高校入学を期に、は孫家に戻ってきた。
 そうして暫くが経った頃――学校から家へ戻ってきたに、ちょうど夕食の準備を終えたがふと言った。
の学校って、編入は大丈夫なんだったっけ?」



同級生 1



 は毎日そうしているように、筋斗雲から――の物だが――学校から少し離れた場所で降り、高校への通学路を歩き始めた。
 まだ、たいして学生の姿はない。
 彼女が学校へ来る時間は、たいていの学生よりも早い。
 孫家の基本的な起床時間が早いこともあるが、筋斗雲で飛んでくるところを、誰かに見られたら問題があるからだ。
 肩掛けのカバンを掛けなおし、歩きながら息を吐く。
「悟飯くんみたいに、凄いジャンプとかできれば簡単なんだけどなぁ」
 言ってみたところで仕方がない。
 できないものは、できないのだから。
 舞空術を使えるようになったのはいいが、それ以外は割と普通。
 人よりは確実に強いが、世界チャンピオン(一応私の本当の父親であるらしミスター・サタン)よりは弱いのではないかと。
 どうでもいい事を考えながら歩き、校門を抜けて学校敷地内に入る。
 オレンジスターハイスクール。
 初等部、中等部、高等部。3つの学校が、ここ、サタンシティの中で分かれて点在している。
 高等部はその中で一番大きな学校だ。

「ロッカーロッカーっと……」
 教室へ向かう廊下の途中に、個人に割り当てられたロッカーがあり、はそこへとりあえず1現目は使わない教科の物を入れ、使うものだけを取り出す。
 鍵をしっかりかけて、3階にある教室へ。
 歩きがてら、窓から見える景色に目を細める。
(……そういえば、今日から悟飯くんもこの学校なんだっけ)
 確か、出掛けに悟飯くんとさんが言っていたなぁと軽く思いながら、階段を上る。
 とはいえ、のいる学年はそれなりにクラスがある。
 サタンシティは街の内外から、多くの学生がやってくるからだ。
 悟飯が編入してきたとて、と同じクラスになるとは限らないし。
(多分、同じクラスじゃない方がいいんだよね、状況的に……)
 同じ家で生活をしている者たちが、一緒のクラスだと何かと都合が悪い気がする。
 は別段気にしないが、外部はいちいちそういう事にうるさそうだ。
 学校側もそれを承知しているはずだし。
(ま、平気でしょ……)
「なにボーっとしてるのよ」
「はい?」
 後ろから肩を叩かれ振り向く。
 見知った顔がそこにあった。
「ビーデル。おはよ。今日はいつもより早いんじゃない?」
 仲のいい友達であり、双子の妹でもあるビーデルは、の横に立つと腕を引っ張って教室へと向かう。
「ほらほらっ。ボーっとしてると邪魔んなるでしょ」
「あー、そうだね、ごめん」
「なにか心配事でもあるわけ? わたしで良ければ幾らでも言ってよ」
 覗き込むような素振りで言う彼女に、
「別にそんなんじゃないから」
 手を振った。
 そんなにボーっとしていたのかと、ツッコミを入れたくなる。
「ふうん? まあいいけど。ほら先行くわよ」
 どちらが姉か分からない……。

 教室に入って暫くすると、友人達が登校してきた。
「よう、相変わらず早いな」
 の隣に座る黄色い髪で引き締まった筋肉を持つ男子――名をシャプナーという――は、教科書を乱暴に机の上に置くと、腕組みをして椅子に背中を預けた。
 シャプナーの隣にいる黄色い髪をした女生徒が、半ば身を乗り出すようにして、に声をかける。
さあ、サタンシティに引っ越してきたら?」
「そうだなぁ。イレーザの言うとおりだぜ。毎日大変じゃねえの」
 シャプナーも同意する。
 イレーザは
「だよねー?」
 同意するが、は苦笑を返すしかできない。
 友人たちには、とりあえず大よその住所を教えてある。
 ただ、孫家宅ではなく、その近隣の山村に住んでいることにしてあるが。
「まあ確かにそうだけど、にはの事情があるんだからつべこべ言わないの」
 ビーデルが援護に出る。
 それでたいていコトは納まるのだから、彼女の発言力には感謝する。

 けれどは、ビーデルにも本当の住所を教えていなかった。
 ご近所の山村診療所の場所をの住所としてもらっているのだ。
(もちろん、診療所の人にはきちんと許可を貰ってある)
 もし彼女が家に来たいなどと言い出した日には、かなり困る事請け合いだが。

 生徒の席順などは決まっておらず、好きなところに座っていいという大学形式なので、必然的に仲の良い友達が固まる。
 だいたい、、ビーデル、イレーザにシャプナーが揃い踏みで並んでいたり、上下で座っていた。
 チャイムが鳴り、担任教師がホームルームのために入ってくる。
 メガネをかけた少々物言いのキツイ先生で、英語の教師でもある。
 出席をとると、さて、と場を仕切りなおす。
「今日からこのクラスに入る生徒を紹介します」
 はその言葉にぎくりとした。
 まさか――でも。
 可能性がないわけではないが――
、どうかしたのかよ」
 表情が変だったのか、シャプナーが声をかけてくる。
 は首を横に振り、
「別になんでも」
 とだけ答えた。
 教師は彼女の様子になど全く気付かず、生徒を教室内へと導き入れた。
 あーと声を上げそうになり、慌てて口を手でふさぐ。
 悟飯の方もすぐさまに気付き、苦笑いを浮かべた。
「えっと……孫悟飯です。よろしくお願いします」



学校内部はかなり適当想像。
2008・10・28