コイバナ!! 「ブルマ〜、今日の患者さん終わったから、整備の方手伝う」 「そう? じゃあ、そこの…えっと、青いカプセルのスクーター、ちょっと見て」 「はーい」 は服が油で汚れないよう、上から作業着を羽織ると、ホイポイカプセルからスクーターを出し、整備に取り掛かった。 ブルマの家の居候となったは、自分の出来る範囲で、やれる事を精一杯して生活していた。 主に午前中から午後半ばにかけて、己の能力の一つである、『治癒力』で、軽い怪我をしている人や、老人の慢性的な痛みに対して治療を施し、診療代をもらっていた。 始めは、カプセルコーポレーションの家の中でやっていたのだが、機密上の問題や、患者の人数が増えてきた事で、何か問題が起きては困るとのの配慮で、敷地内にある庭に、治療の間だけカプセルで小さな家を作り、そこで診療をしている。 それが終わると、ブルマと一緒になって調子の悪い機械の整備や、設計図の整理等、雑用をこなす事もあれば、独学で様々な勉強に励む事もある。 夕食後には必ず修行をし、お風呂に入って一息ついて寝る――という感じの毎日。 土、日曜は主に修行していたり…まあ、ブルマに連れ出されたりする事もあるが。 夕食後、修行部屋に向かおうとするを、ブルマが引き止めた。 「ー、たまには食後茶にでも付き合いなさいよ」 「別にいいけど…リビング?」 「ううん、テラス」 何か特別な話があるようには思えなかったが、たまには息抜きをしたっていいだろう。 はブルマと一緒にテラスへ行くと、イスに腰掛ける。 オレンジジュースを二人分用意すると、ブルマは向かいに座った。 はというと、そこから見える、夜空の星を眺めていた。 さすがに都から見る星空は、天界で見たものとは違い、元いた地球に似通った見え方だが、それでもこちらの方が透き通って見える気がする。 ぼっぉと空を見上げているに、ブルマはニヤニヤしながら言った。 「孫くんの事でも、考えてんの?」 「ちっ、違うって……」 ある意味、それもアタリではあるのだが。 「ねえ、何でそんなに頑張るの?」 「うーん…」 突然のブルマの質問に、は驚きつつも考えた。 何で頑張るか――……。 は少し苦笑いすると、全然関係なさそうな事を話した。 自分が向こうの地球で、イジメられっ子だった事。 泣く事を押し殺した、非常に子供らしくない子だった事。 それから悟空に会って、彼の笑顔に力をもらった事、などなど。 「弱い自分がいて…いっつも心が悲鳴を上げると、逃げ場を探してた。悟空の笑顔があればって…思ってた。だから、またこっちに来た時…悟空に会えて嬉しかったけど、また、逃げ出して来たんだって、思った」 一息つき、ジュースを口にする。 その様子を、ブルマはじっと見ていた。 「天界でキスした後、悟空が傍にいるだけで、集中できなくなって…今までの気持ちが溢れちゃって…これじゃ、駄目だーって思って」 「何で? いいじゃない。女の子なんだし、好きになったら誰だって…」 「弱い心のままで、いたくないって思ったの。それに、悟空に負けたくないっていうか…一緒にいても恥ずかしくない人間になりたいって思って…」 人を好きになると、心は、弱くも強くもなる。 でも、今のに必要だと思われたのは、彼に会える状況下において、それでも自分で頑張る――行動を起こす――という、恋愛とは別の所の強さ。 悟空に負けぬよう。 恥じぬよう。 「前は会えなかったからこそ、彼が心の支えでよかった。でも今は違う。泣くぐらいキツくてもいいから――悟空に負けないぐらいの、心の強さが、欲しい」 真剣な表情に、ブルマは 「うーん」 と唸った。 「孫くんの事、凄く好きなのねー」 「……うん」 顔を赤くしながら、小さく頷くに、ブルマはポンッと手を打った。 「よぅし、私も全面的に協力するわよー」 「へ?」 まだちびっ子身長のままのだが、一緒にいるウーロンやプーアルが、今でも可愛いと言うぐらいなのだ。 この先、身長が伸びたら――考えるだけで、楽しくなってくる。 「ふふふっ、孫くんが驚くぐらい、可愛くしてあげちゃうんだから!!」 「あははは、ありがと…」 勢いづくブルマに、笑いをこぼす。 「そういえば、ヤムチャさんってブルマの恋人は?」 「アイツの事はいーの! とにかくっ、頑張りましょう!!」 「お…おーう。でも、お化粧とか勘弁ね」 何かはぐらされた感があるが…。 でも、嬉しい。 自分の事に一生懸命になってくれる友人がいるのは…。 約二年後の天下一武道会。 自分は一体、どうなっているのだろう。 星空を見上げながら、そんな事を思った――。 次回、天下一武道会まで飛びます。 2004・4・4 |