新しい毎日




 妊娠し、お腹を痛めて産んだ子は、双子だった。
 そもそも1人だという認識を持っていたので、「可愛い双子のお子さんですよ」と看護婦に言われた時は、思わず目を瞬いてしまったりした。


 双子の兄の名は、悟天。
 双子の妹の名は、
 赤子2人はそれこそ生まれた時から仲がよく、片方が泣くともう片方も泣くという感じで、や悟飯を困らせたりする事もしばしば。
 それでも、日、1日と成長を続けて行く様子を見るのは、にとって幸せな事で。
 悟天は悟空似だから(というかそっくり)、あの世にいる夫に逢えない寂しさが、時折物凄く心に凍みるけれど、おおむね平和に過ごしている。


 そんなある日、の元へ1人の少女がやって来た。
 彼女の名は
 は悟飯と同い年で、の本当の両親に育てられた女の子で。
 の実母、実父からの手紙を携えてやって来た。
 自身はミスター・サタンの実子らしいのだが、帰る場所がないということで、は彼女を孫家に受け入れる事に決めた。
 何かを深く考えていた訳ではない。
 ただ、どこにも行く場所がなさそうだったを、ああそうですかと放り出すなんてできなくて。

 手紙を受け取った日、は心底疲れたかのように寝室でため息をついた。
 部屋が足りず、一緒に寝る事になったは、ダブルベッドの端っこで、申し訳なさそうな状態で寝息を立てている。
 ――今頃になって、こうして本当の両親からの何かを、受け取るとは思っていなかった。
 憎しみなんて感情は、の中には全く生まれなかった。
 そもそも、育ての親の界王を実父だと思っているにとって、本当の父親というのは淡い存在で。
 手紙に母の名も、父の名も記入されてはいなかった。
 贖罪したいという気持ちだけが入っている。
 はもう大人になってしまったし、子供がいるから親の気持ちも分かる。
 自分だったなら子を捨てるなんて、これっぽっちも考えられないけれど、幼い頃の自分が、異能力で何かとんでもない事をしでかしたのかも知れないし。
 それに、もし彼らが自分を捨ててくれなければ、悟空と出逢う事もなかったと考えると、にはどうしても彼らを責める気が起きない。
 もっとも、過去の話だと割り切っているから、敵意なんてものが湧かないのかも知れないけれど。
 この事を悟空に話したいけれど、彼はあの世にいる。
 悟天とができて暫くしてからずっと、は彼に会いに行っていなかった。
 子育ては大変で、しょっちゅう悟空に会う事によって、依頼心が生まれて、今の生活に支障をきたすのは問題だったからだ。
 いくら空間転移で飛べるといっても、子供を連れては行けないのだし、ならば行くべきではない。
 女を捨てて――というのは語弊があるが、母として立つのが、今の自分に一番必要な事なのだと、は思っている。
(……でも、会いたいな)
 決して子供たちの前では明かさない本心だけれど、1人でいると、つい零れ出てくる。
 悟空からの通信も、全くない。
 修行にかまけているから、という訳でないのは、父・界王からの報告で分かっている。
 彼は、の『1人で頑張る』という気持ちを立てるため、声をかけるのを我慢してくれているらしい。
 死んでしまっているのになお、こんな風に思われているのが実際に分かるというのは、何だか嬉しい。

 時間を見ると、既にいつもの就寝時間を過ぎていた。
 は、鍵のかかる引き出しの中に手紙を入れると、ベッドに入る。
 が落ちそうだったので、少しベッドの中よりに引っ張り、布団をしっかりかけてやった。
「おやすみなさい」
 誰にともなく言い、は目を閉じた。




2008・1・18
…五か月ぶりです。自分で「はぁ!?」とか驚いてしまった…のんびり続けていきます。
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