異転流転 6



 ついた村は、ひどく閑散としていた。
 というよりも、外を歩いている人が1人としていない。
 閑散というよりは、無人みたいだ。
「ねえ、ここって誰もいないんじゃないの?」
 ブルマが言うけれど、悟空は人の気配がすると言う。
 居留守を使っているのだろうか。
「こんちはー! 誰かいますかー!?」
 ブルマが大声で叫ぶ。
 応答なし。
 悟空が人の気配を感じているなら、確かに誰かがいるのだろうけれど。
 例にが家の扉をノックしてみても、誰も出てこない。
 警戒されているらしい。
「どうしようか?」
「ドア壊しゃいいじゃねえか」
 言うが早いか、バキッと硬い音を立てて扉に大穴を開ける。
 無茶するなあ……不法浸入だよ……。
「開いたぞ」
 更に家の中へと不法侵入すると、
「とぉぉーーー!!」
 雄叫びを上げて男性が攻撃を仕掛けてきた。
 悟空の脳天に斧を振り下ろすが――斧の方が悟空に負けて砕けた。
「いぃっ、いってえ!! なにすんだおめえ!!」
「すっ、すみませんウーロンさま!!」
 ウーロンという名前を出し、男は斧を床に落として土下座を始める。
 許してくださいゴメンなさい、お金や食い物ならいくらでもあげるから、娘は見逃してくれ!
 叫ぶ男性に、悟空もも、勿論ブルマもきょとんとする。
「あ、あの……ウーロンって……?」
 が呟くと、男性はその場にいる全員を見つめ……
「……ウーロンじゃないのか?」
「違いますけど」



「いやぁ、すまんすまん。てっきりウーロンの奴がお前さんの姿に化けているんだと……」
 後頭部を掻き、悟空の脳天に斧を振り下ろした男性が笑う。
 いや、笑い事じゃないから。
 もしやブルマが先に入っていたら、あの世にご招待されているところだ。
 殴られて悟空の頭にできた大きなこぶに、男性の娘が冷えたタオルを乗せる。
 悟空はじーっとその子を見ていたが、いきなり
「きゃっ!!」
 下腹部を平手で叩いた。
 ぬぁ! なにしてんの!!??
 が口をパクパクさていると、悟空は悪びれもなく声をかけてきた。
「なあ、こいつ女だな!!」
 そ、そんな明るい声で。
 いや、女の子だけれど。
 ブルマが横から近づいてきて、悟空の頭を思いきり殴る。
 殴られた彼は、どうして怒られたのかが分からないみたいだ。
 は悟空のほっぺを掴んで、むにぃーっと伸ばす。
「ひ、ひててて! あにすんだよ、!」
「………べーつーにー」
 ……帰ったら絶対悟空に文句言ってやるッ……!

 悟空が間違えられたウーロンというのは、どうもこの辺に住んでいる妖怪のようで、本当の姿は誰も見た事がないそうな。
 は自分の世界でウーロンを見ているため、彼が子豚だと知っているのだけれど。
 しかし、結構悪い事してたんだね、ウーロン。
 ブルマはふぅんと気のない返事をし、それからバックパックの中からドラゴンボールを出した。
 こういう球を持っていないかと問うと、村人の中にそれと同じ物を持っていると進言する者がいた。
 ウーロンを退治すると約束し、代わりにドラゴンボールを貰う事になった。
 ……おばあちゃんにも、パンパンをする悟空がいたりして。
 怒る気も失せるんですが。

「しかし、ウーロンの棲家が分からなければ、さらわれた娘たちが」
 男性が肩を落とす。
 ブルマはにんまり笑う。
「囮を使うのよ。その女の子の着てる服を貸してもらって、孫くんが――」
「ねえねえブルマ。その囮、私がやるよ。悟空じゃ、すぐばれちゃうでしょ?」
 悟空は……とりあえず現状で演技とは無理そうだし。
 だったら、自分がやればいいのではないかと思った。
 けれど悟空は眉を潜める。
「ダメだ。危ねえだろ」
「別に大丈夫だよ」
 ウーロンが弱い事を知っているだからこそ、大丈夫だと言ったのだけれど。
 確かに今の自分は普通の女の子程度の力しかないが、変化してもウーロンはウーロンだし、問題ないような気がする。
 だけれども、悟空は口唇を尖らせて、絶対ダメだと言う。
「大丈夫だってば」
「だめ!」
 やたら心配するなあ……。
「……だって、悟空演技できないじゃない」
「だめだったらダメ! オラがやるっ」
「な、なんで……」
「知らねえけど、ダメなの!」
 全く理由になってないんだけど。
 押し問答をしていると、ブルマが呆れたようにの頭を撫でた。
「それじゃあ、にやってもらいましょう」
「なんでだよブルマぁ!」
 むくれる悟空。
 ブルマは女の子から借りた服をに渡し、着てくるように言う。
 はそれを持って家の奥に引っ込み、着替えてから出てきた。
 悟空は微妙に機嫌が悪いが、それでもが囮になる事を了解している様子。
「着替えたよ。外に出て待ってればいいの?」
「ウーロンが来たら――」

「ウーロンだ!!」
 バッチリのタイミングで村人から声がかかる。
 悲鳴を上げて村人たちが家に避難しだした。
「さあ、、出番よ! 危なくなったら孫くんが助けに入るからね!」
っ」
 入口付近で悟空に呼び止められ、振り向く。
 彼はごそごそと背中から如意棒を出し、に渡す。
「それ、持ってけ。危ねえと思ったら、如意棒でどつきまわしたれ」
「で、でも……(凄い事言ってるなあ)」
「じゃねえと、行かさねえかんな」
 分かったと了解し、外に出る。
 煉瓦道に立ち、ウーロン待つ。
 如意棒は背中の方に回して。
 ひどく重たい足音。
 巨鬼の姿をしたスーツ姿のウーロンは、これまた巨大な花束を手に持って、の目の前に歩いてきた。
 確かに普通の村人ならば、こういう姿を見たら怖がるかも。
「へっへっへ、お迎えに来ましたよ、可愛いお嬢ちゃん……ん? 昨日の子じゃあないねえ」
 髪を隠していても、やはり見姿で分かるらしい。
 相手がウーロンだから、如意棒で小突くぐらいで何とかなりそうなのだけれど、女の子がどこにいるか分からないのでは、やはり負かさない方がいいのだろう。
「随分と大人しいねえ。ふむ」
 ぼむ! ウーロンが変化する。
 ダンディズムを理解していそうな、大人の男性に変化した。
「この姿で家までエスコートしてあげよう」
「はぁ……」
「はっ、初めまして! わたしブルマですっ、16歳でぇーっす」
 ………。
 いきなり家の中から出てきたブルマは、目を完全にハートマークにして、ウーロンに自分をアピールしている。
 バストの大きさまで言っているし。
 どこの場所でも、ブルマはブルマなんだねえ……。
、こっちさ来い!」
 悟空が家の中から手招きするけれど、今ブルマを放っておけないし。
 ふるふる首を振れば、彼は眉を潜める。
 ちゃんとドラゴンボールを貰うためには、ウーロンに家まで連れて行ってもらわないといけないのだし。
「んぅ?」
 ウーロンがの手を引く。
 ぎゅっと掴まれ、微かに眉を潜めた。
 瞬間、悟空がの手からウーロンの手を引っぺがす。
「悟空?」
 目をぱしぱし瞬く
 悟空は彼女から如意棒を取り、ウーロンに向ける。
 ウーロンは悟空を睨みつけた。
「なんだお前は」
に触んなっ! こいつ弱ぇんだから、腕折れっちまだろっ!!」
 そっ……そこまで弱くはないって……。

 ウーロンは悟空を睨みつける。
 邪魔をされたとあって敵意むき出し。
 何だかんだと結局力技で、ウーロンを負かす事に。
 ……こんな変装しなくても、問題なかったんじゃ。



あれこれ変えちゃってます。今後もびしばし変えていくと思います、すみません。
2007・7・14