突如として湧き出した不安を押さえるように教室の中を見渡した。
何度目を皿のように探しても、目的の姿は見出せない。
鼓動の音がやけに耳に響いて聞こえる。
きつく拳を握りしめた時、ドアを開ける音が響いた。
ハッとして期待をこめて視線を上げるも、その音の主は担任。
礼をし、朝会が始まる。
それでも、珪のいる場所は空席のまま。
朝から楽しみだった心が急速にしぼんでいく。
今日、珪は学校に来ないのだろうか。
どれほど忙しくても欠席などしたことのなかった彼が休みなんて想像もしなかった。
しかも誕生日である今日に……。
そこまで考えて、ははたと顔をあげる。
今まで無欠席できた珪の突然の休み――。
己の中で、不安が頂点に達する。
(もしかして、来たくても来られない状況だって言うの?)
行き着いた答えに動悸は更に激しくなる。
本日の必要事項を零一が言っているにも関わらず、それはすでに聞こえていない。
ただひたすら、早く朝会が終わるのを待っていた。



「氷室先生!」
やっと朝会が終わり、零一が廊下に出るのを見計らって追いかける。
こんなに長く感じた朝会は初めてだった。
普段から言われている“廊下は走るな”ということさえ忘れ零一を捕まえる。
「何をしている、東雲。もう一時間目が始まるぞ、早く教室に戻りなさい」
「……珪く…じゃなくてっ、…葉月くんが来ていないんですが……どうしたのかご存知ですか?」
「葉月は風邪で欠席だ。熱があるから休むと朝連絡があった。
さあ、もういいだろう…教室に戻りなさい」
零一の言葉に、すぐには動けなかった。
やはり、来たくても来られない状況にいたのだ、彼は。
今にも食って掛かりそうな勢いで零一の腕を捕まえる。
「熱って、どのくらいなんですか!?風邪なんて……昨日は元気だったのに…!
 電話での珪くんはどうでした!?
 辛そうでしたか!?…ああ、咳とかはしてました!?」
「……東雲!」
いつにもまして厳しい叱責の声に、ビクンと身を震わせる。
反射的に閉じた瞳をおそるおそる開けると、あきれたような顔の担任が立っていた。
「何をそう心配しているのかは知らんが、葉月も子供じゃないんだ。熱が出たくらい平気だろう。
 咳とかの症状は電話では感じられなかった。明日にはまたいつものように登校してくる……君は落ち着いて今日一日過ごしなさい。
 気になるなら、放課後見舞いにでも行けばいい。…わかったな?」
「……はい、先生……ありがとうございました」
諭すように告げられ、はおとなしく捕まえていた腕を放した。
ポン、と肩を叩いて去っていく零一を見ながら、は教室へと戻った。
だが、はいわかりました、と過ごせるはずもない。
1時間目の授業を受けてはいるものの内容はちっとも理解できていなかった。
こうしている間にも珪の熱はあがっているんじゃないか……。
ご飯は食べたのか、薬は飲んだのか。
それよりも、あの珪がおとなしく寝ているのだろうか。
考え出すと次から次へと心配が尽きないことは明白だ。
気になりすぎて授業どころではない。
ならば――。
普段おとなしいからは想像もつかない行動を決心したのは、そう遅くない時間。
腕時計とにらめっこしながら、ひたすら授業が終わるのを待った。
何度も深呼吸をし、手のひらをにぎりしめる。
いつも考えるだけで実行などしたことのない行動に緊張は否めない。
口唇を湿らせ、ただチャイムの鳴る瞬間を待ち続けた。



キーンコーンカーンコー……


「それでは、今日はここまでにします」
教師の一言で授業は終了となり、礼をして休憩時間になった。
は教師が廊下へと姿を消すのを見計らって、そっとカバンを抱え廊下に出た。
左右を見回し、生徒以外の姿がないのを確認するとダッシュで下駄箱までたどりつく。
人目につかないように靴を履き替えてそろそろと外に出た。
「どうか見つかりませんように……!」
その後は、もう夢中だった。
一気に校門まで走り抜け、外に飛び出したのである。
何度も後ろを振り返りながら、一目散に町へと走り去ったのだった……。


キョロキョロと周りをつい警戒してしまうのは致し方ないことと目をつぶって頂きたい。
東雲、生まれて初めてのエスケープなのである。
息をきらしながら周囲の人間を確認し、初めて肩の力を抜いた。
「大成功〜!信じられない……こんなことができるなんて…」
人生初の、授業放棄……。
興奮冷めやらぬ中、は目的の店に向かって足早に進んでいった。
着いた先は、なんということはない普通のスーパー。
制服姿でカートを押す姿は何とも形容しがたいものがあるが、
そんなこと今のは知ったことではない。
野菜やら何やらを物色しながら買い物を楽しんでいた。
「珪くんは生野菜の苦いのが嫌いなんだよね……本当は食べてもらいたいけど、
 今日は風邪引いてるから勘弁してあげましょ」
くすくす笑いながらカートを押している様は、見ようによっては若奥様風である。
制服でなければ、の話だが。
夕方より全然すいている昼間のスーパーを見回しながら、はただ笑っていた。
この材料を持って家に行ったら、きっと珪はびっくりするであろう。
その反応を今から想像して楽しんでいたのである。
そう、が学校をさぼった理由はひとえに珪にあった。
心配で心配で仕方がないから……ならばいっそ見舞ってしまった方がいいと考えたのだ。
そして、どうせなら手ぶらで行くよりはお昼を作れる材料を持っていった方が喜ばれると考え、こうして買出しに来ているのだった。
尚もくすくす笑いながらは一通り店内を回り清算を済ませた。
買ったものを袋に詰め、それは楽しそうに珪の家へ赴いたのだった。





「珪くん……?」
そっと忍び入った部屋はカーテンがピタリと閉まっていて少々薄暗かった。
足音を立てないように注意しながら枕もとへ歩み寄る。
規則正しい寝息にホッと胸を撫で下ろした。
思っていたよりひどくはなさそうだったから。
それと、顔を見たことにより知らず安堵感が胸を満たし、細く息を吐き出した。
額に触れて熱の状態を計り、手近にあったタオルで汗ばんでいる首筋をぬぐってやる。
優しくほほをなでると、来た時と同様に静かに部屋を出て行った。
「眠っている今の内に、お昼の準備しちゃおうっと」
移動はなるべく静かに、足音を立てないように。
料理も同じことは言うまでもない。
キッチンに立ったはいいものの、その事実に気づきはしばらく立ち尽くした。
調理器具を揃えたまではよかったのに……。
「包丁使うにも何をするにも静かに、なんて……できるかなあ…」
あまり料理が得意な方ではない自分に対して、少しばかり条件がきつすぎる。
文句を言いたくなってしまうが、ここまで来てしまったからには仕方がない。
(努力あるのみ!)
そんなに多くないレパートリーの中から病人でも食べられるリゾットを選択すると
早速作業に取り掛かった。
「静かに静かに……っと」
一生懸命音をたてないように、と努力して取り組む様は見るものに笑みをもたらすほど
健気なものだった。



できあがったリゾットを皿に盛り付け、探し当てたお盆に水差しと共に置く。
必要なものを全て乗せると再び足音を忍ばせて珪の眠る部屋まで歩いていった。
リゾットはの中で得意な方に分類されるだけあって、手際よく作り上げることができた。
途中大きな音をたててしまったのはご愛嬌というもの。
それで珪が目を覚まさなかったことに感謝しながらゆっくりとドアを開けた。
視線の先には、未だ眠り続けている珪の姿。
持っていたお盆を机に置くと、そっと近寄り肩に手をかける。
気持ちよく眠っているのを起こすのは申し訳ない気もするが、
せっかくだから温かい内に食べてもらいたいと思うのが乙女心だ。
意を決すると、ゆっくり肩を揺さぶった。
「珪くん……ね、起きて…珪くん…」
呼びかけても肩を揺すっても一向に目を覚ます気配がない。
困ったは、もう少し強い力で揺さぶってみたが、それも同じで効果はなかった。
あまり強引に揺らすのは気が引けるし、大きな声を出すのもなんとなくはばかられる。
「起きてよ……珪くん…」
どうやっても起きない珪に、ほとんど泣き声近く呼びかけほほに手を当てる。
その瞬間、強い力に引き寄せられはバランスを取る間もなくベッドに倒れこんだ。
眠っている珪の胸の上に――。
「……え…?」
「おはよう、…」
驚くの目に映ったのは、にこやかに微笑んでいる珪の姿……。
しっかりと抱きしめられている己の体を自覚した時、やっと少女は相手の魂胆を知るのだった。
「も〜!たぬき寝入りしてるなんてひどい!珪くんのバカ!」
「ごめん。なんか、起こしてる様子が可愛かったから、つい……」
くすくす笑う珪にふくれっつらを見せながらも、は心底から怒ることはしなかった。
放してくれない彼に抱きつき、おでことおでこをくっつけて熱を計る。
「……もう下がっただろう?」
「ん〜?まだ少し熱いよ……って、あれ?」
「どうした?」
何となく流されているような状況に思いとどまり、は今の会話を頭の中で反芻する。
もしかして……いや、もしかしようもなく…。
「いつから起きてたの?」
「……が最初に部屋に入ってきた時から」
「っ〜……珪くんのバカ!」
びっくりさせてやろうと内心たくらんでいただけに、空振りに終わったショックは大きかった。
腕の中で自分を睨みつける少女を見つめながら珪は苦笑を禁じえない。
優しく髪を撫でほほに口づける。
「悪かったよ、反省する。もうしない」
「嘘だ〜!目が笑ってるもん!絶対反省なんて殊勝なこと思ってるわけない!」
どうにか捕らわれていた腕の中から抜け出してわめくに笑いながら身を起こす珪。
隣に愛しい存在を座らせ、そっと腕の中に抱き寄せる。
そんなことでは誤魔化されない、とばかりに眉間にしわを寄せる少女に微笑んだ。
あまりに愛らしいその仕草に胸に溢れる想いは果てを知らないようだ。
一方、も大好きな珪の笑顔を見ている内に、
ひとまず怒りは置いておこうという気になったらしい。
するりと腕の中から抜けると、机にあるお盆を運びできたばかりのリゾットを珪に渡した。
「どうせ何も食べてないんでしょう?とりあえず消化のいいものにしたんだけど……」
「……美味そう…サンキュ、。…食べてもいいか?」
目を細めて喜ぶ珪の姿にホッとしたように微笑む
勢いよく頷いたのを見てから珪はスプーンに手をつけた。
一眠りして気分がよくなっていたのか、何も言わず夢中に平らげていく姿に目を丸くする。
「珪くん、いっぱい作ったからそんなに慌てないで……
 ちゃんと噛んで食べなきゃおなかこわしちゃうよ」
「ん……でもこれ、美味いよ。お前料理の天才だな」
生返事でリゾットをかきこむ姿には思わず笑ってしまう。
喜んでもらえてよかった、と胸をなでおろした。



空腹を訴えていたおなかが落ち着いたのか、珪はおとなしく渡された薬を飲んでやっと一息ついた。
食器を再び机に置いたは、招かれるまま珪の隣に腰掛けた。
「お前……今更聞くのもあれだけど、学校は?」
「……さぼっちゃった」
ペロ、と舌を出しながら告げる少女にため息をついてしまうのは仕方ないだろう。
本当なら怒った方がいいのだろうが……珪はがどれだけの勇気を振り絞ってエスケープしたのかが容易に想像できてしまった。
いつもは真面目でおとなしい優等生の彼女が、なりふりかまわず学校を抜け出してしまったのだ。
きっと、それだけ自分を想ってくれていたということ――。
そう考えてしまうと、嬉しくて何も言えなくなった。
「……珪くん、怒る?」
おそるおそる見上げてくる瞳を見つめ、笑って首を振った。
穏やかに抱きしめ、長い髪をなでる。
に、会いたいと思ってたから……怒れない。お前が来てくれて、すごく嬉しかったから…」
「珪くん……」
嬉しそうにしがみついてくる愛しい存在を優しく包み込む。
「今日はね、特別なの……ずっと一緒にいたいと思ったの」
「え……?」
「もう、本人が忘れてどうするの!今日は、珪くんの誕生日でしょう。
 あなたが生まれた、一年に1度の特別な日」
「あ…今日、か……すっかり忘れてた…」
苦笑するに困ったような顔を向ける。
珪には、何故今日が特別なのかがわからないようだった。
そんな彼の心情を察すると、そっと手をとって己のほほに押し当てた。
「珪くんが生まれた今日この日が、私にとってとっても大事な日なんだよ…。
 あなたが生まれてきてくれたことを感謝する日。
 私の大好きな珪くんが、この世に誕生してくれたことをお祝いする日……わかる?
 私の言いたいこと」
「……なんとなく、だけど…」
「うまく説明できなくてゴメンね。でも、私にとって大切な日なの。特別なの」
穏やかに微笑むに、珪もつられて微笑んだ。
「生まれてきて、私と出会ってくれてありがとう、珪くん……」
…」
「お誕生日、おめでとう……」
優しいほほへの口付けは、珪にとって何よりのプレゼントだった――。
「……ありがとう、…なんか、テレくさいけど……嬉しいよ」
「喜んでもらえれば私も嬉しい。…あ、あのね、プレゼントあるんだよ」
「今のキスが十分な贈り物だと思うけど……」
「そ、それはオプションってことにしといて!」
顔を真っ赤にさせて激しく動揺している少女を笑いながら見つめると珪は壁に背を預けた。
やはりまだ本調子ではないらしい。
起きているのが少しばかり辛いようだ。
「珪くん、無理しないで横になって。ね?」
慌てたようにそばに来る少女に微笑むと首を振った。
「大丈夫だよ、……そんなに柔な体じゃない」
「わかってるけど、でも心配だよ……ね、お願いだから、眠らなくていいから横になって」
懇願するように見つめられたら珪はそれにかなわない。
仕方なしにベッドに横になると、可愛い包みを持ったが脇に座った。
「はい、珪くん。誕生日プレゼント」
「ありがとう……なんだろう、甘い匂いがする…」
「エヘ、クッキー焼いたの。珪くん今風邪引いてるから、治ったら食べてね」
「……もったいなくて食えないかも……」
大事そうに両手で包んでいる珪を見、はほほを赤くした。
嬉しそうに、しかしテレくさそうにしながら微笑む。
「いつでも作ってあげるから、ちゃんと食べてよ」
「…ん、わかった……サンキュ」
枕もとにそっと置く様を見つめは目を和ませた。
ケーキもない誕生日だけど、珪はとても喜んでくれた。
それだけで、は十分だった。何より、本人に喜んでもらうことが、
今日という日の大切なことだから――。


その後、二人はいつものように静かに音楽を聞いて過ごし、とりとめのない会話に笑った。
いつしか珪が疲れて眠ってしまうまで……。
ヴァイオリンの演奏をBGMに寝息をたてている珪を見つめながらは微笑んだ。
安心したような、全てを許した寝顔に嬉しくて。
そっと髪をかきあげながら額にキスを贈る。
「食器片付けてきちゃうから、少しだけ待っててね」
眠っている珪を起こさないようにお盆を持ち、そうっと部屋を出て行った。
諸々の仕事を終え、再び部屋へ戻ってきたは投げ出された手をそっと握った。
珪がよく眠れるように、悪夢になど苛まれないように。
「早くよくなってね、珪くん……でないと私、明日も学校さぼってお見舞いに来ちゃうから…」
くすっと笑うと、上体をベッドに預けた。
握っている手を両手で包み込み、珪の寝顔を見守っている内に、
も傍らでいつしか夢の世界へ旅立っていった……。
額を近づけ、寄り添いあうように。



夕刻、目を覚ました珪が見たものは、しっかりと己の手を握ったまま眠るの姿だった。
ずっとそばについていてくれたことに喜びを覚えながら、
感謝の気持ちをこめて眠る天使に口付けた――。










珪くんお誕生日おめでと〜!!
間に合ってよかったと切に思います……。
何度ももうダメだよ間に合わないよと思いながらもあきらめないでよかった。
大好きな彼のお誕生日を祝えて、とっても自分HAPPYです♪


え〜っと、いかがでしたでしょうか。
ときメモで初の誕生日夢となるものなのですが…。
あんまりラブラブしてなくてごめんなさい!
なんとなく珪くんのお見舞いに行きたかっただけなんですよね。
自分の願望詰まりまくり……(汗)
私と非常に近い誕生日である珪くんはやっぱり思い入れが強いキャラで、本当に間に合ってよかったです。
にしても本当に近いんだよなあ……(笑)
なんとなく同じ日ではないことに淋しさを感じもしますが、まあそれでよかったのかなあ…?


意味不明なコメントなのは眠いからだと思ってやって下さい。
まとまりなくて申し訳ないッス。
それでは、この辺で失礼致しやす!
いつものように、ここまでお付き合い下さった心のひろ〜い皆様と、
おそらくこのドリームを首を長くして(?)待っているであろう管理人へ
一緒に珪くんの誕生日をお祝いしてもらえると嬉しいな、と思いつつ
愛と感謝をこめて――


                                      葵 詩絵里

し、しょっぼいタイトルつけてスマンですーーーー!!(滝汗)  ←水音


2002・10・16

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