仲直り?



 が再度のログインをすると、丁度一緒になってカイトとバルムンクが出てきた。
 今まで、この二人が顔をあわせて、ケンカ――とはいわないまでも、厳しい言葉が飛び交わなかった事はない。
 バルムンクは、カイトをチートキャラだと信じて疑っていなかったし、そうでなくても、確かに異変の真ん中にいるような状態だったから。
 異変の真っ只中にいる事は間違いなかったし、それについて、カイトは何も反論しなかった。
 勿論、一緒にいる彼女も。
 言い訳――というか言い分はあったのだが、それを言った所で、何の解決にもならない事を、彼らは十分知っていたから。

 なので、反射的に苦笑いを作ってしまったのも、致し方ない事だろう。
 願わくば、モメ事が起きませんように。
 そう願っていただったが――どうも、場違いな心配だったようだ。

「カイト……バルムンク……いつもみたいにならないんだね、っていうか、何か……砕けた?」
 一緒になって、普通に話をしているカイトと、バルムンクを心配してしまうのは、今までが今までだったから。
 しかし、よくよく話を聞いてみると、がログアウトしているうちに、ダンジョンの中で、仲直り(?)したという事らしく。

「そっかぁ、仲直りしたんだ!」
 至極、嬉しそうに微笑むに、バルムンクが苦笑いした。
「……本当に色々、すまなかったな」
「そうだよー? ホント、はらはらしたし、心配もしたんだからね〜」
 あははと笑いながら言う彼女に、バルムンクは手を伸ばし、その金色の髪をくしゃりと撫でた。
 傍目から見ると、まるで恋人同士のような行動を、何より一番不服に思っていたのは、すぐ隣にいるカイトだった。
 バルムンクが彼女を見て心底幸せそうに微笑むのが、不服でたまらない。
 付け加えるなら、彼女が自分以外にあけっぴろげになっているのも気に入らない。
 ……まあ、彼女は誰にでもあけっぴろげなのだが。

 まだ二人の世界に浸っているバルムンクと
 カイトは、ムッとしているのをおくびも出さず、の隣にすっと近づくと、彼女の手を、きゅ、と握った。
 五感がある彼女は、すぐにその温度に気づく。
「カ、カイト? どしたの??」
「……やっぱり、の手、あったかいね」
「そりゃ、まあ」
 今更何を、という感じだが、彼の手を振り払う事はなかった。
 リアルでの彼も知っているし、触れられる事に違和感を持つ相手ではないから。
これが、知らないような人だと、慌てて逃げもするだろうが、カイトは別格。
 友達だし、好き嫌いで判断すれば、間違いなく『好き』の方にバロメーターが振り切れている。
 かといって、恋愛かといわれればそれも微妙なのだが…。

 が、その行動――手を繋ぐ、というのが不服な人物が一人いた。
 ……言わずもがな、バルムンクである。
 じっと繋がれた手を見つつ
「手を離したほうがいいんじゃないか? が困ってる」
 と、不機嫌丸出しの声で言ってくる。
 自身は困った素振りなど、全くこれっぽっちもしていないのだが。
 カイトはその言動に、いつもの様相を崩さず、あっさりと言ってやった。
「あれ? バルムンク、やきもち?」
「ばっ、馬鹿な事を言うな!!」
 思い切り焦っているその姿は、『その通りです』 と言っているようなものだ。
 ……存外、分かりやすい人らしい。
 は心ここにあらず、といった感じで、カイトの手をつかんだまま、ゆらゆらと揺らして遊んでいたりする。
 どうやら、彼女にとっては、カイトとバルムンクの言い争いなど、今までが今までなので、聞き飽きてしまっているらしい。
 完全に右から左状態で、自分の事だと気づいているのだかいないのだか。
 カイトは、『馬鹿を言うな』 というバルムンクの発言に、にっこり微笑み、
「なら、問題ないんじゃないかなぁ」
 と、人のよさそうな声で言った。
「も、問題なら大有りだ」
「?」
 ここに来て、やっとこ二人の話に耳を傾ける
 手を揺らすのをやめて、バルムンクの言葉を待つ。
 その視線を感じながら、彼は言い放った。
 少々、声を震わせながら。


「ふ……風紀に、関わる!!」

「……バルムンク、風紀委員みたいな事言うね…実は風紀委員長?」


 の質問に、力なく 『違う…』 という、バルムンクの姿があったとか。





……バルムンク、風紀委員か、生徒会委員だと思う今日この頃。
別にヒロインは天然ではありません。言い争いが日常茶飯事だったので、慣れた(笑)


2003・5・10

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