Wedding Panic 2




「ブルマ、オラ腹減ったぞ」
 悟空のこの一言で、リビングに山盛りの料理が現れることとなった。
 朝っぱらから胸ヤケしそうな品々を、次から次へとかっ食らっていく悟空。
 今後の事を考えると少々不安になるだったが、子供の時も物凄い食欲だったので今更かとも思う。
 ブルマもも一緒に朝食を食べているが、彼と違って野菜サンドにコーヒーというごくごく簡潔なもの。
 それをパクついているを、悟空が覗き込んできた。
「んぐ……な、なに?」
 あまり食事中に顔を覗き込まれたりはしたくないのだが。
 が、彼はそんな事どこ吹く風で、
、もっと食わねえと倒れちまうぞ?」
 暢気に言う。
 心配してくれるのは嬉しいが、悟空の食欲を基準にして考えてもらっては困る。
 彼の食事量をが食べたとしたら、食事で死ぬ事になるだろう。
 昔から思っていた事だが、彼の胃袋は不思議だ。
 ……体以上の体積を絶対に食べているはずなのに、お腹一杯になって、もさして苦しそうではない。
 は微笑み、
「大丈夫、心配しないで」
 とだけ言った。
「そっかぁ? ならいいけどさあ」
 まだちょっと心配そうに、でも食事に戻る。
 そんな二人の様子を見て、ブルマがニヤニヤしながら物言いたげな表情をしていた。
 ……何よぅ。


 食事も一段落つき、改めて話に入る。
 が少々申し訳なさそうに話を始めた。
「ブルマ、あの……私の部屋の物、持って移動してもいいかな……」
 私物といっても、半分近くはブルマに買ってもらったものだ。
 流石に家具まで持って行こうとは思っていないが、それでも本やら何やらで、結構な量になる。
 勝手に持っていくのも気持ちが悪いし、許可を取るべきだろうと口にしたに、ブルマはパタパタと手を振った。
「まぁったく堅いんだから。の部屋のものなんだし、全部持って行ってよ」
 何なら家具も持っていってくれていいとまで言われたが、そこまではいい、と丁寧に断った。
 今までだって散々迷惑をかけているのに、これ以上の事を望むのは悪い気がして。
「いつまで経っても律儀よね」
「うーん、そうかな」
「ところで」
「?」
 急に会話を仕切りなおされ、きょとんとした顔になる悟空と
 ブルマは二人を見やり、話の先を続ける。
「あんたたち、式はどうするのよ」
「「式?」」
 二人してオウム返しにする。
 ついでに悟空は「式ってなんだ?」とお決まりのオオボケをかましてくれている。
 が簡単に説明すると、納得したように頷いたが。
 そんな二人にブルマは呆れた顔をしながら、
「やっぱり考えてなかったのねぇ」
 とため息混じりに言った。
 そう言われれば、これから暮らすこと――場所とか荷物――ばかりに気を取られていて、全く考えていなかった。
 は悟空にプロポーズされた事でかなり舞い上がっていた事は否めないし、悟空に関して言えば、そういう生活的な問題は全く二の次……どころか、完全に頭の中から払拭されている気がする。
 にしたって 
『付き合ってください』
『お願いします』
 という彼氏彼女という通過がなく、いきなりプロポーズをされて、思い切り了解してしまったため、結婚という認識が薄かったのは事実。
 勿論、は悟空の事が好きだし、文句などあろうはずもない。
 けれど何か……普通の人たちが送る経過を送っていないような気はする。
 この世界に来たときから、ウェディングドレスを着る事はないだろうと漠然と思っていたし、ましてや初恋が実るなんて……。

 考え込むに、きょん、としたままの悟空を見て、ブルマは嘆息する。
「まぁったくしょうがないわね、あんたたちは」
 ガリガリと頭を掻き、いきなりテーブルを平手で叩く。
 衝撃でテーブルの上の食器が鳴った。
 落ちるほどではないけれど。
「な、なんだよブルマ……」
 悟空が言うとブルマは二人に決意の表情を見せ、気合の入った声を上げた。
「三週間……いーえ二週間! 二週間で式を挙げさせてみせるッ! いいわね、今日から準備よ準備!!」
「へ、ちょ、ちょっとブルマ!?」
 が慌ててストップをかける。
 悟空の方は相変わらずキョトンとしたままだ。
 ヒートアップしているブルマに、冷静になれと声をかける
「式って、費用はどこから……それに時間的にかなり無茶が――」
「やりたいか、やりたくないか!」
 だむ、と再度テーブルを叩かれ、余りの勢いにびっくりしつつは悟空を見た。
 の方はどちらかと言えば、勿論やりたい。
 単なる形式的な儀式かもしれなくても、それがなくては認められない気がして。
 折角なのだし。
「悟空、どうしよう」
 質問に、彼は明るい声と表情を向けた。
「オラ、がやりてえなら、やる」
 それを受けたブルマが両手を叩いて音を鳴らし、立ち上がった。
「よーし、決まりね! 忙しくなるわよー。、ドレス作りに行くわよ! 孫くんはタキシードね! あーそれから招待状作らないとね。うーん、手が足りないからママにも手伝ってもらわないと……」
 一人でブツブツ言いながら、悟空とを引っ張っていくブルマ。
 は本気で二週間後にやるつもりなんだろうかと、こっそり汗するのだった。





2004・6・21