舞空術修行 パオズ山の一角。 ごつごつとした茶色い山を背景に、ふさふさとした緑の草茂る大地。 そこに、ビーデルと、悟飯と悟天がいた。 は付き添いの状態。 悟飯はビーデルと悟天に舞空術を教えている。 は既に舞空術を会得しているので、悟飯に教えを請う必要はないのだが、なんとなくビーデルと2人だけでいるのが気詰まりらしく、悟飯自身に頼まれてここにいた。 ビーデルは己の気を高められず、悟天がすいすいと舞空術を上手く扱えるようになっていくのを横目で見て、ひどく苛立たしい気分になっている様子だった。 は苦笑いする。 「ビーデル、そんなに肩張っちゃだめだよ。えっと……リラックスしないと気が自然に出てこないんだって」 進言するに、ビーデルが眉根を寄せる。 「なに。ってば、空飛べるの?」 「一応……。といっても、物凄く時間かかったよ。年で数える位」 「……そんなに」 でも、ちょっと待ってと更に眉間にしわを寄せる彼女。 「じゃあ悟飯くんとは、そんなに前から知り合いなわけ」 「あー……っと、うん。実はそうなんだよね……色々事情があって」 マズッたと思ったが、既に口に出してしまったので取り返しがつかない。 とにかく、悟天への助言を終えて戻ってきた悟飯が修行を再開させたので、それ以上ビーデルとの会話は進まなかったが。 昼頃、とりあえず一旦休憩にして食事にしようということになり、孫宅へと戻った4人。 野外で食べることにしたらしい。 悟飯がテーブルを野外用テーブルをだし、それから、既にが作っておいた料理を並べる。 「いただきます」 計5人で食卓を囲む。 料理はビーデルがいるからといって別段変わったものでもなく、普通に毎日食べているものだった。 の作る料理のおいしさは、ビーデルが驚嘆するほどだが。 料理を食しながら、ビーデルは言いにくそうに言う。 「あの、さん」 「はい?」 「さ、さっきはごめんなさい」 少しばかりお辞儀をするビーデルに、は手を横に振る。 別に構わない、と。 がビーデルの援護をするように言う。 「確かにさんて、普通にしてると……学生みたいだもんね」 「……嬉しいような、嬉しくないような」 微妙な顔をするに、悟天がにこにこしながら言う。 「おかあさん。学校いくの?」 あははと乾いた笑いをこぼすに、きょとんとする悟天。 食事は始終和やかに進んでいった。 「じゃあ今日はこの辺にしておくわ。また明日」 3時過ぎあたりまでみっちり舞空術の修行をしたビーデルは、ジェットフライヤーで家に戻っていった。 はなんだかんだと詰め寄られ、結局ビーデルに全部を話してしまうことになってしまっていた。 同棲なんて! 叫ばれ、今からでもいいからサタン邸に戻ってこいとまで言われたが、は丁寧にそれを断った。 自分の家はここで、それを変えるつもりはないのだとキッパリ言った。 ついでにビーデルには、しっかり口封じをしておかなければならなかったが。 ビーデルの姿が見えなくなると、悟飯は思い切り大きなため息をついた。 それこそ、今までの緊張をほどくみたいに。 「悟飯くん……大丈夫?」 「あ、あはは……結構疲れたよ」 「ごめんね。私がビーデルに教えられるぐらい、舞空術の熟達者だったらよかったんだけど」 悟飯は苦笑いし、 「仕方ないよ。さんは――素質はともかく、ビーデルさんほど武道をやってたわけじゃないし」 さり気なくフォローを入れる。 気遣いの上手い人だとは心底思う。 「それにしても、ビーデルさんの方が妹だなんて信じられないよ」 「だって双子だし……どっちが先に出てきたとか、そういう違いだけでしょう?」 「確かに悟天とにしたって、妹とか兄とか気にしてないみたいだもんなぁ」 「あのお姉ちゃんと姉ちゃんって、フタゴなんだ」 いつの間にやら、ちょこんとの横に立っていた悟天が、不思議そうに言う。 は抱っこをねだる悟天を抱き上げた。 いつの間にか随分と重くなったものだ。 ちょっと母親の気分である。 「そう。双子なの。悟天くんとちゃんと一緒だね」 「ふーん。ねえ姉ちゃんは、武道会でないの?」 「ちょ、ちょっと無理かな」 力量自体の問題もあるが、は人を殴ったりすることを基本的に得手としない自分に、気付いているからだった。 もちろん、場合によるけれど。 悟天はつまらなさそうに頬を膨らませた。 「でも、応援はしてくれるよね」 「うん。もちろん」 微笑むにつられて悟天も笑む。 和やかだな雰囲気に、悟飯も自然に微笑んでいた。 「ボク、姉ちゃんが本当のお姉ちゃんだったらよかったなー」 「うーん。ごめんね。私が悟飯くんと結婚したら、本当のお姉ちゃんになるのかも知れないけど」 「え、じゃあお兄ちゃん、お姉ちゃんとケッコンしてよ!!」 ぶはっと悟飯が吹き出す。 もで、ちょっと悟天を落っことしそうになった。 慌てた様子の悟飯が叫ぶ。 「ば、馬鹿なこと言うなよ! 僕はともかくさんが嫌がるだろ!」 「……悟飯くん、今なんか物凄いこと言わなかった?」 「へ?」 自分が叫んだ言葉を思い返し――カッと顔を赤くする彼。 「あ、えっ……ご、ごめん! その、僕そんなつもりじゃ――って否定するのも失礼っていうか本心に嘘をついていると言うか……ああもう、僕なにを口走ってるんだ!」 頭を抱え込む悟飯。 はくすくす笑ってしまった。 気まずそうにする彼に、不思議そうな顔をしている悟天。 「悟飯くん、今は無心で修行するのがいいと思います」 進言すると、彼はまだ赤い顔をしながら、深々と頷いた。 「……そうする」 一応、ブゥ編というか、悟空の長編と大っぴらに関わりがあるのはここまで。 以後は本編終了後(ブゥ編以後)の話になるかと思います(現状では未知数ですが) 2008・10・28 |