水辺の約束.




「なあ、?一つ聞きたいことがあるがいいか?」
「へ?あ、はい」
妖精に呼ばれ、フェインの元へやって来たに、問い掛けてきたフェイン。
「天使に休みはあるのか?」
「は?おやすみ・・・ですか?」
ん〜と顎に手をあてて、ふと空を見上げて思案する
フェインはその横から言葉をつづける。
「ああ、お前のように地上と天界を行き来しているとなると、休みなどないのではないかとおもってな」
「あ〜確かに休みという休みはないですね〜」
視線を空からフェインにうつして、はそう答える。
その隣りでフェインは小難しそうな表情を浮かべ、言葉を紡ぐ。
「大変なんだな」
「いいえ。大して疲れません。それよりフェインや他の勇者達の方が数十倍も疲れているはずです」
「なぜだ?」
そんなフェインの言葉に対してもいつもと変わらない微笑みを宿し、
少し顔を俯き加減にして胸の前で手をそっと組み更に続ける。
「だって、この地にはびこるモンスターたちと戦っているからです・・・私なんて、直接戦うことなどできないし、
傍にいてサポートしかできないですから」
最後にふっと表情をやわらげた。
フェインはそんなを横目に、自分がもっている剣に静かに手を触れながら少し考えた。
「しかし、君はひとりで自分を含めた勇者をすべて管理しているなら、たとえ戦わずとも疲れるだろう?」
「フェイン・・・ありがとうございます。そんなふうに思っていただいてるだけで嬉しいです。
でも、本当に大丈夫ですから」
「ふむ・・・」
「フェイン?」
は、浮かない表情のままのフェインの表情をそっとのぞきこんだ。
なにかを思案していたフェインが、そっと口をひらく。
「一日、休みはもらえないか?」
「え?」
「たまには完全に勇者や仕事から開放される日があっても悪くはないだろう?」
「で、でも・・・」
そこでそばにいたローザが言葉を続ける。
「天使さまは、少し働き過ぎなところがあります。ここは休んではいかがでしょう?
過ぎた口をついてもうしわけありませんが」
「ローザ・・」
「一日ぐらいなら、大丈夫ですから、天使さま」
ローザはできるかぎりの微笑みをにむけた。
「・・・ありがとう」
「大天使様には私から伝えておきますので、ごゆっくりお休み下さい、天使さま」
「ローザ・・フェイン・・・ありがとう」
「それでは天使さま、私はこれで。すぐにラファエル様に御報告いたしますので」
ローザは一礼すると、天界へともどる。
空へと飛び去ったローザをぼんやりとみつめていたにフェインがそっと問い掛ける。
・・・今日はゆっくり休んでくれといいたいが、実は、君を連れていきたいところがあるんだ・・どうだ?」
「はい」

フェインは森の中にある湖へとを連れてきた。
「ここは・・」
「ああ、前に俺達が閉じ込められそうになったところさ」
「ここって、こんなに綺麗でしたっけ?」
「あの時はそんな余裕なかったからな」
「そうですね」

しばし水の流れる音に耳を傾ける二人。

「綺麗な音がします。気持ちが洗われますね」
「そうだな・・とそこに立っていないで座ったらどうだ?
「あ、はい」
さきに座っていたフェインの隣に、もすとんと腰を下ろした。
するとフェインはごろんと横になった。
「たまにはこうしてのんびり羽根を延ばすこともいいだろう?」
「ええ、フェインとローザには感謝します」

しばらくが風を感じていると、横からすーすーと優しい寝息が聞こえてきた。
「あら?フェイン・・・眠ってしまったのですね・・・本当にありがとう、フェイン」
はそっと呟くと静かに立ち上がり、水辺へと歩きだした。
そして湖の端に座り、少しだけ足を水につけた。
「気持ちいい・・・」
そして少し足を上下に動かしてみる。
ぱしゃぱしゃと軽快な音と、水しぶきがあがる。
「うふふ」
次に体を起こし、手で水をすくう。
手のすき間から滴り落ちる水には見とれた。
「綺麗・・・」
手ですくった水をそのまま光にかざしてみたり。
「・・・楽しいか?
「きゃっ!」
突然声をかけられたは驚き、バランスを崩し湖へと落ちた
!」
フェインも慌てて湖へ駆け出した。
「大丈夫か?
「あ、フェイン」
ずぶぬれになったを抱きかかえ、木陰へ戻るフェイン。
「すまなかったな・・突然声をかけたりして」
「いいえ、驚いちゃって・・・あっ、て思ったら、落ちました」
くすくすと笑う
「どうした?笑って」
「貴重な体験ができたなって思って」
水がしたたりながらも、相変わらずの微笑みを絶やさないをみて、フェインも表情を和らげる。
「・・・まったく、懲りない天使だ。あ、それより服を乾かさないと・・・」
「そうですね」
「俺はここで寝てればいいが、君はどうする?」
「う〜ん・・・私この木の上の方で風にあたって乾かします」
「ああ、そうするといい」
フェインは木陰にもたれ、はふわっと木の上にあがり、お互い服を乾かすことに。
「木の上からの風景も綺麗です〜。・・・あ、乾いたかな?」
ぶつぶつ独り言をいっていたは、なにげなくフェインが気になり、すうっと音をたてずに、
木陰で寝ているフェインの元へと降りてみる。
するとフェインは丁度いい気温のせいか、気持ちよさそうに眠りについていた。
はそっとフェインの傍に座り込む。
「今日は本当にありがとうございました、フェイン」
と呟いて、フェインの顔をのぞきこんだその瞬間、不意にフェインが瞳を開いた。
「っ!」
「ふふふ、お目覚めですか?フェイン」
「あ、ああ・・」
は突然の出来事に驚いたフェインの表情をみて、くすくすと微笑んだ。
フェインははっとした表情で微笑んでいるをじっと見つめた。
「フェイン・・・どうかしました?私・・・」
「ふふ、いや別に・・・」
今度はフェインが笑いだした。
「え?なにがおかしいんですか?」
「気にしなくていいさ。それよりゆっくり休めたか?」
「え?あ・・・はい。おかげさまでお休みできました」
「ならいいんだ。無理につれてきたのではないかと、少し心配していたのでな」
「そ、そんなことないです!私フェインに誘われて・・・う」
「ん?うがどうした?」
優しくに微笑みかけるフェイン。
ちょっと言葉をつまらせながらも、答える
「う・・・うん、休めたな〜って」
「ふふ」
「そろそろ戻らないと・・・あまり長居してても妖精や大天使様に御迷惑かけちゃうから」
「ああ、そうだな。これからもまたよろしく頼む、
「あ、はい。私の方こそいたらない部分がたくさんありますけど、宜しくお願いします。フェイン」
深々と頭をさげる
だがが頭をあげると、フェインは何故か後ろを向いていた。
「・・・」
「?」
はフェインの方をのぞき込もうとしたが、その時フェインが口を開いた。
・・・この世界を無事に守ることが出来たら・・・」
「はい?」
「天界へ戻る前に、俺に」
「?」
「先程の言葉の【本当の】続きを教えてくれ」
「え?」
「またな」
フェインはそれだけ言うと、すたすたと森を後にした。
「・・・フェイン」

はその場に立ち尽くし、フェインの後ろ姿を見続けた。
そして完全にその場からフェインの気が消えたのを確認して、一言告げた。

「その時までに・・・大切にしまっておきます」


fin


ちよ様から頂きました!
ありがとうございます〜。
早く全部終わって、フェインに言葉の続きを
聞かせて上げて下さい〜v
久々のフェバで、暖かい気分になりました。

水音

2002・4・2

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