はじめまして





 家でジュースを飲んでいたは、誰かが扉を叩いたのに気が付いた。
 母は仕事で出かけているし、兄の悟飯は目下勉強中、双子の兄である悟天は、今日は母の仕事場について行ってしまっている。
 悟飯を呼ぶことも考えたが、勉強の邪魔をしてはいけない。
 そう思ったは、扉を開けた。
「ハロー! ……あら、こんにちは。ちゃん、だっけ」
 こくんと頷く
 知らない人が目の前にいることに少しだけ気後れしながらも、自分の名前が知られている不思議さで首を小さく傾げた。
「お姉さんはだぁれ?」
「うふふー、イイ子ねぇ」
 お姉さんと呼ばれたのが嬉しかったのか、女性はニコニコと笑っての頭を撫でた。
「私はブルマよ。……ちゃんのお母さんの友達」
「どうしてわたしのこと知ってるの?」
ちゃんが生まれるときに、私も一緒にいたからね。ところで、お母さんは? 今1人なの??」
 ブルマの問いに、はふるふると首を振る。
「お母さんはおしごと。悟飯兄ちゃんはいるよ。でもお勉強中だから邪魔しちゃだめなの」
 そっか、と笑うブルマ。
 はちょっと考える素振りを見せ、ブルマを家の中へ招き入れた。
 お客様は大事にしなくちゃいけないのだ。
 てほてほと歩き、少しおぼつかない手でお茶をテーブルの上に出した。
「どうぞ!」
「あら、ありがとう」
「うー。わたしはおてもなしできないから、……今、悟飯兄ちゃん呼んで来る」
 残念そうに言うが早いか、悟飯の勉強部屋へと走った。
「……おてもなし、じゃなくて、おもてなしよー」
 なんとなく訂正してみるブルマだったりする。

 1度だけノックをし、中から声がかかるのを待つ。
 ほとんどすぐ、扉が開いた。
「あれ、。どうかしたのか?」
「悟飯兄ちゃん、ブルマさんていうお姉ちゃんが来てるの」
「え、ブルマさんが?」
 勉強道具を急いで片付け、と一緒に悟飯がリビングへ向かう。
 椅子に座って足を組んでいるブルマは、ゆったりとの入れたお茶を飲んでいた。
「やっほー、お元気?」
「はい。ブルマさんもお元気そうで」
 の椅子を引いてやり、それから自分も席に付く悟飯。
 ちょこんと座って飲みかけのジュースを飲んでいるは、ブルマと悟飯の顔を交互に見ていた。
「で、どうされたんですか?」
「うん、久しぶりにこっちの方来たから寄ってみたのよ。トランクスも悟天くんと遊ぶって言うし。途中で悟天くん見つけたから、トランクスだけ置いてきちゃった」
 ブルマらしいといえばらしい行動に、悟飯は笑った。
は仕事中なんだってね」
「ええ、今日は忙しい日みたいで……」
「じゃあしょうがないわね。うーん、でも顔見に行ってみようかしら」
「お母さん喜びますよ、きっと」
「悟飯兄ちゃん、わたしお外行ってくるね」
 ぴょんと椅子から下り、てほてほとドアに向かって歩く。
「気をつけるんだぞ? あんまり危ないところ行くなよ」
「はぁい」
 家から出たは、悟天の気配を探した。
 双子の特権とでもいおうか。
 まだ気を探ることなどできないのに、悟天のいる場所だけは何となく分かるのだった。


「あれ、悟天……誰か来るぞ」
 対決ごっこなるものをして遊んでいたトランクスと悟天は、やって来る人影に気づいて一時休戦した。
 髪を高めで結んだ黒髪の少女。
 トランクスは見覚えがなかったが、悟天は名前を呼んだ。
「あ、。おーい!」
 悟天が手を振る。
 は走って側へ来た。
「ずるいよぉ、私も遊びたいっ」
「なあ悟天、誰だ?」
 トランクスが不思議そうにを見る。
 悟天は首をかしげた。
「あれ? トランクスくん知らなかったっけ? ボクの……えーと」
 何ていうんだっけ、と困っていると、横からが口を挟む。
「双子の妹のです」
 ぺこりとお辞儀をする。
 トランクスはをまじまじと見た。
「オレはトランクス! ……へぇー、双子の割に似てないんだなぁ」
はお母さんに似てて、ボクはお父さん似なんだって」
 ふぅんと頷くトランクスに、が言う。
「わたしも一緒に遊びたいっ」
「ダメだ。男と男の戦いだぞ。女は危ないからダメ」
「いいじゃない」
「ダメだ」
「お願い」
「ダメったらダメだ」
 押し問答するが、トランクスはそっぽを向いてしまう。
 悟天が困ったようにを見ると、彼女の目には大粒の涙が浮いていた。

 マズイ。

 悟天は咄嗟にの肩を掴む。
っ、ボクと遊ぼうっ!」
「あー! 何だよ悟天」
「ト、トランクスくん、これ以上を刺激しちゃ……」
 しかし時遅し。
 はトランクスを見据えて――叫んだ。
「トランクスくんがイジワルするーーーー!!! うわあぁぁあんっ!!」

「うわぁっ!!」
 の周りの地面がボコっとへこむ。
 金色の気が立ち上り、周囲の木々が強風で煽られる。
 転がっていた石が浮き、奇妙奇天烈な動きをする。
「うわぁぁーんっ!!」
 地面から物体が剥がれる音と共に、近くの巨木が浮き上がった。
 これにはトランクスも驚く。
「う、うわっ、何だ!!??」
 悟天は必死になってを落ち着かせようとしていた。
 肩を掴んで揺する。
っ、! あぁもう、トランクスくん!! 何とかしてよ!!」
「オ、オレかよ。……わ、分かったからっ、仲間に入れるから!」
「うっ、ぐすっ……ホント?」
 ぴたり。
 鳴動が止む。
 トランクスは頷いた。
「一緒に遊ぼうぜ。だから、その、泣くな」
「あのデッカイ木、ゆっくり下ろして」
 悟天とトランクスの言葉に、は頷く。
 すぅ、と金色のオーラが消え、今度は自らの意思でもって巨木を下ろす。
 浮き上がらせた時とは違い、今度は一生懸命だ。
 土が勝手に盛り上がり、木は元の状態に戻った。
 が戻したのだけれど。
「……すげぇな、お前の双子」
 呆れた風な口調で言うトランクスに、悟天が苦笑いする。
、泣くとすごいんだよ。お母さんが、超能力と気のコントロールが上手くできてないからだって言ってた」
 大きくなれば、そんなことはなくなるのだろうが。
 はぐしぐしと目を擦る。
 普通にしていれば、本当に普通の女の子なのだが。


「ただいまぁ!」
 散々遊んで家に戻った頃、まだは帰宅しておらず、悟飯だけが家にいた。
「お帰り。……、今日もしかして、またやった?」
 ちょっとバツの悪そうな顔をし、頷く
 トランクスと悟天がため息をついた。
「悟飯さん。っていったい」
「いや、まあ……僕も小さい頃は似たようなことをしてたみたいだし」
 泣くとパワーアップというのとは少し違ったが。
 の起こした波動の地響きは、離れた場所にいた悟飯にも感じられた。
 このまま育って強くなったら、一体どうなるのだろうかと不安にかられることもあるが、母はあまり深刻に考えていないみたいで。
「ある程度自分でコントロールできるようになれば、大丈夫さ」
 からりと言う悟飯に、トランクスは肩を落とした。
「女だからって甘く見てると怖いな」




トランクス出てきたけど…甘くもなんともないですねー。お子様だからまだまだ先。
後何本か書いたらでっかくなります(何)。悟天とトラは出会い済みですが、娘子は会ってなかったって事で…;
2005・7・15