ナメック星 2



 目いっぱい飛びながら、先導するクリリンと悟飯についてゆく。
「ねえ、レーダーはブルマが持ってるの?」
「ああ! まさかこんな事になるなんて……クソッ、急ごう!」


 ブルマのいる位置には、そう長くはかからなかった。
 悟飯たちも修行を積んだのだろう。
 大きな岩の裂け目に簡易テーブルがあり、その横の岩に持たれかけて彼女は眠っていた。
 ひどく暇そうにしているが……どこにいてもブルマはブルマだと、何となく安心を覚える。
 そんな悠長な事を言っている場合でもないのだけれど。
「ブルマさん!! レーダーを!」
「……んんー?」
 ゆっくりと目を開け、焦りまくっているクリリンと悟飯を見るブルマ。
 彼女は2人を目に留めると、急に立ち上がって怒り出した。
「あんた達! こんな所に女の子ひとりを放っておいて許されると思ってんの!?」
「まあまあブルマ」
 慌てるだけのクリリンの横から、が割って入った。
 ブルマが目を丸くする。
!? あんたなんでここに……まさか孫君にくっついて来たの!」
「まあそんなトコ。ブルマお願い。レーダーが必要なの」
「わ、分かったわ……しかしあんたも大概無茶するわね」
 そこの鞄の中よと言い、悟飯が勢いよく探し始めた。
 焦っているため、微妙に効率が悪そうではある。
、まさかまた何か危ない事をしようとしてんじゃないでしょうね! 危険な事は男どもに任せておけばいいのよ!」
「うーん、前と同じく、死にそうになったら逃げるっていう事で許して」
 えへへと笑いかける。
 ブルマはその言葉が前もって分かっていたのか、肩をすくめるだけに終わった。
 彼女はの性格をよく理解している。
 心配してくれるのは嬉しいが、やはり全てを丸投げしてしまう事は、には無理だ。
「分かりました!」
 悟飯がレーダーを見ながら方角を示した。
「行こ!」
 の言葉にクリリンが頷き、悟飯ともども空に浮く。
 ブルマが背後から叫んだ。
「ちょっと! 無茶しちゃ駄目よー!」
「うん、ありがとう!!」
 お礼を言い、猛スピードでその場を飛び去った。


 結構フリーザの宇宙船までは距離があった。
 レーダーの示す位置に辿り着くと、確かに大型の宇宙船がある。
「悟飯、ボールはどの辺?」
「はい、お母さん。ええと……宇宙船の中じゃなくて、外にあるみたいです。位置が少しずれていますから」
「ふぅん、なんでわざわざ外なんだろう……」
「とにかく降りよう」
 クリリンの言葉に頷き、とりあえず着地する。
 誰もいないようなのは一安心だが、そう時間をかけてもいられない。
 レーダーを持つ悟飯の指示に従い、位置を調べていく。
「この辺だと思います」
 示された辺りは周りとは土色が違う。
 不自然に均された感があった。
「うん、多分ここだね。掘り出そう」
 3人それぞれ急いで土を掘る。
 ある程度彫った所で、透明な橙色の頭が見えた。
「あった!」
 急いで周囲をかきだすと、次々にドラゴンボールが現れる。
 人ひとり分の範囲を掘り起こす頃には、7つ全てのボールが土の中から出てきた。
 土を払って平らな地面に置く。
「よかったな! 敵が戻ってくる前に見つかって!!」
 ホッとするクリリン。
 だが目的はこれからだ。
 は地球の神龍すら見た事がない。
 空が暗くなるという事ぐらいしか知らない。
 もちろん、呼び出す呪文とやらも知らないので、この辺りは2人に任せるしかない。
「よし、それじゃ……呼び出すぞ」
 すぅ、とクリリンが息を吐き、吸う。


「出よ神龍! そして願いを叶えたまえ!」

 ……。

 …………。

 結構簡単なセリフなんだなぁと内心思っていると、クリリンがマヌケな声を上げた。
「あ、あれ?」
 あれ? と言われても。
 確か――ブルマに聞いた話では、神の龍が現れるはずだ。
 星は違えど、基本的なところはナメック星のドラゴンボールも同じなはずで。
 だったら……これは。
「不発?」
 が呟くと、クリリンは慌て出した。
「な、な、なんでだよ! なんで神龍がどわぁぁって出てこないんだよ!!」
「ちょ、ちょっとセリフが違うのかも知れませんよ!?」
 悟飯も慌て出す。
 やはりこの状況は異常らしい。
 ドラゴンボールが偽者だという事も考えたが、目の前にあるボールは確かに以前、悟飯の帽子にくっついていたものの巨大版。
 そっくりに偽造したという可能性もあるが、それならばレーダーに反応した説明がつかない。
 じゃあ何がマズイのか。
 置き方という線も考えられるが、やはり一番の問題なのは『言葉』だろう。
「――あれ?」
 ふと違和感が体を包む。
 気が、動いている。
 それも2つ――どちらも余り宜しくない気だ。
 では……悟空は?
「悟空はどうしたんだ!? と、とにかく気を消して隠れるんだ! ちゃんも!」
「え、あ、はいっ!」
 クリリンに引っ張られる悟飯に続いて、も岩場に隠れる。
 暫く息を殺していると、2人の人物がやって来た。
 ひとりは先ほどの敵、ジース。
 そしてもうひとりは――

「……悟空?」

 確かに、悟空に――少なくとも外皮は彼に見えた。


2006・3・28