恐怖の試験



「どうか、俺をメンバーに入れてくれ!」
 頼むというよりは、まるで怒鳴っているような、そんな大声で嘆願しているのは、プラント事件で活躍した、コードネーム<雷電>、本名ジャック。
「ダメだったらダメだ」
 ソファに座りながら、そう断言しているのは、フィランソロピーメンバーにして、伝説の傭兵たる、ソリッド・スネーク。
 その横にいる日本人は、二人の様子を苦笑いしながら見ていた。

 雷電――ジャックは、つい最近になってフィランソロピーに入りたいと、毎日のようにスネーク以下二人の家(一応基地なのだが)に、頼みに来るようになった。
 理由は、至極簡単。
 プラントでの経験で、自分のあり方を見つめなおし、その結果、戦う事を選んだ――そいういう事。
 ローズとはきっちりはっきり別れているという事を、追記しておく。

 何度スネークに追い返されても、ジャックは諦めなかった。
 諦められない理由があり、人がいたから。
 その理由の一つであるが、頑として意見を曲げないスネークに、少し咎めるような言葉を吐く。
「スネーク、こんなに一生懸命なんだから、少しは考えてあげたって、いいんじゃないの?」
 何だかんだと、私だってメンバーになっちゃってたりするみたいだし。
 そう告げると、彼はうーんと唸り出した。

 あぁ…なんて優しいんだ!
 さすが俺のMy天使!!(言葉がかぶってます)

 勢いあまってに抱きつこうとしたジャックは、オタコンとメイ・リンの分厚い本クラッシュを喰らって、あっけなく倒れた。
 凄いスピードの攻撃に、ジャックは避ける間もなかった。
 フィランソロピーは精鋭ぞろいだ…!!

 ジャックの心の声を知ってか知らずか、スネークは渋い表情のまま。
 だが、しつこく頼んでくるジャックもさることながら、の熱心な視線には、これ以上耐えられそうもない。
 彼はソファから立ち上がると、オタコンを側に呼んだ。
「よし、いいか。これから試験を行う」
「試験?」
 オタコンとが顔を見合わせる。
 ……フィランソロピー、しかも個人営業状態のウチに、試験??
 ハッキリ言っておくが、はそんなもの受けた事はない。
 他の人物――メイ・リンやオタコン、メリルなんかは、言うまでもなく受ける必要もないからなのだが、ならば、ジャックだって受ける必要もなさそうなのに。
 ………というより、スネークの独断と偏見だろう、この試験は…。
 結局、振り落とす為のものだと考えていい。
 ジャックは頭の隅でそうと認識しながらも、どんな無茶難題でもクリアしてやると、
 一人息巻いていた。

 どんな試験なんだ…?
 銃撃の精確さ?
 それとも軍事的知識――

 スネークは考え込んでいる様子のジャックに、ニヤリと不敵な笑みをこぼしながら、静かに試験課題を言った。
「オタコンの部屋へ行って、レクチャーを受けるんだ。それに耐え切れれば、入れてやる」
 そんな簡単な事でいいのか?
「勿論やる!!」
 スネークがオタコンにこそこそと話をするのを横目に、は実に嫌な予感を身に抱いていた。
 彼の話を聞き終えると、オタコンの顔が、妙にぱぁぁっと明るくなったからだ。
 輝いている。
 ……は思わず、己の考えに「うっ」と詰まった。
 まさか――まさか本当に………考え通りの事を??

「じゃあ、雷…じゃなくてジャック、ついてきてくれ」
 うきうきした様子で、オタコンはジャックを私室へと連れて行った。
 間違ってはいけない。
 いつも仕事で使っている、地下のメイン・モニタルームではない。


 私室だ。


 は出て行った二人を見送ると、不安そうにスネークに声をかけた。
「ね、ねえスネーク…もしかして、その…」
「ん? ああ。奴に、フィギュアの全てを叩き込むように言った」
 仕事と関係ないじゃん!!
 はそう心の中で叫び、ジャックに襲い掛かるであろう、これからの苦労を思って、一人苦笑いしていた。


 オタコン部屋では、壮絶な戦い?が展開されていた。
 ジャックはオタコンの部屋にあるソファに座らされ、目の前やら棚やらにあるモノの説明を、延々と受けている。
 ウンザリしているジャックを知ってか知らずか、オタコンの方は目を輝かせて説明にあたっていた。
「でね、ここのパーツはまさに美術品ほどの価値があると思うんだ! まるで本当に歩いているみたいだろう? これはね、画期的なことなんだよ! 聞いてるかい、雷電!!」
「き、聞いてる…」
 本当は、耳をふさぎたいが。
「ここに関節があって、それがあるからこんなダイナミックな動きを――」
「………」
 オタコンの私室。
 それは、フィギュア倉庫といっても過言ではない。
 しかも、一体一体のレクチャーつき。
 終わるのに何時間かかるやら。
 スネークやも耐え切れない、その巣窟と解説に、ジャックはただ一人で立ち向かわなければならなかった――。

 こ、これは何て凄まじい試練なんだ!

 数時間後。
 出てきたジャックは、ヘロヘロになっていた。
 常人なら、逃げ出したくなるであろうその空気に耐え、逃げ出さなかったという根性を認め、彼は晴れてフィランソロピーの一員となった。
 オタコンはまだ話し足りないのか、人形を片手に、執拗にジャックに話しかけていたという。

「…フィランソロピーにいる人って、変な人多いよね」
「個性と言えば、まだいいんじゃない?」
 メイ・リンとはコーヒーを飲みながら、追い掛け回されているジャックを、哀れな目で見つめていた。





……キリリクの、雷電ギャグ夢…ですが、どこの辺がギャグ…;;
どうも、真正ギャグは苦手のようです。思いつかずにヒーコラ。
と、ともあれ、遅くなってしまって申し訳ありませんでした!
蒼夜さま、リク、どうもありがとうございました!

2002・10・25

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