フリーザ再来 悟空が帰って来ぬまま約1年。 は彼を気にしながらも日常という日を続けていた。 自宅近くの村で診療をしていたは、薄ら寒い気配が走っていった気がして、治療の手を止めた。 診察台に横になっている常連の老人が首を傾げる。 「先生、どうかしましたかの?」 「え、あ、うん……別に――」 なんでもない、と言おうとして口を閉ざす。 無視できないほどの濃厚な気に、は窓に駆け寄った。 目視できる範囲に、その姿はない。 まだ上空――恐らくは宇宙にいる。 でもそう遠くじゃない。地球の大気圏に近づいてるのは間違いない。 「せ、先生?」 驚いている患者。 ――どうしよう。 このまま診療を続けてはいられない状況だ。 「ごめんなさい。途中だけど急用ができちゃったから……また後でお願いできますか」 「え、ああいいですとも。そんじゃ、時間が空きましたら電話下さいな」 「はい。本当にごめんなさい!」 言うが早いか、は外に飛び出し、そのまま不穏な気の元へ飛んでいく。 もうこの際、村人に飛んでいる姿を見られるとか、そういう状況にまで頭を巡らせる余裕はなかった。 家の上空を飛び抜けて北東方向へ向かう。 すぐ後ろから、悟飯がやって来た。 「お母さん!」 「悟飯。気付いた?」 「はいっ。これって……フリーザの気ですよね」 自分以外の人間にはっきりこう言われると、間違いではないのだと思い知らされる。 できれば、いや、かなり全力で間違いだと言って欲しかったのだけれど。 ずっと進んでいくうちに、クリリンが先にいるのを発見した。 「クリリン!」 「ああ、ちゃんと悟飯か……。気付いたんだな」 「そりゃあ気付くよ、こんな凶悪なの」 「もうひとつ、似たような大きな気がありますよね」 悟飯が言う。 確かに、否が応でも肌が覚えているフリーザの気と、それに似た、よろしくない感じの気がある。 どういう事か分からないけれど、地球に優しくないに違いない。 おそらく2つの嫌な気が降りてくるであろう付近につくと、既にベジータとヤムチャ、天津飯に餃子、ピッコロ、そしてなにをどうしたかブルマまでいる。 「。悟飯くんにクリリンも」 「ちょ、ちょっとブルマ! 一体こんなとこに来てなにして……」 なにって、と大仰に肩をすくめ、決まってるじゃないと言い放つ。 「見に来たのよ、フリーザって奴を。ナメック星の時だって一度も見てないもの」 「み、見に来た……って、危ないよ!」 「分かってるから来たのよ。どうせ、フリーザがその気になったら地球ごと」 ぱっと手を開く。 「ドカンでしょ? どこいたって一緒じゃないの」 「そ、それは……そうかも知れないけど」 「それにねえ、同じ女のあんただっているんだから、いいじゃない」 ……そいういう問題だろうか。 「来たぞ!」 ピッコロが叫ぶ。 上空を飛びすぎ、少し先に着陸した。 「いいかキサマら、飛ぶんじゃないぞ! スカウターで察知されんよう歩いて近づくんだ!」 ベジータの言葉に従い、気を消す。 「し、信じられない……本当にフリーザだよ。宇宙船もそのものズバリだし」 「……な、なあ。フリーザってのは、あんなバカでかい気なのか!?」 ヤムチャの質問に悟飯が答える。 「あんなものじゃありません……もっと強くなっていきます」 「じょ、冗談じゃないぜ!」 近づいてどうしようというんだと、かなりショックを受けているヤムチャに、ベジータが冷酷非道な一言を告げる。 「はっきり言ってやろう。地球はこれで終わりだ」 「そういう言葉は、思っていても口に出さないで欲しいんだけど」 が引きつった笑いを浮かべた。 「とにかく、この場にいてもしょうがな――……!」 ――大きな気が表れて、一瞬でたくさんの気が消えた。 一体どうなっているのか分からず、悟飯と顔を見合わせる。 山の向こう側でなにがおこっているのだろう。 ぶわ、と大きく気が膨れ上がる。 ナメック星で感じた事がある気。 「これって……超サイヤ人の」 「お、お父さんだ! あの時のお父さんの気だよ!」 「あ、あれは?」 山の向こうに飛び上がった人物、2人が視界に映る。 フリーザは金色のオーラを纏った人物に剣で斬られ、挙句、気で消されてしまった。 「フリーザをあっという間にバラバラに……」 悟飯の言葉通り、フリーザは一瞬で屠られたのだが……しかし、あんな事を出来る人物が悟空以外に誰がいるのだろう。 「お母さん、あれはお父さん……」 ふるふると首を横に振る。 金色のオーラを纏っているし、気配もナメック星での悟空と酷似しているが、あれは――悟空じゃない。 「違うよ。だって、なんか……違うんだもん」 どこがどう違うかと言われても、はっきりした事は言えないが、違うものは違う。 あくまで感覚的なものだ。 「……じゃあ、アレは誰なわけ?」 ブルマの問いに答えられない。 だって、知らない人なんだもん、多分。 「くっ」 飛ぶなと言っていたベジータが真っ先に飛んで行く。 たちも追った。 青年は、側に寄った達の目の前で、フリーザの父親だという人物を、これもやはりあっさりと倒した。 宇宙船を破壊し、超サイヤ人化を解く。 彼は声を張ってみなに呼びかけた。 「これから孫悟空さんを出迎えに行きます。一緒に行きませんか!!」 は半信半疑ながら、とにかく彼についていく事に決めた。 という訳で、本編再開。 2006・8・4 |