鍛錬中!・前編 悟空とは横に並んで、精神を鍛える修行をしていた。 界王という父親を通し、ここに残ると決意した彼女の心にもはや迷いはなく、心身ともに、強くなろうという気迫さえある。 さしあたって彼女がやるべき事は、自身の能力を上手く引き出し、コントロールする事。 神に『組み手をしてみたい』と進言してみたところ、『気の使い方が分からなければ、意味がない』と言われてしまい……仕方なく、今に至る。 あぐらをかき、胸の前で両手を合わせ、とにかく集中する。 空間移動と空間適応は、集中すればそこそこできているようなので、サイキック部類の、物質破壊(変質)とバリア(物を止める)の力を探ってみる事に。 集中しているうち、頭の中がすっとするのが分かった。 何も考えていない訳ではない。 悟りを開いたというのと――体感した事はないが似ているのではないかと思う。 自身はそこにありながら、世界が白く感じられた。 何か変化があれば、直ぐに分かってしまう――そんな世界。 「、もう足を崩してよいぞ」 「え?」 神にそう言われ、足を崩す。 悟空の方は、まだ集中している。 は神を見上げると、とりあえず、立ち上がった。 余談だが、始め、ここに来た時は学校の制服だったが、今は動きやすいよう、シャツとスパッツである。 「…お前は、別の修行に移るか。精神鍛錬は、もう充分だろう…」 「げげっ、、すげえなー」 悟空が目を開けて、驚きの声を上げると、ミスター・ポポが 「動く、だめ」 すかさずカツを入れていた。 くすくす笑いつつ、は次の神の言葉を待つ。 「さて、。お父上の言葉を踏まえ、己で己を鍛えよ」 「…え、神様、父さんの事――」 「無論、知っておる」 「そ、そうですよね、神様…だもんね…」 神は『自由にここを使うといい』と言うと、四苦八苦している悟空の前に戻っていった。 それにしても…。 (……どうしよっかなぁ) 自由に使え、といわれても……何をどうしたらいいのか。 とりあえず花壇にある小さな小石を掴み、床に置いてそれを破壊しようとした。 ……が、全く動かない。 「…うーん」 壊れろ! と声をかけても無意味そうだっし…と、そこまで考えて、とある事を思い出した。 亀仙人の、かつての一言を。 「…全ての動作は、繋がっている――」 ポツリ、呟く。 そういえば、治癒力を使う時は、どこを意識していただろう。 (――手) は右手をまじまじ見ると、あんまり肩に力をいれず、石に手をかざし、念じた。 (壊れろ!) 瞬間、石はまるで水風船が爆発したかのように、ぱぁんっとはじけ飛んでしまった。 粉々になったつぶてが、あちこちにバラけている。 目をパチパチさせ、砕けたものを見て――それから自分の手を見た。 「…力の封印がないって、凄いマズイんじゃ…」 父親がかけていた、封印を解いたら、途端にこれである。 思わず不安になってしまった。 しかし、さっきのは手のひらより小さな石。 もっと大きな物だと、駄目かもしれない。 そう思ったは、ミスター・ポポに声をかけた。 「ね、ねえ、ミスター・ポポ、大きい石みたいなの、あるかなぁ」 「うーん…神様」 「うむ」 神が手をかざすと、の今いる位置より少し離れた場所に、彼女の身長よりも大きい石が三つ、現れた。 「ありがとうっ!!」 よしっと気合を込めると、まず、一番左にある石の前に立った。 「ん――……」 (壊れろぉっ!) 少しだけ意識をこめただけで、石は粉々になり、粉砕されてしまった。 石つぶてがに向かって吹っ飛んできたが、驚いて身をかがめると、彼女の体を青い球のような物が包み込み、飛んできたつぶてを全て弾いた。 それを見ていた神とミスター・ポポ、いつの間にか目を開けていた悟空が、をじっと見つめる。 「…は、はは…」 彼女は苦笑いし、真ん中の石に向かった。 物質破壊能力に限らず、どれも集中力の使い方がポイントらしい。 どうも破壊というより、変質の力の方が強いらしく、粉々に砕けた石を変質の力でぐにょぐにょにして、元の形に戻す事もできた。 例えて言うなら、悟空の如意棒のような物も作れてしまう。 己の手を離れれば、普通の長い棒に戻ってしまうようだったが。 世間一般の超能力よろしく、何か物を浮かせたりする事も安易だったし…。 ……生活が、いきなり変化しすぎだ。 とはいえ、何をするにも限度はあろうが。 バリアの方は、とにかく集中しなければ張れない事が判明。 一瞬であれば危険に本能が反応し、勝手に張ってくれるようだが、長い時間ともなると話は別らしく。 悟空とミスター・ポポが組み手をしている時、神に協力してもらい、目からビーム (!?)をバリアで防いでいたのだが、集中力が揺らいだ瞬間、解けてしまって痛い思いをした。 ともかく何とかかんとか二日、三日ほどで、は大分、自分のサイキック力を操れるようになった。 2003・9・12 back |