desire to have entire possession



 very possessive man.
 …独占欲の非常に強い男の意。
 現在のスネークの行動は、これに当てはまるかもしれない。

 とある事情――いや、成り行きでフィランソロピーという、ちょっと過激なNGOに参加している、日本人は、祖国から遠く離れたアメリカの青い空の下、小脇に荷物を抱えながら、ほくほく顔で、アジトへと戻る所だった。
 いつもはオタコンの専門用語バリバリの買い物なんて嫌がるのだが――いや、実際途中までは嫌がっていたのだ。
 だが、帰り際、人気のある移動式アイスショップが通りがかった事で、の機嫌は急変。
 右手にアイス(ダブル)を持って、ちょっと行儀が悪いが、食べながら帰っている。
 口の中に冷たくて甘い味が、一杯に広がっていた。
 ――だが、帰ったら水を飲まねば。
 喉がべとつくだろうなぁ…なんて思いながら、てほてほと歩いていると――。
「なあ、君、日本人だろ?」
「――ん?」
 私?と振り向くと、壁に寄りかかっている日本人風の男の人2人。
 髪の毛が金髪だったので、一瞬はて?と思ったのだが――よくよく見てみれば、ばっちり日本人顔。
 いけない事ではあるのだが、同じ出身国なだけに油断もある。
 普段なら絶対に相手にしないのだが、不用意にも返事を返してしまった。
 歩いてくる2人組みに、しまったなぁと思いつつ、アイスを舐める。
「君、アメリカ住んでんの?」
「黙秘権」
 アイス食べながら、あっさりとそう言ってのける。
 少ししかめっ面をしたものの、直ぐにもとの調子を取り戻す男2人。
「名前は?」
「ここで、ホイホイ名前言うと思うの?」
「…まあいいや。あのさ、ちょっと道教えて欲しいんだよね」
 ……もしかしてこれは。
 とりあえず、言われた場所を口頭で述べてやるが――。
 案の定、それじゃ判らないので、そこまで連れて行ってくれ、なんて言い出す。
 は頭の隅で、あぁ、久々にナンパだ――なんて思っていた。
 日本を出て以来、遭ったことはなかったんだが。
 1人で家に帰るまで、じっくりアイスを味わいたかったのに、気分台無しである。
「悪いけど――」
「いいじゃん、同じ日本人のよしみでさー」
 何のよしみだっつの。
「とにかく、ダメなものはダメなの。OK?」
 それでも諦めず、腕を掴んで引き止める。
 さすがに男2人掛かりで、しかも両手に荷物を持っていると――逃げるに逃げられず。
 アイスを顔にぶつけてやり過ごす事も考えたのだが、生死に関わるような事でもないのに、折角のアイスをこんな男共のために使いたくはない。
「なあ、いいじゃんかよ!」
「うっさーーーい!」
 いい加減イライラしてきた頃――、突然、男達が後ろに吹っ飛んだ。
 何っ!?と後ろを振り向くと――。
 あら、保護者。
「スネーク、何でいるの?」
「何でとは酷いな、オタコンが、<が遅い!>ってやきもきしてるからな、迎えだ、迎え」
「…ごめん、アイス買いに行ってたから、遅くなっちゃったんだ」
 それだけじゃないんだけど、と、後ろを見ながら言う。
 ………ダウン1名。
 もう1人が立ち上がり、スネークに向かってくる。
「おいテメェ!何する――っぶ!!」
 スネークの表情が、潜入時のそれになるや否や、の持っていたアイスをパッと奪い取り、男の顔にべちゃーっとくっつける。
「ああああーーーーー!!!私のアイスーーーーー!!」
「行くぞ」
 叫び声を上げてショックを受けているの腕を掴み、無理やり引っ張っていく。
 男は怒り心頭しながらも、スネークの目線に射殺され、その場に佇んでいた。

「ちょっと、オタコン聞いてよーーーーー!!!」
「どうっ…わ!!」
 部屋に入ってくるなり、いきなり突っ込んできたを抱きとめきれず、椅子ごとガタタンと後ろへ倒れるオタコン。
 ちゃっかりと、買ってきた物は、ソファ前の机に放ってあったりする。
 それはともかく、オタコンは床に頭を少々打ちつけ、痛そうな表情。
 は気にせず彼の上に馬乗りになり、胸倉にすりついてわーっと泣き出す。
「スネークってば、スネークってば、私がすっっっっごく大好きなアイス(しかもダブル)を、ヘンなナンパ男の顔面に投げつけたんだよ!!」
「あ、アイス……そっか、それは…大変だったね」
「大変なんてモンじゃないーーーー!!」
 うわーん!と泣き出すの頭を、よしよしと撫でる。
 そういえば、買い物に出た彼女を追っていったスネークが居ないなぁ…。
、スネークに今度アイスおごってもらうって事でさ、ね、落ち着いて…」
「むぅ〜」
 ぷーっと頬を膨らませるは、年齢不相応ではあるが、とても愛らしい。
 オタコンはその頬に触れようとして―――手が空中をさまよった。
 スネークが、馬乗りになっていたの脇下に手を突っ込み、持ち上げたからからだ。
「お帰り、スネーク。言っとくけど、のほうが抱きついてきたんだからね」
「………ふん」
「あ、そうだ。昨日やってもらったファイルなんだけど、ちょっと修正箇所見つけちゃったから、直してくれるかい?」
「はぁーい。…そういう事でスネーク、下ろしてくれる?」
 持ち上げられたままの状態では、作業も出来ないと訴える。
 だが、スネークはそのままの状態で必要なファイルとペンを持たせると、部屋にあるソファに歩いていく。
 どっかと座り、膝の間に座らせる。
 ちょこんと座っているを見て、ぷーっと笑ってしまうオタコンを彼女が睨む。
 こっちは、笑い事ではないというのに。
「ここで仕事しろ」
「…あ、あのーう……これは…」
「………」
 無言。
 こうなると、下手に逆らっても――どうにもならないだろう。
 力でスネークに勝てる訳がないのだし。
 仕方なく、はその状態のまま、仕事に取り掛かった。
 真後ろにスネークがいるので、気が散って仕方ないと思いきや、そんな事もなく。
 限りなく集中してしまえば、前後の事が関係なくなるという意味では、とオタコンは凄く似ていた。
 目の前の事に一生懸命になるうのはいい事だが。
 最初、スネークはの仕事振りを見ていたり、新聞や雑誌、情報誌などを見ていたりしたのだが……。
 ――なんとなく、暇になってきた。
 いや、構ってもらえなくて、らしくなくいじけているのか。
 そうなると、焦点は――彼女に向かう訳で。
 そっと、後ろから彼女の体を抱きしめる。

「……スネーク、仕事できないんだけど」
 不機嫌そうなの声に、一度は手を引っ込める。
「そりゃ失礼」
 ……だが、それしきの事でおめおめと引き下がる男でもなく。
 スネークは両手を、彼女のお腹の辺りで組む。
「……スネーク!」
「我侭だな、これ位はいいだろう」
 どっちが我侭なのよ――という言葉は、スネークの行動で呑まれてしまった。
 の体を自分のほうに引き寄せるようにして、抱きしめる。
 耳元に、口唇を寄せ――口唇を落とした。
「きゃぅ!」
 ビクッと体が震える。
 いきなり何をするんだと文句を言おうとして――やめる。
 このままの状態では、振り向いたりしたら彼の思う壺だ。
 前にもこんな感じで――振り向いて……
 キス、された覚えがあったから警戒するのも当たり前だろう。
「スネーク何よぅっ」
「ちょっとした罰だ。勝手にナンパされたからな」
「それは不可抗力っ……ん…!」
 文句もなんのその。
 昼間から酒でも入ってるんじゃないかと思えるほど、今日のスネークは大胆でおかしい。
 ただ単に、が気づいていないだけなのだが。
 スネークの、<独占欲>に。
 彼の理性リミッター?が外れる状況…が、自分以外の男に絡まれた時。
 それを認識すれば、多少こういう事態は逃れられるのだが……。
 自分の感情に素直になれない2人なだけに、ちょっとそれは無理があるかもしれない。
 オタコンに言わせれば、それだけラブラブしてれば、感情出してないとは言わないとも思うのだが。
 自分の背後で繰りひろげられているラヴラヴも、割合高い頻度で行われている為に慣れてしまい、気にしない事が一番だと思うことにしているので、何も言わない。
 にしてみると、助け舟を出して欲しい所なのだが。
「やっ……ちょ……」
 スネークの手が、の腿の内側を撫でる。
 更に文句を言おうと口を開いた瞬間、口の中に指を突っ込まれ、舌を指でいじられる。
「んぅ〜!!」
 暴れるを抑えながらも、器用にいたずらを続ける。
 なんだか、変な気分になってきた自分を叱咤し、何とか腕から逃れようと苦戦するも…もがくだけ無駄なようだ。
 力が入らない。
「や、オタコ……助けっ…」
 思わず、オタコンに助けを求める。
 それがまたスネークの癪に障ったのか、彼女を後ろに無理矢理向かせ、その口唇を奪う。
 ……本格的にやばくなってきたか。
 オタコンは深くため息をつくと、通信回線を開いて、とある人物を呼ぶ。
 自分では――止められそうもないので。

 その人物は、同じ家にいるだけに直ぐにダダダと勢いよく走ってきた。
 バンッとドアを開け、笑顔で物凄いオーラを出しているその人物は―――。
「め、メイ・リン……」
 スネークが驚いたまなざしを向ける。
 は、潤みきった瞳で彼女を見た。
 メイ・リンは心配しないで?と言うように微笑む。
「うふふ、スネーク……」
「メイ・リンっ、これは……」
 泡を食うスネークに、メイ・リンは優しく微笑みかけ―――そして。
「セクハラ防止アターーーーーーック!!!」

スカーーーーーン!

 スネークの顔面に、ごっついことわざ辞典が当たる。
 は一瞬の隙をついて、辞典を避けた。
「うっ…メイ・リン……」
 顔を押さえながらよろめくスネーク。
 オタコンも、一緒になって痛そうに顔を押さえた。
「スネーク、今度に手を出したら、メリルにチクるわよ!」
「ちょーっ……ま、待て!」
「……何で、慌てるのよ、スネーク」
 が怒って、ぷいっと横を向く。
 その様子に、スネークがため息をついた。
 ふくれっ面をしているを抱きしめて、口唇を彼女のそれに重ねる。
「……スネーク!」
「…許せ」
 怒りながらも、顔を真っ赤にして、彼の胸に顔をうずめる。
 ……キライじゃないし、惚れた弱みという奴で。
 それを見たメイ・リンが、更にセクハラ防止アタックを敢行。
 今度はを抱えたまま避けるスネークだったが――オタコンが背後で辞典をキャッチ。

「協力攻撃クラーーーーシュ!」
 なんつって。

 その攻撃は、スネークの後頭部にゴチンと当たった。

「大丈夫??」
「…くそ、覚えてろよオタコン…」
 よしよし、と後頭部を撫でてやる
 ちょっと考え、彼の頬に口付けを落とした。
「っ!?」
「……なんか、可哀想だし、ちょっとだけ」
 頬を赤らめ、スネークに抱きつく。
 彼も、迷わずの体を抱きしめた。

 その後、メイ・リンにより、人前でのイチャつき禁止令が出されたため、スネークと(主にスネーク)が、人前で危険な?行動をする事は無くなった。
 だが、彼らのどちらかの部屋の中では、今まで以上の事が成されている……らしい。



投票結果1位の、スネーク(甘いの)でした。
……甘いですかね、むしろ微エロくさくてスミマセン!!本編とは一応関っているようで、関わってないです、はい。
投票してくださった方々、どうもありがとうございました!


2002・8・29

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