一時休息 後編




 2日が過ぎ、3日が過ぎ。
 ブルマたちから情報をもらってはいるが、自身は悟空の看病でずっと彼の傍についていた。
 セルという化物が現れては、人々を吸い殺して行く事。
 そのセルは17号18号を吸って、完全体になる事。
 今の所、人造人間は野放しになっている事。
 どれもこれも、人類には嬉しくない事ばかりであった。

 ピッコロたちが南地区へセルを探しに出かけたのを見送って、は悟空の元へ戻る。
 看病疲れというものはないけれど、殆ど眠りに落ちている彼を見続けていると、このまま目覚めないのではと悪い考えが時たま頭を過ぎる。
 2階に上がり、顔を上げて驚いた。
「悟空!」
 彼は窓際に立って、振り返ってを見た。
。心配かけたな。もう大丈夫だ」
 いきなり着替え始める悟空。
 下の階にいた亀仙人も気付いたのか、上にあがってきた。
「お、おいおい悟空! おぬしなにを」
「もう少し寝てた方がいいよ!」
 しかし彼は首を振る。
「夢ん中でみんなの話を聞いてた。だいたいの事は分かってる。またえれえ事んなっちまったみてえだな」
 ごそごそと靴を履きだす。
 完全に動き出すつもりの悟空に、は不安げな瞳を向けた。
 それに気付いた悟空が苦笑する。
「でえじょぶだ。まだ闘わねえよ。今のベジータに勝てねえなら、オラにも無理だ。上を目指すさ」
「上?」
「超サイヤ人の上をな」
 亀仙人が驚いて声を上げた。
「そ、そんな事が可能なのか!?」
「わからねえけど……それぐらいしねえと勝てる相手じゃなさそうだ。1年ほど修行してダメなら、諦める」
 1年?
「ちょ、ちょっとかかりすぎじゃ」
 の言葉に悟空は笑む。
「1年間を、1日だけで済ませられるところがあるんだ」
「???」
 よく分からないという顔をしていると、悟空はの肩に手を置く。
 なに、と質問をする前に、彼は口唇を触れ合わせていた。
 息を飲むことすら忘れ、ただ悟空の行為に目を瞬く。
 一度口唇を離し、もう一度。
 今度はも目を閉じた。
 後ろで亀仙人が奇抜な声を上げているので、ちょっと、いやかなり気恥ずかしい。
 悟空は口唇を離すと、の手を握って言う。
「悟飯も連れて行くつもりだ。……おめえはどうする?」
「力にはなれないかもだけど。一緒に連れて行って」
 彼は微笑み、すぐさま瞬間移動した。
 後に残された亀仙人は、ただ呆然と2人が消えた場所を見ていた。



「あっ、お父さんにお母さん!」
「悟空! ちゃんも!」
 いきなり飛行艇内に現れた2人に仲間たちは驚いた。
 もう病気はいいのかと問われ、問題ないと答える。
 腹は減ってっけどなーと言う悟空に、確かにいつもの量の食事させていなかったと思い返した。
「神コロさま」
「名前まで合体させるんじゃない。ピッコロでいい」
「そか。オラ、今のままじゃ人造人間にも、セルって奴にも勝てやしねえ。だから、修行に行ってくる」
 1日で1年を過ごせる場所へ。
 そう言うとピッコロは少し驚いたように頷いた。
「そうか。精神と時の部屋だな」
「ベジータとトランクスも連れてく。あいつらならきっと耐えられっからさ」
 早く行けと促され、悟空は悟飯との手をとり、瞬間移動した。


 次に着いたのはどこかの岩場で、トランクスが目の前にいた。
「悟空さん!」
「よう。どうだ、特訓の成果は」
 しかしトランクスは表情を曇らせ、岩場の先にいるベジータに視線を送ったかと思うと深いため息をついた。
「ダメです。父はオレを厄介者としか見てくれません。その父もこの3日ほど、ああしてじっと立っているだけで……」
 悟空はベジータに近寄り、なにか話しかけた。
「あの、さん」
 トランクスに声をかけられ、視線を向ける。
「もしかして……悟空さんたちと一緒に修行するつもりですか?」
「え、うん。一応そのつもりだけど、ただ実力差がありすぎるから……補助みたいなもんかな」
 あははと軽く笑うに、トランクスの表情はすぐれない。
「どうしてです。危険だと分かっているんでしょう?」
「そりゃそうだけど。誰かに任せて放り投げるのとか、好きじゃないの。自分が頑張らないと、自分を変える事はできないでしょ?」
 そう笑いかけると、彼もふっと笑んだ。
「本当に……そっくりです」
「?」
「い、いえ! なんでもありません!!」
 不貞腐れ気味にやって来たベジータと、トランクス、悟飯にを連れ、悟空は天界へと飛んだ。


「ミスター・ポポ、久しぶり!」
 が丁寧にお辞儀をすると、ポポは嬉しそうに笑った。
 雑談はともかく、用件を述べる悟空。
「――なるほど、分かった。ついて来い」
 廊下と階段を歩き、いくつか部屋を抜けてその扉の前に出る。
 扉の上には時計が掛けられていて、普通の時間とは違う時間の刻み方をしているように思う。
「ここだ。誰から使うか?」
「ベジータとトランクスが先に入る」
 ベジータは仏頂面のまま、トランクスは悟空にひとこと断って入っていく。
 あの2人が1年ずっと一緒に修行……。
 ケンカしないかとちょっと不安になるなぁ。

 天界でベジータ、トランクスを待ちながら、もう直ぐ丸1日が過ぎようとしていた。
 突然表れた大きな気に、悟空たちは感覚を研ぎ澄ます。
 闘っているのはピッコロと人造人間。
 助力しに行こうとする悟飯を、悟空が制した。
「行ってもムダだ! 足手まといになりたいかっ!」
「……っく」
 もう少しでトランクスとベジータが出てくるはず。
 ――けれど、2人が出てこないままに、セルの気が以上に膨れ上がった。
 人造人間のどちらかが吸収されたとしか思えない。
 ピッコロが倒され、天津飯が気功砲というものを撃つ。
 けれど一発撃つごとに、どんどん彼の気が落ちていく。
 並みの減り方ではない。
 こんなに急激に減らし続けては、命が危ういのに、それでも彼は打ち続ける。
 ついには力尽き、動かなくなった。
 たまりかねた悟空が瞬間移動で天津飯を、そして辛うじて生きていたピッコロを助け出した。
 かなり危険な状態だったピッコロを、が少し時間をかけて回復させ終えた時、
「おい、2人が出てきたぞ」
「ほんとか!?」
 ベジータとトランクスが部屋から出てきた。




ざばーっと進んじゃってます。いっそ省略しすぎかとも。
2006・9・26