:注意:悟チチ好きさんには物凄くお勧めしません。
     チチさんが痛いです。不実が混じります。
     ドロっとしたのが苦手な方はすぐさま戻りましょう。
     自己責任でお願いいたします。










多重次元 1




「うーん……どうしようかなぁ」
 はリビングにあるテーブルに肘をつき、難しい顔をしていた。
 天気は晴れ晴れとし、既に洗濯を済ませたシーツが表ではためいている。
 バタンと音がし、家の扉が開いた。
「たでえま。まき割り終わったぞ」
「うん、ご苦労様でした」
 にこりと笑み、ねぎらいの言葉を悟空にかける。
 彼はタオルで軽く汗を拭うと、の向かいの椅子に座る。
 は悟空に、冷えたお茶を出してやった。
 ごくごくとノドを動かして飲んだ彼は、一息つくとを見やる。
「んで、どうかしたのか?」
「うん?」
「なんか、悩んでんじゃねえか??」
 鋭い悟空。
 は言おうか言うまいか考え――結局言う事にした。
 黙っていれば、無駄に心配させてしまうから。
 じっと見つめてくる彼に、どう説明しようか考え――なるべく簡潔に言う事にする。
 疑問があれば、質問を差し挟んでくるだろう、と。
「えっとね。克也兄ちゃんがこっちに残るって決めたでしょ? それはいいんだけど、開いたあっちとこっちの道を、ちゃんと閉じなくちゃいけなくて」
 悟空は首をかしげる。
「開いたまんまじゃいけねえのか?」
「だって、また全然関係ない人がこっちに来ちゃったら大変だもん」
 そっか、と軽く納得する彼。
 は望んでこちらに来たのだし、克也はこっちに来たものの、お互い運良くいい人に世話してもらい、なんとかなった。
 けれど全ての人がそうではないし、このままでは、いつ何時、危険な場所へ放り込まれる人があるか分かったものではない。
 の父である界王は、異世界への扉をしっかり閉じると言ったものの、結局彼の力では閉じる事が叶わなかった。
 仮にも『界の王』であるにも関わらず、穿たれた空間の扉を閉じるのには、の力が必要で。
 で、扉を閉じようとしたものの――閉じたそばから開いていってしまって。
 界王の言い分によると、地球上のどこかで、こちらとあちらを繋ぐ線のようなものが出来上がっているらしい。その線を切れば、閉じる事は容易だろうと言うのだが。
(……地球上のどこかって言われたって)
 特定しようがなく、悩んでしまっているという次第である。
「とにかく、そのこっちとあっちを繋いでるモトが何なのか分からないと」
 大きくため息をつき、テーブルの上に突っ伏す。
 悟空がの頭を優しく撫でた。
「よしよし。……ってもなあ、オラにも見当が――」
 言いかけ、悟空は首を捻る。
 頭を撫でるのを止め、腕を組んで唸りだす。
 は顔だけを上げて、彼を見やった。
「どうかしたの?」
「つく……」
「へ?」
「オラ、見当つくぞ!」
 勢いよく立ち上がった悟空は、を引っ張って表に飛び出ると
「筋斗雲ーー!!」
 筋斗雲を呼び出し、空を駆けた。

 空中で悟空にしがみ付くようにして立ったは、彼の突然の行動に目をパチパチさせたまま問う。
「ね、ねえっ! 一体どうしたの!」
「神様んトコだ!」
「神様のところ??」
 ああ、と悟空は頷き、カリン塔の上部まで行くと、を抱えて舞空術で飛んだ。
 悟空に頼って飛ぶ必要はないのだが、が自分で飛ぶと、彼より遅いので仕方がない。
 抱きついたまま天界へ到着する。
 すぐさまミスター・ポポが神殿から現れた。
 修行をしたとき以来、訪れていない神殿。
 そういえば。
(……ここで、悟空と初キスしたんだっけ)
 思い出した瞬間、かぁっと顔が赤くなった。今更な話なのだが。
、どうかしたか? 顔赤いぞ?」
 くいっと顔を近づける悟空。は慌てて後ろに下がりつつ手を振った。
「な、なんでもない。それより――お久しぶりです、ミスター・ポポ」
 いつの間にやら側にいたポポに挨拶すると、彼は変わりない無表情で頷いた。
「うん、、大きくなった。ポポびっくり。悟空と結婚した、神様から聞いた」
「えへへ……式に呼びたかったんだけどね……」
「ポポと神様、天界をカラにするわけ、いかない」
「うん」
 2人で話をしていると、悟空が間に入って来た。
「ミスター・ポポ、神様いっかなぁ」
「神様、今、神殿の中。悟空、なにか用事あるか」
「ああ。実はさ、ちょっとした理由で――オラが前修行に使った、時空なんちゃらっていうヤツを見せて欲しいんだ」
 が首を傾げる。ポポは頷いた。
「『時空転移マシン』か。こっちこい。とにかく神様に聞かないとわからない」
 サンキューと軽くいい、悟空は先を行くポポについてゆく。
 も慌ててその後を追った。


 神殿の一角。
 いくつもに分かれた部屋のひとつに入ると、神がなにやら椅子に座って書物を読んでいた。
 悟空たちを見やると神は立ち上がり、笑顔を向ける。
 ポポは部屋から出ると、何処かへと歩いていった。
 はお辞儀をした。
「お久しぶりです……でもないのかな、神様は」
「そうじゃな。天下一武道会から1年も経っておらんからの」
 笑い、神は2人を椅子に座るよう勧める。
 それに応じ、悟空が話を切り出した。
「あのさぁ。昔オラが使った――」
 神は悟空の言葉を手で遮り、に視線を向ける。
 暫くの後、心を読んだらしい神は、いきなり本題に入った。
「うむ。『時空転移マシン』か。よかろう、そういう事情ならば、好きに使うと良い」
「あ、ありがとうござます神様!」
 は何度もお辞儀をした。


 時空転移マシンを目の前にし、は少々困惑した。
 マシンをどうすればいいのか、分からなかったのだ。
 隣にいる悟空が首をかしげる。
「なあ。どうすんだ?」
「どうって……と、とにかく……リンク――繋がりを切らなくちゃいけないわけ……なんだけども」
 目視したところで、次元の切れ目など見えるはずもない。
 機械を壊してしまえば簡単だが、仮にも神の御物にそんな事もできないし。
 目を閉じ、じっくり意識を高め、は異能力の気配だけに集中した。
 細く淡い幾つか光の線が、機械から出ている。
 それはゆらゆらと力なくたゆたいながら、神殿の天井を突き抜けていた。
「……これか」
 瞳を閉じたまま、ゆっくりと何本かの線のうちの1本に手を触れた。
「うわ! !!??」
「え」
 慌てたような悟空の声に、は目を開けて背後を見やった。
 彼の手が、の片手を掴む。
「――!」
 体を光の粒が包み込み――そうして2人はその場から消えた。




凄く昔に書いたものですが、ちょっと手直ししてアップ。10話で完結します。

2012・2・11