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「あれ、スネーク……君一人かい?」
「あぁ、は日本の友人と会って話してる。もうそろそろ帰ってくるだろうがな」
 タバコを片手に、オタコンの横に積んである書類に目を通す。
 オタコンは、相変わらずモニタを見つめていたが、その内容はいつもと違い、メタルギアに関するものではないようだ。
 スネークは、が正体不明の敵に襲われた際、襲ってきた黒服の中の一人が、持っていたスーツケースに、小さくロゴがついているのに気がついた。
 今、それをオタコンに調べてもらっている最中だ。
「……判ったよ」
「どこの組織だ?」
 モニタを見ると、FATE・WORKSとの表示が映されていた。
 フェイト・ワークス。
 大規模な薬品研究所を持ち、世界各国に子会社を持つ、総合商社。
 エリート達の巣窟、と言われる会社だ。
「フェイト・ワークス……確か、前社長のカルド・ローダーは突然死……。息子のケイル・ローダーが後を継いだんだったな」
「彼はまだ24歳だけど、各方面で非凡な才能を見せてるみたいだね」
「裏もあるって話だけどな」
 スネークとオタコンの聞き及ぶ限りでは、裏稼業にも手を出しているらしかった。
 違法な人間クローンの作成、軍事介入、暗殺や拉致、
 暗部のエキスパート養成……。
 闇の組織としても、一部ではかなり有名だと聞いている。
「しかし……そんな会社が、になにを求める?」
 の両親も、かなりの大企業経営者だった。
 その社長と社長婦人を、秘密裏に抹殺してまで、娘を欲しがっているその理由が判らない。
 殺した事が発覚すれば、窮地に立たされる事を知っていても、行動を起こした。
 発覚しない自信があるのだろうが……。または、その筋に手を回しているか。
 ニュースで流れた死因は、事故死。
 手回しされていると思っていいだろう。
 捜査官が、どうしようもなくマヌケな捜査をしなければ、の話だが。
が持ってきたあのディスクが、全部教えてくれるような気がする」
「ディスクはどこへ?」
 ここにある、と、オタコンは収納場所から取り出した。
「今、データをナオミに検証してもらってる」

 二度目の目覚ましの音で、目が覚めた。
 正也は、まだ眠っていたいと駄々をこねる体を、洗顔で無理矢理覚醒させる。
 初出勤で、遅刻するわけにはいかない。
 予定の時間より早く会社に着けるよう、朝食もそこそこに家を出た。

 社についた正也は、自分の他に新人が数名しかいない事に気がついた。
 新人は、各セクションの新人育成係に連れられ、待合室からどんどん退出していく。
だが、正也の担当は未だ現れない。
「……忘れられてるんじゃないだろうな……」
 手近な椅子に座って、一息つく。
 緊張感も、段々と薄れていった。
(……よくこんな大企業入れたな、俺……)
 と正也の通っていた高校は、かなり特殊で、高校3年になったその時から、国内外通じて就職が可能になる。
 勿論、時期にならなければ求人を出さない社もあるし、この社のように、年に何度か求人がある場合もあり、色々ケースがあった。
 アメリカのこの会社に出願したのは、本当にダメもとで、外国語(英語)が得意で、薬剤に興味があった、という軽い理由。
 面接はなく、書類選考のみ。本当に、よく受かったものだ。
「……君が、マサヤ・サナダ?」
「あっ……はい!!」
 ぼーっとしているうちに、担当が来たらしい。
 慌てて立ち上がった。
「遅れてすまない。私は君の担当のダニエルだ。……早速だが、付いて来てもらおう」
「はい」

「失礼します」
(ここって……社長室……)
 正也は、自分が何故ここに連れてこられたのか、皆目検討がつかない。
 まだ、なにもミスしていないのに。
「社長、マサヤ・サナダをお連れしました」
「ああ、ご苦労」
「……」
 社長が若い、という事は知っていたが、やはり目の前で見ると驚くものだ。
 彼の持つ妙な威圧感は、背筋が寒くなる程。
 ……普通ではない。
 社長というのは、皆こうなのだろうか。
「私はケイル・ローダー。よろしく、マサヤ」
「は、はい……」
 緊張の余り、声が上ずる。
「君の希望は……薬品研究だったね」
「はい、自分の研究ではなく、サポートを希望ですけど……」
「すまないが、本来の仕事の前に、協力して欲しい事があってね」
 社長立っての頼みだ。断れば即、首が飛ぶに違いない。
 正也は頷いた。
 ケイルは、頷いたのを確認すると、話を続けた。
という女性を知っているかね?」
「!?」
 一瞬、聞き違いかと思った。
 どうして、世に名高き会社の社長時の口から、友人のの名が出て来るのだろう。
「はい、存じてます。一緒に勉強した仲ですから」
「君に折り入って頼みがある、彼女を連れてきて欲しい」
「彼女を……ですか?あの、どういった理由で――」
 質問は許さない、という表情に、正也はそれ以上なにも言う事ができなくなり、口をつぐんだ。
「彼女は我が社にとって大切な人材なんだ。よろしく頼むよ」
「はい……」
 正也はダニエルと一緒に、を社に連れてくる事になった。
 彼女の所在を知っている訳ではなかったが、携帯に連絡すれば会える。
 ふに落ちない感じを持ちつつも、社長勅命の仕事をこなす事を考えた。

「ねー、スネーク、マサヤと会ってきたいんだけど、いい?」
 武器の調整をしていたスネークは、を見ずに手を振った。
 ……ダメ、という事らしい。
「なんで?」
「自分の置かれた状況をいい加減判って欲しいんだがな。1人でフラフラできる立場か?お前は」
「だから、スネークについてきて欲しいなと……思って」
 が両手を合わせてお願いする。
 ここでダメと言えば、勝手に1人で出て行く可能性もある。
 時間制限を設け、納得させた上で、同行する事にした。

 約束の店には、先に正也が来ていた。
 幾分か緊張した面持ちで、を迎える。
 スネークは、一応店の外で待機していた。
 正也がなにに対して緊張しているのか、スネークには判らなかったが、用心するに越した事はないと、周りに注意を払う。
 の方は、緊張している事など、気付いていない様子で正也に話し掛けた。
「どうしたの?」
「実はさ、に頼みがあって」
「なに?できる事なら聞くよ?」
「両親へのプレゼント、一緒にに見立てて欲しくて」
 こんな理由でごめん、と頭を掻く正也に、は微笑んだ。
「私でいいなら、一緒に見立てるね」
 スネークに時間を制限されているから、そうそう長くはいられないのだが……。
 少し、融通を利かせてもらってもいいだろう。
 とりあえず、今の所危ない事はなさそうだし。
「じゃあ、時間ないから、早く行こう」
 正也の言葉に同意し、立ち上がる。
 スネークに目線を送り、店を出るよと合図をした。
 まだ何処かへ行く素振りがあるので、もう少し付き合う事になるのかと、溜息をつく。
 会計を奥のカウンターで済ませている間に、彼の後ろで喧嘩が起きた。
 一瞬、その喧嘩を見て、から視線を外す。
 ……男同士の喧嘩か。
 通行人が、野次を飛ばしたり、止めようとしたり、悪戦苦闘している。
 溜息をつき、視線を戻した。
「……!?」

 目に飛び込んできた光景に、我が目を疑う。
!!」
「…………!!」
 スネークは慌てて小銃を取り出して、店の中を走る。
 自分が一瞬目を離した隙に、彼女は裏口から黒服の男数人に連れ去られようとしていた。
 裏口から姿を消したその数秒後に、スネークも裏口から外へ出る。
 既に、は黒服たちの車に乗せられ、その車は猛然と走り出していた。
 銃を撃ったが、防弾ガラスなのか傷つきもしない。
 成す術なく、はスネークの目の前でさらわれた。
「クソ……!!」
 自分が目を離した結果だ。誰が悪い訳でもない、自分のミス。
 の……日本の友人は、これを知らなかったとでも言うのだろうか?
 ならば、何故奴等の車に乗っていた?
 一緒に拉致された、という感じではなかった。
 だとすれば……友人も黒服の仲間、と言う事になる。
「なんてこった……」
 すぐにオタコンに連絡をとり、彼女を取り戻さなくてはいけない。
 スネークは、走り出した。



中途半端な描写でスミマセンです。
私の技能なんてこんなもの……(泣)
まだ続く……長いです、はい;;
一話一話が短いので、進みも遅くて。
ぐあー、努力します;;

2002・4・11

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