構わないで 「……君は随分とオドロキ君に構うよね」 質問のような独白のような、成歩堂の言葉。 王泥喜が珍しくとっちらかした書類(普段はきちんとするから、余程慌てていたのだろう)を片付けていたは、ソファでくつろいでいる成歩堂を見やり、首を傾げた。 「またいきなりどうしたの?」 彼の突飛な発言は、再会してからは珍しいものではなかった。 むしろ毎度のこと、ぐらいの認識になっていたが、今回はそこに少しだけ違和感を感じた。 ――なんだか怒気混じり。 は、みぬきと王泥喜を送り出してから、今までのことを考える。 ……彼の機嫌を損ねるようなことはしていない。多分。 特別、王泥喜にかまった覚えもない。 「私、フツーだと思うんだけど」 「君が、彼の書類を片付ける必要なんてないだろう」 「これも仕事だし。昔、龍一さんが放った書類を、私が片付けてたのと一緒だよ」 「一緒に調査に行って、遅くなったからって外食したり」 「王泥喜くん、凄くお腹鳴らしてたし」 それで? と促す成歩堂の笑顔が逆に怖い。 王泥喜がいたら、なんて爽やかなんだと言うかも知れない。 だがは、彼の表情の裏側にあるものを感じて引きつった。 「や、その……いいじゃない。前ここにいた時と同じことしてるだけでしょ」 「全然違う」 どこが、と尋ねる前に 「僕のためじゃない」 彼が先んじて言った。 は目を瞬き、成歩堂を見やる。 彼の視線は真っ直ぐで、冗談を言っている風ではない。 真実、心からの発言らしい。 は溜め息をついた。 「いくらなんでもあんまりだよ。龍一さんがいるから、私も頑張ってるのに」 彼がいる場所だから、ここを保つために働く王泥喜の手伝いをする。 王泥喜を補助することはつまり、成歩堂の力になることだとは思っているから。 でなければ、好き好んで片付けなんかしない。 仕事をふたつ掛け持ちして、自身を疲弊させたりしない。 「、ありがとう。……うん、でも僕は子供だから君が彼の面倒をかいがいしくみると、駄々をこねたくなるんだ」 子供って自分で言うし。 「私より年上なのに……」 「僕の不機嫌を治すために、ちょっと協力してよ」 「……なに」 「ほっぺにチュー」 今こそ王泥喜を召喚するべきだと思った。 いつの間にやらソファから立ち上がり、近付いて来る成歩堂。 逃げたらまた後がヒドいと知っている。 ……一度ぐらい、今の彼を言い負かしたいと思うだった。 携帯打ち込み日記載せの初夢でした。 こうやってみるとやっぱし文字数少ないなあ…いや、普通にでも少ないんですけど、私の文章って。 (日掲載日・2008/4/16) ブラウザback |