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主人公の名前→
2主の名前→
坊ちゃんの名前→
2本拠地の名前→
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夢のあとに
「うつっても知らないよ」
「あら、じゃあ私がそばにいない方が良い?」
城の一室でそんな会話がされている。
外はからからに晴れているというのにこの部屋の雰囲気は暗い。
「でも珍しいなぁ、ルックが風邪ひいちゃうなんて」
「、何でそんなに嬉しそうなの?」
熱にほてった顔でルックがを睨んだ。
そう、ルックは今病人、風邪を引いている。
「だっていっつもルック他の人に対して偉そうにしてるんだもん。
そんなルックが風邪ひいたら 面白いって思うの、私だけじゃないと思うわ」
「って性格悪いよね…」
ルックが力無く言う。
は、ルックほどじゃないわ、と笑って言うと洗面器の水を取り替えに
部屋を出ていってしまった。
目を閉じてを見送ったルックはぽつりと言う。
「得なことは得なんだけどね」
がつきっきりで看病してくれるから、という単純な考えを認めるのは嫌だったが
否定のしようもない。
風邪だと分かった時、看病はにしてくれ、とホウアンに頼むのが精一杯だった。
自分は達のようにに対してはっきりと自分の意志を伝えることを得意としない。
どうしようもなく不器用で。
そう思うたびに何とかしなくては、と考えるのだが、やはり上手くいかない。
しかし、浮いては沈む意識の中でこんなにものことを考えると
上手く自分の気持ちを伝える方法の一つや二つ思いつきそうなモノなのだが。
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「ルック…?寝ちゃったかな…?」
静かに潜められた声がルックの耳に届いた。
の手のひらがルックの額に触れる。
水を触ってきたのだろうか、冷たくて気持ちいい。
ルックは無意識にの手のひらに額をすりつけた。
「あ、やっぱりまだ熱引かないかぁ…」
困ったようにが言った。
の離れようとした手をルックは目を閉じたまま掴んだ。
「…おーい、ルックー??」
はルックの意識の有無を確認するように呼びかけてくる。
しばらく手を掴んでいると冷たさが引いていったのか、ルック
は掴んでいた手を離した。
はふう、と一息つくと、ごそごそと持ってきた籠から薬草を取り出した。
洗面器の水を換えに行くついでに薬草を買ってきたのだ。
「よし、これを…」
とか何とか言いながら薬草を手で揉み潰し、水に溶かしていく。
部屋には異臭とも言える臭いが広がったがそんなことを気にし
ている暇はない。
は作業の合間にルックを見やった。
呼吸はどんどん速くなり、額から流れた汗が髪を伝って落ちていく。
「ちょっと待ってね…」
と一声かけては最後の一束を水に溶かすと、混ぜ棒でかき混ぜた。
「さ、ルック、起きて…よいしょ…っと」
はルックの背中に腕を差し込み、肩を抱いて上半身を何とか起こさせた。
「うわ、背中スゴい汗」
言いながらはルックの口に薬草が溶かしてあるコップを近づけた。
しかし、意識朦朧としながらも異臭が鼻についたのか苦そうな顔をして、
飲めと差し出されたコップを片手で押しやった。
「だめだよルック、飲まなきゃ」
はコップを再び近づけるが今度は顔を背ける。
「うーん、確かに薬嫌なのは分かるけど…ほら、飲んで」
もう一度コップを近づける。
すると右に背けられていたルックの顔は今度は左に背けられる。
「ちょっ…!ルック!」
があわてるのも無理はない。左と言えばの体がある方向だったからだ。
これではコップを近づけることも出来ない。
「もうーっ」
はため息をついた。
ルックの体を支えていた右腕も限界に達し、ゆっくりとルックをベッドに寝かせた。
相変わらず苦しそうに喘いでいるルックを困り果てて見下ろしたは
しょうがない、と呟いて
コップの中の薬草ジュース(?)を口に含むと、勿論飲み込まずに
ルックの口へと注いでやった。
ルックがゴクンと飲み込んだのを確認すると
はルックの口から自分のそれを離すと、
しばらく顔を近づけた状態で様子をうかがった。
すると、ルックの呼吸は静かになり、落ち着いてきた。
「ルック…?」
は心配そうに言った。
「…何、今のひどい味は」
目を閉じたままのルックが言った。
「ひどい味とは何よぉ」
体勢を崩さずにがルックの顔の真ん前で言った。
声のあまりの近さにルックが目を開く。
「うわ!?!」
ルックが顔を真っ赤にして一言。
「?やっぱり熱引いてない?」
「いいいいいや、そうじゃなくて…」
「???」
「とりあえず、僕の上からどいてくれる?」
うわずった声でに言う。
「あ、ハイ」
はあっさりと体を離し、ベッド脇にあった椅子にちょこんと座った。
「だいぶ楽になったみたいだね」
そう言うとはルックの額に乗せてあった
タオルともう一枚のタオルを洗面器につけて軽くほぐすとぎゅうっと絞った。
「体、拭くから脱いで」
は何でもないように言うがルックは当然拒否する。
「いい!いい!自分でやる!」
はあきれ顔だ。
「まあでも、病み上がりだし、もう少し安静にしてなよね」
言うとはぽふっと再び元の通りタオルを額に乗せる。
もう一枚は洗面器の縁にかけておいた。
「、口の端に何つけてんの」
ルックが不思議そうにの顔をのぞき込んだ。
「え?あぁ、これかな?」
はさっきのコップをルックに見せた。
緑色の液体がまだ少し残っているそれが何であるかはルックにも分かった。
「それ…今の薬?」
臭いからしてもそうとしか考えられない。
「そうだよ」
「ちょっと待て。飲んだのは僕だろ?何で君の口にそれがついてるんだよ」
ルックはほんの少しの確信を抱きながらもおそるおそるに問うた。
「あのねぇ、ルック。覚えてないようだけどあなたは
私が何度のませようとしてもコップ突っぱねたり顔背けたりして拒んだのよ?
だから私が口移ししてあげたんじゃない!」
あっさりはっきり言ってのけた。
それに対してあっさともはっきりともしないのがルックの表情だった。
「く、くちうつ…??!!」
次第に顔が真っ赤になっていき、自分の口をパンと押さえた。
「ほら、喋るからまた熱が上がってきたんでしょ。もう少し寝てなよ」
ぺちっとルックの頭を弾くと椅子から立ち上がり、
万が一のためにもう少し薬草買い足してくると言い残して部屋から出ていってしまった。
「なんで…この状況で喋ったから熱が上がったって思えるんだ……」
両手で顔を覆ってルックは呟いた。
そしてルックの意識は宙に浮き、瞼が重くなっていった。
この眠気は薬草の副作用かな…などとぼんやり考えながらルックは眠りに落ちていった。
体中が汗で気持ち悪かったのも忘れて。
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日がとっぷりと沈み、綺麗な満月が顔を覗かせた。
城内は静まり、明かりが点いているのは廊下の灯火と少数の部屋。
シュウの部屋やレオナの酒場。大半の部屋からは明かりが消え、
寝静まっているのが分かる。
そんな静かな城内を歩き回る一人の人間の姿があった。
寝ている人を起こさないようにひたひたと歩くその人はだった。
の足はある一室の前で止まり、極力小さな音を立てて
その部屋のドアの取っ手を引いた。
風邪を引いて寝込んでいる部屋の主、ルックはもぞもぞと体を動かして寝返りをうった。
サイドテーブルのランプのみが、その部屋の明かり。
しかし目をやる場所がベッドだけだったので、明かりはそれで充分だった。
はしばらくルックの様子を伺っていたが、すっと立ち上がると空気の入れ換えに、
とベッドの横の窓を開けた。
薄絹のカーテンが風に遊ばれてをふわりと抱いた。
の髪が靡いてわずかに月の光が反射する。
が目を閉じて優しい夜風に心を奪われていたその時。
「……うっ…う」
ベッドの上からかすかに漏れた声をは聞き逃さなかった。
振り向いてベッドで寝ているルックの方を見やる。
「…ルック?」
「…。」
「寝言かな…」
そう言うとは再び窓の外に目をやった。
静まりかえった城内。戦いの影が今だけは見あたらない。
月の光が眩しい位。この光の元でなら本だって読めそうだ。
がもう一度目を閉じた瞬間。
「…!いやだ!!」
苦しそうな声がの耳についた。
「ルック?ルック?!」
窓から身を離し、ベッドに向き直るが月の光が強かったせいで目が眩む。
少しの距離だが手探りでルックの寝ている位置を探す。
すると、不意に大きな圧迫感に襲われた。
両手は自由が利くが、胴の部分は動かない。
しばらくしてルックに抱きつかれていることを理解する。
「ルック?どうしたの?ルック?」
そう言いながら何とか手を伸ばしてランプの光を大きくする。
今までベッドしか照らさなかった光は部屋全体を明るく照らした。
月の光はその明るさに掻き消されてしまった。
「どうしたの?怖い夢でも見たの?」
は自分の胸の辺りにあるルックの頭を優しく撫でながら言った。
普段のルックなら、子供扱いするな、とか文句を言うだろうに。
今のルックは違った。 ルックはゆっくりの体にまわして
いた腕を解くと、ベッドにぐったりと横たわった。
「…夢を見た」
目を閉じてルックが静かに言う。注意しなければ聞き取れない位の小さな声。
「どんな?悪い夢なら話しちゃいなよ」
は優しく続きを促した。
「…君と離れる夢だ。いつかは分からない…はっきりとも覚えてない…
ずっと先の未来かもしれないでも君と離れてしまうことだけははっきり覚えてる。
君と離れて僕は何処か知らない場所で静かに眠りにつく夢だ」
次第にはっきり言葉を紡ぎ出すルック。
その様子をは、うんうんと黙って聞いていた。
「正夢だったら…」
ルックはそこで言葉を止めた。というよりそれ以上言えなかったのだ。
涙がルックの頬を伝い、嗚咽で喋ることが出来なかったからだ。
はルックを自分から抱き返した。
呪文のようにゆっくり、「大丈夫大丈夫…」と言いながら。
「…」
ルックは小さな声で自分を優しく包んでくれている腕の持ち主を呼んだ。
「…君が好きだよ。大好きだ。離れたくない」
途切れそうになる言葉を無理矢理繋いで、本当に小さな声で言った。
は抱きしめる力を強くした。
「大丈夫。ねぇ、離れそうになったらルックは気づいて私の元まで
空間転移で飛んでくるんでしょ?」
「気づかないかもしれない」
ルックはに体を預けたまま呟いた。
「じゃあ私が気づくよ。ビッキーちゃんに頼んで
ルックのそばにてレポートさせてもらうから」
「ビッキーのテレポート当てにしちゃダメだよ」
「あ、ビッキーちゃんに言うよ?」
ふふと笑ってが言うとルックは自分の腕をの腕にまわして
それまで開いていた目を閉じた。
まだ目元に残っていた涙が二筋流れた。
「大丈夫よ。絶対に離れたりしない」
その声の調子にルックは確信を抱く。
何故かは分からない。いつものの声だったし、女性らしい、
優しく透き通った声、いつもと何ら変わりない声。
それでもルックは確信した。
あぁ、本当に離れることはないのだ、と。
「みんな、みんな一緒よ。いつまでも」
は言うと、ルックから離れてニッコリと笑った。
「ふふふ、ルックが泣いた」
意地悪っぽい笑み。
「なんだよ、良いだろ別に」
「はいはい、いいわよ、どんどん泣いてくださいませ」
は自分の服の袖でルックの顔を拭った。
「子供扱いしないでくれる?」
むっとして言い返す様子を見ていつものルックに戻った、とは更に笑う。
「もう、だいぶ楽になったから、出ていってくれる?ゆっくり寝たいんだけど」
これ以上何か言われてはばつが悪い、とばかりに
ルックはをドアの方向へ押しやった。
「分かった分かった、おやすみルック」
はそう言うと静かにドアを閉めた。
再び部屋に一人になったルックは、ちょっと勿体ないけど、などと言いつつ、
が開けてくれた窓から入る風を心地よいと思い、
今回何度目かになる眠りの入り口へと立った。
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「おはよー、調子はどう??」
昨夜の見事な月夜が予言していたように素晴らしい晴天が広が っている。
城内が騒がしくなり始める時間、ルックの部屋のドアをノックもぜすに開いたのはナナミ。
あとから入ってきたのは、そして城主の、更に。
「なんだよ、病み上がりの僕にこの面々で見舞いに来るのは失礼ってモンじゃないの?」
「そぉいう口が利けるならもう充分元気だね」
言ったのは。
「俺なんかせっかくトランからはるばる来てやったんだ、失礼なのはルックだろ」
も一言。
「ふん、どうせが目的でここに来てるんだろ?案外も暇人だよね」
ルックが上半身を起こしてあからさまに嫌味な顔で言う。
「ルック、昨日の夜…」
が口を挟むとルックはあたふたとの口を押さえる。
「「ルック、から手を離せ」」
Wリーダーの声が重なる。
「言うなよ、」
手を離しながら今ばかりは冷ややかにに言葉を投げる。
「はぁい」
はくすくすと笑って返事する。
「??何のこと?昨日何かあったの?」
ナナミがダイレクトにWリーダーの言いたかったことを口にする。
「何でもない、それより君たちは今日は別の作戦があるんだろ。行って来なよ」
ルックはそう言うと昨夜にしたみたいに3人をグイグイとドアに押しやる。
しぶしぶ部屋を出ていった3人。
不必要と判断した洗面器やらタオルやらを片づけるために部屋に残っている。
「、ぜっっっっっったいに言わないでくれ」
ルックは細々と動き回るに言う。
「何を?」
はにやにやと笑いながらタオルを洗ってきつく絞っている。
その様子に勘弁してくれ、とルックは項垂れるのであった。
は退室時、大丈夫だからね、と言った。
そして、ルックが自分の体に妙に汗の跡もなく
スッキリしている理由に謎を抱くのはもう少し後。。。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
お疲れさまでした。呼んでいただいてありがとうございます。
ルックが見た夢は幻水3の伏線なのかどうなのか自分でもよく
分からないんですが、そんな不安を吹き飛ばすようで何処か優
しい言葉を主人公に言わせてみたかったのでした;;
ご期待に添えていたでしょうか。かなり不安なのですが、とり
あえず、私としては楽しんで書かせていただきました。
本当にありがとうございました。
それでは乱文乱筆大変失礼いたしました。
宜しければこれからも御相手下さいませ。
※
相田命さまのサイトでキリバンゲットして頂いた、ルック夢です!
甘くて素敵ーーー!!口移しでうろたえるルックが更に素敵ですっ!
黒い(?)Wリーダーもとっても楽しく、いい感じです。
泣くルックっていうのも新鮮でよかったです、文が上手いので感情移入できてしまう。
相田さま、ありがとうございました〜!
今後ともどうぞよろしくお願いしますです。
2002・8・2
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