チーム紹介



 呼ばれて素直に側に行くなんていう殊勝な行動は起こさない。
 ましてや、呼んでいるのはキライな男なのだから。
 は呼んでいるらしいバーダックを完全に無視してそっぽを向いた。
 しかしそんなこと、全く気にしない彼はに近寄ってくると彼女の腕を引っ張った。
「ちょっ……何なのよ!」
 わざわざカウンターから歩いて人を呼びに来るとは。
 ここのところ、強引さが増している気がする。
 嫌がるを無視して、一緒に席についているシルパとリィフに声をかけた。
「おい、こいつ借りていくぞ」
「ええ、どうぞ」
 ひらひらと手を振るリィフ。
 非常に羨ましそうな目線を向けているシルパ。
 バーダックは答えを受け、を引き連れてカウンターへと戻った。

 カウンター席へ無理矢理座らせられたは、深く深くため息をついた。
 そんな彼女の姿を見て、右隣に座っていた女性が苦笑いする。
「大変だな、アンタ……」
「……ほんとよ」
 がっくりしているの左隣にはバーダックがいて、さも当然の如く酒を飲んでいる。
 一体全体、何のために自分をここへ引っ張ってきたのかと眉根を寄せた。
 彼はの視線に気が付いたらしい。
「こいつらは俺の仲間でな。ちょっと紹介してやろうと思ってよ」
 軽く言い、空になったジョッキをマスターに渡してお代わりをねだる。
 はため息をつき、隣に座った女性を見た。
 別にバーダックの仲間に紹介されるような言われはないが、彼以外は別に嫌いじゃない。
 それに、彼の仲間と仲良くなれば――もしかしたらバーダックを止めてくれるかもしれないという、ちょっとばかりの期待もあったりした。
「あたしは、バーダックに付きまとわれて迷惑してる女」
 すっぱり言うに、女性が笑った。
「あはは!! アンタ面白いねェ。アタイはセリパ。バーダックの隣にいるのがトーマ。今ここにはいないけど、パンプーキンってのとトテッポってヤローがいて、大抵5人で活動してるんだ」
「こっちはあそこにいるシルパとリィフ、それと私の女3人」
 別のテーブルについている2人示す。
「っても、大抵は個人的にどっかのチームに配属されたりすんだけどね」
「だからバーダックと2人だけで、ってのもあるのか」
 セリパの言葉には凄く嫌そうな顔をした。
 とんでもなく嫌悪のにじみ出た表情に、首を傾げる。
「何だ、冗談じゃなくて本当に嫌いだったのか」
「冗談だと思ったの? この男、何も言ってないのね」
 じろりと隣にいるバーダックを見やると、今までトーマと話をしていた彼の目がこちらを向いた。
 ついでにトーマもを見る。
 何だか3人の目線が集まっていているのは、少しだけ居心地が悪い気がする。
 最初に視線を外したのはトーマだった。
 バーダックに怪訝な目を向ける。
「おいバーダック。お前彼女に何かしたのか?」
 しかし彼は何処吹く風で口の端を上げると、先ほどもらったばかりの酒をぐいっと飲んだ。
 もセリパに頼んでもらって来たばかりの酒をちまちまと飲む。
「俺は何もしちゃいねえよ」
「何もしてなくて彼女がそこまで嫌がるか?」
 セリパが体をカウンターに預けて問うが、それでもバーダックは気にした風もない。
 何だか腹が立ってきた。
 確かに彼にしてみれば、自分の妹のことなど忘れているのかも知れないし、既に過去の産物なのかも知れない。
 けれどにとってはそれは重大なことで。
 どうしてこんなに腹立たしいのか、自信にもよく分からない。
 ――それとも、何かしらの……謝罪なり説明なりをして欲しいと望んでいるのだろうか。
 妹の死に立ち会ったと思われる男。
 妹を痛めつけたと噂される男。
 何度問い詰めても何も答えてくれないような男に、それでもまだ、何か期待しているのだろうか。
 妹は確かに死んだ。
 確かな説明が欲しいと望みながら、けれど説明されたとしても、決してこの男を許せないだろうという気持ちもあった。
 もう何年もバーダックを憎んできたのだ。
 今更本当のことを言われても、よほどでなければ気持ちが動くことはないだろう。
 妹が好きだった男を憎むなんて、それこそ本当は本意ではないのに。

 俯いて怒りを押し殺しているにセリパが問う。
「ねえ、アンタ本当にどうしてそんなにバーダックを嫌うのさ」
「……女ったらしだって噂だからよ」
 そのセリフを聞いて、セリパとトーマは顔を見合わせた。
 ……間違ってないかも知れない、と。





本来、サイヤ人というものは、親兄弟などおかまいなしの人種だと思いますが。
夢主はちょっとイレギュラーな感じで。…ホントはバダ、もっとクールなんだろうけどなぁ;;

2005・5・17