ドッグタグ 1



 フィランソロピー本部。
 ソファでコーヒーを飲んでいたスネークは、
「スネーク見て!」
 声がかかった方向に首を向けた。
、どうした」
「オタコンにタグ作ってもらったの!」
 タグ。つまり、ドッグタグ。
 氏名、生年月日、性別、血液型。
 また、所属軍、階級、認識番号、宗教などが打刻される認識票。
 シルバーのそれを首から下げているは、とてもにこやかだ。
 そんなに嬉しいものだろうかとスネークは思う。
「女ってのは、宝石だの……なんというか、もっと綺麗な物の方が喜ぶものじゃないのか」
「そうなのかな?」
 は首を傾げる。自分はこれで嬉しいからいいのだと、軽く言い放つ彼女。
 そういえば、彼女もあまり女らしいとは言えない性格だった。
 話を聞いていたオタコンが笑う。
「宝石なんかより、こっちの方がずっといいよ。なんたって、発信機と盗聴器がついてるんだからね!」
 ぴしり。
 その場の空気が固まる。
 ただひとり、オタコンだけがその空気に気づかない。
「だからどこにいても、の事はお見通しさ!」
 は眉根を寄せた。
「……なんか不愉快」
 スネークが怒って
「外せ!」
 言った。

日記掲載 2008/11/23






ドッグタグ 2


「今度こそ普通のタグゲット!」
 は嬉しそうに銀色のタグを手にしている。
「今度のは、妙な機能はついていないんだろうな」
「大丈夫だと思う。もしも変なことしたら、パソコンご臨終させてやるって脅しておいたから」
「……そりゃ、任務の時に困るんでやめてくれ」
 冗談だよと笑いながら、早速、と手にしたタグを身に着けようとする
 スネークはその銀のものをさっと奪い取った。
「ちょ、スネーク!?」
「お前はこっちだ」
 から奪った物の代わりに、スネークは自分が付けていたタグを放って渡した。
 彼女はそれを両手で受け取り、目をぱちぱち瞬く。
「え? え? でも、これ……スネークの」
「気にするな。俺はお前のを持つ。お前は俺のを持て」
 まだ少し戸惑っていたようだが、こくんと頷くと、大事そうにタグを身に着けた。

 2人の様子をこっそり見ていたオタコンは、
「……何気なく甘ったるい空気だよね。自覚があるのかないのか」
 呟き、ずぞぞと音を立ててコーヒーを飲んだ。


日記掲載 2008/11/24