多分、正確なところでは初夜≠ナはないのだ。
でも別に今までそういう行為をしていたわけじゃないので、やっぱり初夜≠ネのだろうか。

そんなどうでもいいことを考えながら、は脱衣所から出た。



初夜



リビングには既に悟空の姿はなかった。
外にいるのかと思って窓から覗いてみるが、別にそれらしい影はない。
ということは、既に寝室で爆睡しているのだろうか。
冷蔵庫から冷えたお茶を取り出して、一口飲む。
ひやりとしたそれが咽喉を伝い落ちた。
部屋の電気を消し、寝室へと向かう。
月が出ているから人口の明かりがなくても結構見えるものだ。

寝室のドアを開け――きょとんとした。
影が濃く伸びている。
――悟空は窓に背を預け、月光を背面にして立っていた。
寝ているものだと思ったは少し驚きつつ、部屋の中へ入ってドアを閉める。
「悟空、起きてたんだ」
「なんだ、寝てると思ったんか?」
「うん。だっていつもはリビングにいるから」
ぽすんとベッドに座りながら言うと、彼は小さく笑った。
「だってさ、すんだろ? エッチ」
「……っ」
の頬が一瞬で真っ赤になる。
そうだ、そうだった。
亀仙人宅から戻ってきて、あまりに普通の状態だったから失念していた――というより、
無理矢理それを頭から追い出していたのだ。
考えると、とてもじゃないが普通ではいられなかったから。

悟空はに微笑みかけ、寝巻きの上を脱ぎ捨てると彼女を押し倒した。
「わ! ちょ、ちょっと悟空っ……」
「嫌か?」
いつもの邪気のない悟空の顔が、これからやろうとしていることとは酷くアンバランスで。
「い、嫌じゃないけど、あの、心の準備っていうものがっ」
わたわたと腰をずり上げるを追うように悟空も上がってくる。
いつの間にやら完全にベッドの上に横たわっていた。
「だってさあ、の心の準備待ってたら、いつまで経ってもダメな気がすんだけどさ」
「……確かに」
心の準備、などと言っていたら本当に長いこと先になる気がする。
まさか悟空がその辺を指摘してくるとは思わなかったが。
暫く考え――悟空の真剣な目線に負けて、ふ、と身体から力を抜く。
既に夫のその人に身体を預ける事に抵抗があってどうする。
好きな人なんだから。
の体から力が抜けたことを感じ取った悟空は、そっとその口唇を吸った。



悟空はすっかりの寝巻きを乱してしまうと、あっさりと全てを取り去った。
自分も全てを脱ぎ去る。
2つの裸身がベッドの上にあった。
……」
腰に響く低音の声に、はそっと目を閉じた。
口唇が重なり合い、舌が絡み合う。
「ん、ふ……」
隠すものがなにもないという羞恥心も手伝って、感情が昂ぶるのは早い。
悟空は口唇を重ねながら、の小振りな胸に手を添えた。
少々硬くなる体をほぐすように、何度も胸をもみしだく。
「っん! いたっ……」
口唇を離した途端に抗議の声が上がった。
彼は慌てて手を引っ込める。
「わ、わりぃ……痛かったか?」
「うぅ……力入れ過ぎ……」
悟空が亀仙人に見させられたビデオでは、勿論力の入れ具合なんて分からない。
仕方なくの反応を見ながら、手加減していくことにした。
弾む息。
普段からは考えられないような姿に、悟空はつい手加減を忘れてしまいがちになる。
それでもその後、力の問題で痛がられることはなかったが。
胸の柔らかさが気持ちよくて、しつこく揉み解していると――
「……、ここ立ってんぞ」
「っ! い、言わないでよぅ……」
桃色の熟れた突起物が悟空の目に入った。
胸の中央にあるそれを、そっと指で突付いてみる。
「あぁ……」
熱い息と共に吐き出される声。
その声に驚いての顔を見ると、彼女は自分の声に驚いて口を塞いでいた。
「今の、の声だよな?」
「……」
確認せずともこの家にいるのは悟空との2人だけ。
彼はもう一度、声を聞きたくて胸を突付いた。
「っ……」
口を塞いでいる上に我慢しているからか、声を出さない。
悟空はイタズラっ子のような表情になり、その胸の突起を――口に含んだ。
片方は手で、片方は舌先で転がす。
ころころとその熟れた突起を転がせば、堪えきれなくなったのか、
は胸を張り、声を上げ始めた。
「あんっ、だめぇ……いじっちゃ……」
「なんでだ? 気持ちいいんだろ?」
ならいいじゃねえか、と止めるどころか猛追する。
強弱をつけてつまんだり、舌を絡めて吸い上げたり。
はベッドのシーツを掴み、何とか快楽に耐えていた。
自ら発する声は、もはや自分のものではないように感じる。
悟空はの頬にキスを1つ落とすと、ゆっくりと指を下腹部へと這わせていった。
ビクンと身体が反応する。
足の付け根に指を這わせ、そっとその秘めた部分を擦る。
「っあぁ……」
「へぇー、こんな風になるんだ。濡れてんなぁ……まだこっち弄ってないのに」
「だ、だって……あふっ」
悟空に触れられているだけだって、そうとう厳しいものがあるというのに、
今彼が触れているのは快楽の坩堝だ。
甘い痺れに身体の自由を奪われる。
彼が下の方に移動したのに気づいていても、何を言うこともできなかった。
初めての体験で、の身体は悟空のくれる快楽にすっかり飲み込まれてしまっていた。
悟空もまた、普段には見られないの様相に全ての意識を持っていかれてしまっている。
感じたこともないような気持ちが湧き上がっている。
――を、無茶苦茶に乱れさせてみたいという気持ち。
それは素直に言えば欲望だった。
ただ今のところ、彼にそれをするだけのスキルはなかった。
愛しい気持ちが先に立って、不思議と行為を実行している。
迷いもなく彼女の身体を自分の手で乱していった。
の両足を開き、その部分をじっと見つめる。
「や、やだぁ……そ、そんなに見ないでぇ……」
言うが抵抗する力がないに、悟空は笑んでそこを両手で広げる。
空気に触れた部分がすーすーした。
涙声になる
彼は手を離し、秘裂の上にちょこんと存在を誇示している肉芽に触れた。
「きゃ……あぁぁ……っ!!」
あまりに身体が跳ねたので、悟空は驚いた。
「い、いてぇのか?」
「ち、ちが……う……」
ふるふると首を振る様子に痛みは見られない。
もう一度悟空がその部分に触れると、吐息と共に軽く腰がひくついた。
「そっか。ここ気持ちいいんだな」
妙な気合を入れ、彼は肉芽を愛し始めた。
先ほど胸を舌で愛撫したときにがよく鳴いていたという理由で、
肉芽を口に含んで舌で転がし始める。
「あぁあんっ! や、はぁ……」
快楽で頭の中が真っ白になる。
は悟空の頭を押さえつけ、快楽を分散せようとしたがむしろ逆効果で。
ぴんと張った足先の感覚よりも与えられる快楽の方が強い。
色めいた声を耳にしながら、悟空は己の下腹部が熱くなっていることに気が付いていた。
その部分が脈打ち、の中に入りたいと切望しているのを感じる。
だが彼は彼女の乱れた姿をもっと見ていたくて、自身の誇張から意識を外して
肉芽を愛撫し続けた。
そうしながら、ゆっくりと指先を秘裂に入れてみる。
興味が先に立っての行為。
ビデオでもやっていたが、その時は指を4本入れていたように思う。
悟空はの内部を痛めつけるのではないかと危惧して、
1本だけ――ゆっくりゆっくり差し入れる。
とろりとした液体が指に絡みつく。
そっと入れたにもかかわらず、は顔をしかめた。
「やぁ……!! いっ……」
「いてぇのか……?」
肉芽から口唇を離し、心配そうな顔でを見るが指は抜かない。
最初の最初は痛がるだろうが、だからといって抜いてしまっては、
また痛がらせるとヤムチャに教えられていた。
悟空はそれを思い出して、指を引き抜かなかった。
痛みがなくなるまで動かさないようにし、肉芽だけを丹念に愛撫していく。
は己の中に彼の指が入っているという事実に羞恥を感じながらも、
無理をしないで待っていてくれることに幸せを抱いていた。
一向に異物感は抜けないが、肉芽への愛撫で快楽が押し寄せている。
「や、ああ……だめ、私……!!」
一気にやってきた高みに飲まれ、は身体の力を抜く。
――肉芽への愛撫だけで、果ててしまったのだ。
?」
「ご、ごめん……悟空」
指を抜かずに問う彼に、は申し訳なさそうにする。
受け入れる前に果ててしまったことを詫びるが、悟空は口の端を上げて笑った。
「でえじょうぶだって。……一度イったからって、やめなきゃなんねえワケじゃねえだろ?
 それに、オラやめるつもりねえからさ」
揚々と言い、指をゆっくり抜き差しし始める。
「あっ……ん」
達した直後の内部に新たな刺激が加えられ、ただでさえ果てたばかりで蜜が増えたその場所から
更なる愛液が流れ出てくる。
ちゅぷちゅぷと音を立て、1本の指で中の壁を擦り上げた。
「ごく……あぁ……」
愛液の効果か、さほど痛みを感じなくなっている。
悟空は秘裂にもう1本指を差し入れた。
「痛ぇか?」
「っ……だい、じょ、ぶ……」
無理矢理笑顔を作るが痛々しく、そして愛らしくて、彼は親指で肉芽を撫で擦りながら
キスを繰り返した。
「本当にダメだと思ったら言えよ?」
「う、ん……ふはぁ……」
鎖骨に吸い付き、痕を残す。
胸を、肉芽を、秘裂を愛撫しながらの快楽を育てていく。
悟空とて手馴れているわけではないから時折指が彷徨ってしまうけれど、でも、
互いの気持ちが温かくて、幸せで。
こんな風にして大好きな人と身体を重ねることが、とても嬉しい。
……もっと入れるぞ」
「ひぁあっ!」
あまりこなれていない2本目に付け加え、3本目の指を浸入させる。
狭い入り口は悟空の指で埋まっていた。
指先で中を擦ってやり、愛液の淫猥な音と共に出し入れを繰り返す。
の腰がひくひくと動くさまが目に映り、悟空を煽った。
今や彼の男のものは、はちきれんばかりに膨張している。
彼女の吐息を耳元に感じ、たまらず指を引き抜く。
滴る液体に目をやり、舌先で掬い取って舐めた。
かぁっと赤くなる
悟空にとっては気まぐれかもしれない行為でも、彼女にとっては恥ずかしいもので。
「なあ、指だけでいてぇみたいだから……凄く痛いかもしんねえ。どうする?」
問う彼の顔は困っていた。
――自身が認識しているかどうかは知らないが、結構切羽詰っているのではないだろうか。
はふっと笑み、悟空を抱きしめる。
真っ赤になりながらその言葉を口にした。
「……大丈夫だから、来て……悟空」


濡れそぼったその部分に、悟空の猛ったものが押し当てられた。
指などとは比べ物にならないほどのそれに、身体が強張る。
、力抜いた方がいいぞ……」
彼はそっと口付けを落とす。
とて、力を抜いた方がいいことは分かっている。
分かっているのだけれど、実際問題それができるかと言わればそれはとても難しくて。
軽く深呼吸をし、頷く。
できるだけ力を抜いて――彼を受け入れる態勢になった。
悟空は己のものをゆっくりと彼女の中に差し入れる。
散々愛撫して濡れていても、やはりきつい。
「あぁ……っ!!」
「ゆっくり入れっぞ……止まれって言ったら止まっから」
「ん……っ」
自然な息をしようと思ってもできない。
息が荒くなるのは快楽じゃなくて、痛みのせい。
それでもは悟空に引き抜けとは言わなかった。
質量のある彼のものが、ゆっくりゆっくり、の肉壁を擦りながら奥へと進んでいく。
――どれぐらいかかっただろう。
悟空は大きく息を吐いた。
「入った……みてぇだな」
「……よか、った……」
入ったからといって終わりではないのだが、は彼を受け入れられたことにホッとしていた。
悟空のモノの熱さと脈打つ感覚。
勿論痛みはあるけれど、それでも温かくて――熱くて気持ちいいと感じられる。
自分を内側から作り変えられていくようだと思った。
「……動いて、いいか?」
問う悟空。
は微笑んだ。
「……はい」


最初こそ痛みを考慮して動いていた悟空だったが、
次第に耐え切れなくなって腰の動きを早めていった。
の方も痛みより快楽の方が勝ってきて、喘ぎ声を上げて彼のものに喰らい付いている。
「あっあっあっ! やぁぁ……気持ちい………っ」
「オラも気持ちいいぞ……の中……すげぇ気持ちいい……」
しっかりと指を絡ませあい、腰を揺らす。
淫らに湿った音と喘ぎ声が音楽のように部屋に充満していた。
互いが発する熱気が、互いを刺激する。
普段では考えられない乱れた姿に、悟空は完全にやられていた。
口付けをし、胸の果実に吸い付き、散々声を上げさせる。
「オラ、どうにかなっちまいそうだ……っ!」
「あ、ああ……悟空…ごく、う…っ」
どんどん奥へ奥へと突き進んでくる熱い塊。
快楽を呼び起こす箇所を擦り上げられ、は甘い声を上げ続ける。
激しくなる腰の動きに、もはや思考は振り切れてしまっていた。
きゅぅ、と内壁が締め上げられる。
「だめぇ……も、もぉ……悟空っ……私……!!」
……!」
「ひぁあああん……っ!」
「っ……!!」

が先に果てた。
その際の締め上げに耐え切れず、悟空は腰をびくつかせ、
彼女の中に一滴残らず己の精液を流し込む。
ゆっくりと己のモノを引き出し、快楽の余韻で身体を震わせているをそっと抱きしめた。
「……、愛してる」
「……うん、私も悟空のこと、愛してるよ」
口唇を重ねあい、微笑んだ。





翌朝。
は起き上がれなかった。
ベッドに裸のままで寝転んだまま、その原因である悟空を見る。
彼はベッドの横に立って、申し訳ないような困ったような顔をしていた。
「……わ、わりぃ……その、つい」
「……いいけどね……」
悟空はを一度抱くだけは飽き足らず、その日のうちに5度も抱いた。
体力のありあまっている悟空はぴんぴんしているが、受け手側の
腰が痛いやら疲れるやらで、起き上がれない。
自分で治癒すれば大丈夫なので、現在横になりつつ自分を治療中だ。
「お願いだから、その……たくさんするのは、お仕事がない休みの日にしてね……?」
彼は頬を染めて頷いた。
「……め、面目ねえ……でもさぁ」
「?」
「……すっげえ可愛いから、オラ止まんなくなっちまう」
「ば……バカっ」
真っ赤な顔をして怒るの頬に彼は口付けた。
「なあ! 今日もやっていいか?」
無邪気に聞く。
朝っぱらからする会話でもないだろうに。
「うーっ……エッチ!」
にだけだからいいんだよー。もっと勉強すっかんな!」
……その発言に、先行き不安になるだったりした。

夫婦安泰である。





2004・7・8