Sweet Inganity 4 が、パーティ会場でもめている、その頃、フィランソロピー日本中央支部では。 「やあ! お久しぶりです! …若干、知らない顔も混ざってますが」 メンバーの一人一人と握手をしながら、自己紹介をしているのは、以前の<事件>に巻き込まれた、正也だった。 「いきなりで出迎えも出来なくて…すみません」 「いや、いいんだ」 オタコンの答えに、恐縮ですと苦笑いをしながら、正也は立ち話もなんだと、応接間の方に彼ら、スネーク、オタコンと、メイ・リンにメリルを連れて行った。 ソファに座ってもらい、とりあえずコーヒーを出す。 それから、改めて、挨拶をした。 「それにしても…君がまさか、フィランソロピーメンバーになるなんてね」 コーヒーをすすりながら、オタコンが感慨深そうに言う。 スネークも、同意するように頷いた。 「そちらの女性たちも、フィランソロピーの…」 「いいや、彼女達は違うが、補助的役割を果てしてくれている。影でな」 「なるほど…」 メイ・リンとメリルに、改めて 「僕は、日本中央支部、メディカル・チーフのマサヤと言います」 と、挨拶した。 正也は、以前の<フェイト・ワークス社での事件>の後、一人日本に帰国し、その足でフィランソロピー日本支部に向かい、医療メンバーになる事を希望した。 それから六ヶ月。 今では、チーフにまで昇進し、諜報員のケアから、情報の総括まで、幅広い仕事をしている。 一支部の人数が少ないフィランソロピーでは、オールマイティーな仕事は、ままある事だ。 有能とみなされれば、その能力を埋もれさせたりしない。 そういう意味で、正也は日本支部の強力なメンバーだといえる。 勿論、入る時に査定を受けはしたものの、メイン・メンバーであるスネークとオタコンと面識があるとなると、話はかなり違ってくる。 元々人材不足のフィランソロピー。 日本に支部がある事すら知れていない現状では、正也は格好の人材だった。 「…僕らが必要な情報を受ける前に、ちょっと聞いておきたいんだけど」 オタコンが飲み干したコーヒーカップをソーサーに置きながら、正也の顔を見て話を進める。 メイ・リンとメリル、スネークも、それを聞いていた。 「ここの施設の説明、お願いできるかな」 「え、あ、はい」 暫くこの場所を中継地点にしようというのに、中の施設を知らないと言うのは、問題だ。 そう考えたオタコンたちは、正也に説明を求めた。 パンフレットなどあるはずもないし、支部ごとによって施設もまるで違う。 説明を受けておいて、損はないだろう。 「えと、そうですね…そちらのフィランソロピーと、多分PCの性能は大差ないと思います」 「オタコンの奴は、自分用のノートPCを持参してるがな」 スネークの突っ込みに、オタコンとメイ・リンが苦笑いする。 大事な<彼女>を、人気のない寒々しい家に置いていくのは忍びないと、今の所一番大事にしているノートPCを、彼は持ってきていた。 ちなみに、メイ・リンは持ってきていない。 「銃なんかは、あるのかしら?」 メリルの質問に、正也は唸った。 「…一応、あるにはあるんですが…」 「何か問題でも?」 「ええ。実弾を装備するのは、認められていなくて…せいぜい、M9…麻酔銃だけです」 警察ではないから、こればかりは致しかたない。 街中で銃撃戦を繰り広げる事など、この国では考えもつかないのだから。 スネークは、ぐるりと部屋を見回し――どうも、見慣れたものを見つけた。 久々に見た、と言う方が正しいかもしれないが。 「……マサヤ、あれは、もしかして」 「ああ、はい。VRルームです」 「……何故、そんなものがここに?」 正也は、VRルームの前に立ち、こつん、と入り口を叩いた。 「諜報員用です。機器は、ここの支部長が、前の支部長から譲り受けたとかで……詳しい事は良く知らないんですけど、まあ、大して使われてません」 「……なるほど」 大きくはないVRルームをひとしきり見てから、スネークは視線を横にずらした。 正也は、話を続ける。 「まあ、中央支部とはいえ、表向きは普通の企業ですし、酷く目立ちもしませんし、IDと指紋を通さないと、中へ入れないようになってますから、外部に何かが漏れるという事は、余程の事がない限り、ないと思って大丈夫です」 「……ねえ、もうそろそろ本題に入らない?」 コーヒーを飲み干してしまったメイ・リンが、進言する。 一同頷くと、正也はもう一杯コーヒーを入れ、ソファに腰掛けた。 「の事、ですよね。こちらも、彼女の家を巡って、色々怪しげな動きがあるっていうんで、監視してたんです」 「怪しげな動き?」 スネークの言葉に、正也は頷いた。 「ともかく、彼女の家――家の事を、少しお話します」 「の母親は、キクノ・。後にアメリカの企業家と結婚しました。ご存知の通り、は彼らの実の娘ではありません」 スネークがその言葉を聞いて、やりきれないような表情で首を横に振る。 「…両親の研究の産物、それが、…」 「そうです。そして、この前の事件の時、両親は亡くなった。それに一番憤慨したのは、家当主の、ムラサキ・という、にとっては祖母でした」 「まあ、肉親が死んでしまったんだから…当然かもしれないわね」 メイ・リンが何か納得するように頷く。 だが、正也が首を横に振った。 「紫は、菊乃さんをゆくゆくはの家の跡継ぎにと考えていたんです。だから、訃報を聞かされて、激怒した。の家は、長女が継ぐことになっていて、菊乃さんは、母親の反対を押し切って結婚したんです。 彼女には、他に、翠(みどり)、蒼(あお)という二人の娘がいますが、長女にこだわっている紫は、どうしたものかと、考え始めた」 「……変なおばあさんね」 メリルが実に素直な感想を口にする。 確かに、妙な話であはるのだが、という家は、どうも昔からの名家らしく、今まで続けてきた伝統とか、秩序とか、そういうものに五月蝿いらしい。 スネークが、正也に向かって、一つ考えを提示する。 「…そこで、を連れてきたって事か」 彼の言葉に、正也は頷いた。 「そうです。血が繋がっていなくともいいと、紫は長女の娘、に目をつけた。彼女の母が、を一人でマンション暮らしさせていたのは、祖母のそういった目から、彼女の存在を引き離したかったからだという情報があります」 「で、その彼女は今どうしてるんだい?」 オタコンの言葉に――正也は、一瞬言うべきか、考えた。 迷いが生じてしまった。 言わなければ、先に進まない事は判っているのだが……。 「……」 ちらり、とスネークを見ると、嘆息し、意を決して口を開く。 「彼女は、家にいます。……その、結婚…させられるっていう話で…」 「なんだと!!?」 ソファの前にあるテーブルをひっくり返しそうな勢いで、スネークが立ち上がる。 あわててオタコンとメイ・リンがテーブルを押さえた。 わななき、怒りの目を正也に向ける。 「どういう事だ!」 「お、落ち着いてください!! 僕だって、かなり腹立ってるんですから!」 正也が慌てながらもムッツリした顔で、スネークをなだめる。 メリルが立ち上がり、スネークの服の裾を思い切り引っ張って座らせた。 「静かにしなさいよ。話が先に進まないじゃない」 「………」 メリルに言われ、大人しくなる。 「そうよ、スネーク、静かにね」 メイ・リンの怒りの宿った目に、うっと詰まりながら、正也の話を促すスネーク。 ……どうも、女性陣の方が、怒っているような。 「祖母の紫は、ある企業との親睦をより深めようと――要するに、家を更に安定させようと、を結婚させようとしてるらしいんです」 「………ちょっと待て、家ってのは、長女が継ぐんじゃなかったのか?」 スネークの意見ももっともな事だ。 もし、が嫁に行ってしまったのなら、の家を継ぐことは出来ない。 矛盾している。 「ええ、ですから、多分…婿養子に貰うんじゃないかと」 「企業側の息子とかを、って事だよね」 「オタコン…そうだと、思います」 ……なんで、を取り巻く人間というのは、こうも一癖も二癖もあるんだろうか。 そう思いながら、スネークは自分たちのことを棚に上げている事に気づいてなかったりする。 「それって、生贄みたいなものじゃないの!」 メイ・リンが酷くいらだった様に声を上げた。 大事な友人が、人身御供のようになるのは、やはり気分が悪い。 全力を持て、止めてやろうと息巻く彼女に、オタコンも同意するように頷いた。 「そうだね」 「…あと、これはまだ未確認情報なんですが、が結婚する先の会社…、メタルギアに関わる事を何かしているとの情報があって」 「………日本でか?」 「考えにくい事なんですけどね」 苦笑いする正也に、スネークは顎に手をやって唸る。 あれこれと、一度にやる事は出来ない。 「ともかく…明日にでも、その家へ行ってみよう。スネーク、行って来てくれるかな」 オタコンの進言に、断る理由もないスネークは、すぐさま頷いた。 スネークと案内役の正也が家に向かう事にして、メリル、メイ・リン、オタコンの三人が、支部の方で待機、かつ、メタルギアの未確認情報についての、情報収集を担当する事になった。 変換がカタカナだったりひらがなだったりでミョウチクリンで申し訳ない;; ………また自分で収拾つかなくなるような展開でまあ…(泣) 2003・3・19 back |