訓練拝見



 彼が訓練しているのを見た。
 勉強しているときとは違う種類の真剣な表情が、とても――凄く――なんて言うか別人を見てる気がした。

 いつも勉強している時間になっても部屋に現れなかった悟飯が気になって、は悟天とを昼寝させた後、外に出た。
 彼はすぐに見つかった。
 家の側で格闘技の型の練習らしきものをしていたからだ。
 暫く彼のその練習を見ていたが、終わったらしい雰囲気になった頃、は声をかけた。
「悟飯くん、もういい?」
「あ、さん……」
 悟飯は近くにおいてあったタオルで汗を拭きつつ、ちょっと照れくさそうに笑った。
「もしかして、見てた?」
「うん。凄いね、びっくりしちゃった」
 勉強のために一緒に部屋に戻りながら、は悟飯に自分が見た感じを告げた。
「凄くね、なん言うか……綺麗だなーって思ったの」
「綺麗?」
 そういう風に言われたことがなかったのか、悟飯は少々驚いた顔をした。
 格闘技の型を、誰かに見せるような機会はほとんどなかったが、無ではなかった。
 しかし、誰からもそんなことを言われてはおらず。
 周りが、武道をやっている者ばかりだからかも知れないが。
 は悟飯に微笑みかける。
「1つの動作にしても、凄く凛としてて。えーと……なんて言えばいいのかな」
 うぅんと悩んで首を捻る。
 上手い言葉が見つからない。
「武道って、何かこう、物を殴ったりとかっていう練習方法だと思ってたから……うーんと。そうそう、とっても自然だと思ったの」
 緩やかな風と共に動いているような姿は、とてもとても綺麗で、優しそうで。
 両手を使って一生懸命に説明するを見て、悟飯は小さく笑った。
「あ、ひどい」
「ご、ごめん! いや、だって凄く一生懸命説明するから」
「……」
 ふくれるに、本気で気分を害してしまったのかと、困り顔になる悟飯。
 なんだかその様子が可哀想で、でも可愛くて、彼女はくすくすと笑った。
「悟飯くんて、本当に真面目だよね。いい意味で。怒ってないから大丈夫、ごめんね」
「よかった。……でも僕、結構不真面目なところもあると思うけど……」
「勉強時間中に窓からどっか行っちゃったりとか?」
 悟飯はきょとんとして――それから頬を染めて、乾いた笑いをこぼした。
「はは……母さんに聞いたの?」
「うん」
 悟飯は以前、何度も勉強中に脱走したことがあった。
 セルとの戦いが終わってから暫く、勉強に身が入らなかった彼は、こっそりと部屋を抜け出し、父・悟空と一緒になって遊んでいた場所へ、足を運んでいた。
 リビングに隣接している悟飯の部屋は、窓から抜け出ない限り、どう頑張っても母親に見つかってしまう。
 出かける、ときちんと言えば「気をつけてね」と送り出してくれるだろう母だけれど、なんとなく心配をかけるのではないかと気が引けてしまったりして。
 セルとの戦い以降、母はどことなく無理している気がする。
 余計な心配を与えたくない、という気持ちが大きい。
 結局のところ、気の察知ができる母親は、悟飯が抜け出たことなど手に取るように分かるのだが。

「今度脱走する時は、私も一緒に連れてってね。舞空術も頑張るし!」
 気のコントロールを毎日毎日一生懸命にやっている
 センスは悪くないので、コツさえ掴めばすぐに気を高めることができるだろうと
 悟飯は思っていた。
「それじゃあ、さんが舞空術を覚えたら、抜け出てみようか」
 悟天とがいるので、母さんがいるときじゃないとだめだけど、と付け加える。
 小さい声で笑い、指きりをする。
 ちょっとした約束。
 はふと気づいたみたいに悟飯を見た。
「悟飯くんってやっぱり修行とかしたんだよね? 私にもできる?」
「ええ!? 僕は修行したけど……。うーん」
 悩む悟飯を、真剣な目で見る
 彼は暫く考えていたが、うん、と頷いた。
「じゃあ、護身用に少し教えるよ。それでいい?」
「うん、ありがとう!!」

 ……そうして習い始めたが、また一生懸命やりすぎて、風呂場でぶっ倒れるとは思わない悟飯だった。




よく倒れる夢主だなと思う…。いまいちまだ性格設定が掴めてない。洗い直し。
2005・7・1