再会、天下一武道会!



 天下一武道会で久々に会った悟空に、ブルマと始めとする全員――ウーロンやプーアル、ランチ、亀仙人、少し遅れて現れたクリリンにヤムチャ、天津飯、餃子――は、驚きの色を隠せなかった。
 余りの変貌振りに、一瞬、感動も出遅れるほどで。
 ちびっ子だった悟空は、ブルマより背が大きくなっていた。
 物凄い成長振りである。

「とりあえず、エントリーしちまおうぜ」
 クリリンの言葉に出場する者たちは同意し、早々にエントリーを終えた。
 悟空は、しきりに周りをキョロキョロ見回しており、誰かを探しているように見受けられる。
 ヤムチャが、不思議そうに声をかけた。
「悟空、誰か探してるのか?」
「あ、ああ…約束したんだ」
 その様子にピンときたのか、ブルマが悟空に放しかけようと近づくと、こちらが先に口を開く前に、彼の方が質問してきた。
「なあブルマ、おめえんトコに――」
 その言葉を聞き、ブルマは不敵な笑みをこぼした。
「ふっふっふっ……でしょ? 私たちの後のタクシーに乗ったから、もうすぐ――あ、あれよ、多分」
 指した方向には、タクシーが一台。
 亀仙人とクリリンもランチも、『』 という名前を聞きつけてか、悟空とブルマの側に近寄ってきた。
 クリリンがブルマに問う。
「ね、ねえブルマさん。って――」
「クリリンと亀仙人さんとランチさんの知ってる 『』 よ。詳しい話は省くけど、ここ二年ぐらいウチにいたの」
「へぇ…」
 の事を思い出しているのか、クリリンが上を向く。
 その時タクシーのドアが開き、その音に、一同がじっと、今まさに出てこようとしている人物を見ていた。
 ブルマは笑みをたたえたまま、悟空とその人物を、チラチラ見ている。
「ありがとうございましたー」
 タクシーのおじちゃんにお礼を言う声が、悟空の耳を打つ。
 酷く、懐かしく感じる声。
 車から降りてくるその動作に、クリリンも亀仙人も、釘付けになっていた。

 下を短くした紺色のタンクトップの上に、オレンジ色で膝丈より下ほどの、ランニング調の服を身につけ、青っぽいズボンをはいている。

 すらりとした手足。
 黒く艶やかな髪は、左の方でバツ字のピンでとめられ、後は下ろされており、肩にかかるくらいの長さ。
 ぱっちりした目は、意志の強さを表しているようにも見える。

ー! こっちよー!」
「あーもう、疲れたよブルマ……っ?」

 ブルマに向けられていた目が、悟空をとらえた瞬間――二人は互いに、動きを止めてしまった。
 亀仙人とクリリン、ランチは、ブルマに「あれがちゃん!?」と驚きを示し、「そうよ」と軽く答えられていた。
 プーアルとウーロンは、悟空が動きを止めているのを、面白そうに見ている。
 今まで見た事がないほど、きょとん、としている時間が長いのだ。
 で、彼に駆け寄るでもなく、ゆっくりと側に歩いていく。
 サラサラの黒髪が、流れるように揺れた。

 悟空の目の前まで来ると、はじっと彼の顔を見る。
 二人の目線が、交差した。

「…、か…?」
「悟空…?」

 暫くの間があって――それから、泣きそうになっているを、悟空がいきなり、嬉しそうに抱きしめる。
「ははっ!! 久しぶりだな、!! オラ、驚いちまったぞ。デカくなったなー」
「バカッ。悟空の方が大きくなったじゃない…。私、ブルマと同じぐらいだもん…っ…」
 肩を震わせ、胸の前で彼の服を掴み、一生懸命に泣くのをこらえていたのだが――
「会いたかったぞー」
「…っ…私も……会いたかったよ…!」
 ついに我慢しきれず、ポロポロと涙をこぼしてしまった。
 やっぱ泣いたかぁと、明るく言う悟空は、彼女を抱きしめたまま、ぽんぽんと背中を優しく叩いてやる。
 は声を押し殺し、泣きながら、彼の手の暖かさと――体温を感じていた。


 落ち着いたをヤムチャたちに紹介するブルマ。
 その一人一人と握手を交わし、「よろしく!」 と、元気よく挨拶をする。
 亀仙人とクリリン、ランチが、小さな頃とは違った――元気な雰囲気を身につけたに、少々戸惑う。
 亀仙人は、彼女が心身ともに強くなったのだろうと察し、師として嬉しく思った。
 悟空が、ふと、に問う。
「なあ、おめえは出ねえのか?」
 は苦笑いしながら、手を横に振った。
「ムリムリ〜、予選落ちするって…」
 本当は出てもよかったし、それだけの力量も持ち合わせていはしたが、父――界王が、ブルマ宅にいる間に、二度ほど訪問した際、激しく反対したので、やむなく諦めたのだった。
 名残惜しそうな悟空に、「私の分も頑張ってねっ」と言うと、彼は明るく「おう!」と返した。

 その後、予選のために、悟空たちと別れた一行は、予選が終わるまで、集まって話しでもしている事に。
 は、初めて見る天下一武道会の会場にわくわくしながらも、何か、落ち着かなさを感じていた。
 ブルマ達と一緒に、仮設の喫茶店で座ってジュースを飲みつつ、目をつむり、界王の能力の一つである、遠くを見る目――要するに千里眼で予選を見ていた。
(悟空、全然本気出してないなあ…やっぱり……ん?)
 ふと気づく。
 一人の可愛い女の子が、悟空に話しかけ、それから何やら怒って立ち去った事に。
 見るだけなので、話し声は聞こえないが――あの子を見た瞬間、不安が押し寄せてきた。

(……気のせい、気のせい)

 不安を誤魔化すように言い聞かせていると、突然ウーロンが声をかけてきて、ビジョンが、パッと消えた。
、何してるんだぁ?」
「え、別に…」
 濁すように笑いながら言うと、ジュースをこくこくと飲む。

 ――不安は、気のせいだと、言い聞かせて。




私が幼少の頃に衝撃を受けたシーン。

2004・5・6