バーゲンセール やって来た少女、の部屋を作り(といっても、今まで倉庫として使っていた場所を片付けたのだけれど)、悟飯と彼女の2人で買い物へ行かせている間、は双子の面倒を見ていた。 テレビで格闘技の番組をやっているのを見ていた双子が、突然、どちらともなく 「お母さん! ボクに戦いかたおしえて!」 「あっ、わたしもおしえて!」 そう進言した。 お茶を飲んでいたは、2人の真剣な眼差しに、さてどうしようかと考える。 確かに、余りあるほどの力を制御するためには、ある程度の格闘術を教えておいた方がいいだろう。 悟飯は勉強があるし、は格闘をした事がない。 ならばやはり、教えるのは自分しかおらず――。 お茶を飲み干し、は頷く。 「それじゃあ、少し教えよっか」 外へ出た達は、家から少し離れた山側の場所で、訓練をすることにした。 わくわくしている悟天とには悪いのだが、残念ながら自身、そう強いわけではない。 いつだって師匠と呼べる人がいたわけで……。 「ええと、それじゃあ……どうしよう。私と軽く組み手でもやってみようか?」 「うんっ! ボク一番!」 「あっ、悟天お兄ちゃんずるい……」 それでも素直に順番待ちをするの頭を撫でてやり、は悟天にお辞儀をする。 悟天も見よう見まねで、手を合わせてお辞儀をした。 「えーと、それじゃあ……おいで?」 はにこっと微笑み、構えを取る。 「うん!」 悟天は構えを取り――たあっと声をかけて攻撃してきた。 存外、攻撃のスピードが速い。 かといって、決して今まで経験を積んできたに敵う物でもないが。 ぱしぱしと音を立て、攻撃を受けていく。 「悟天、フォームが無茶苦茶だよ。スキだらけ」 足を引っ掛けて転ばせてやると、悟天ではなく、がぎゅっと目を瞑った。 何度も攻撃をし、何度も防ぐ。 ふいには悟天の気が高まっていくのを感じ、眉根を寄せた。 それでもまだに敵うものではなく、一気に詰めてきた悟天の拳を受けとめる。 すると、 「え!?」 彼の気が、在り得ないであろう変化を起こした。 体から発せられる気が、金色のそれに変わって。 悟天から繰り出された拳を、何とかギリギリのところで避け、飛び退る。 「……ちょ、ちょっと待った悟天!」 「…………? なあに、お母さん」 なあに、じゃないよ! 何で、何で超サイヤ人になってんの!!?? 悟天の変化を見ていたが、わぁ、と軽く笑む。 「もなるー」 かと思うと、悟天の横に立ったが同じように金髪碧眼になった。 うっそーん。 唖然とするに、双子は小首を傾げる。 首を傾げたいのは、こっちの方だ。 確か、超サイヤ人というのは……ある程度の力量を持った、心が純粋な者が、怒りでキレるとなれるもの……だったはず。 認識が違っていたのか、それとも双子がイレギュラーなのか。 けれど発している気は、間違いなく超サイヤ人のそれだ。 は双子を側に呼ぶと、超化を解かせる。 「……あ、あのね、2人とも。あんまり強いトコ見せちゃだめよ。それから、超化はしないで」 「チョーカって、なに?」 の無邪気な瞳に、はもう少し詳しく説明する。 「金色になっちゃ、駄目ってこと」 「「どうして?」」 「えーと」 説明が難しい。 どう言えば、理解してくれるだろう? 「そうだね……金色になると、2人はとっても強くなっちゃうの。ちゃんとコントロールできないと、コップ持てば割れるし、を突付くと吹っ飛んで行っちゃうかも知れないし……とにかく、危ないから」 わかった? と聞くと、双子は素直に頷いた。 ……怒りも何もなく超化できるなんて知ったら、悟空はともかく、ベジータなんてどんな顔をするか分かったものではない。 後に、ベジータが『超サイヤ人のバーゲンセール』などと言ったが、間違っていないとは思った。 2008・3・16 |