最悪の仕事の後



「全く、冗談じゃないと思わない!? あたしはもう絶対ぜぇぇったいにアイツなんかと仕事行かないわよ!フリーザ様に直訴して、ことごとく別の仕事に回してもらうわ!!」
 文句大全開のに、一緒に飲んでいた友人のシルパとリィフは互いの顔を見合わせた。

 バーダックと2人だけで仕事を終えたは、別の意味で疲れきって惑星べジータに帰って来た。
 帰るなり自室にこもって丸1日出て来なかった。
 かと思えば、その翌日には女友達を引き出して飲みつつ文句大全開。
 何があったのかと考えたくもなる。
 コップが割れるのではないかと思えるほど大きな音を立てて、テーブルの上に飲みかけのグラスを置く。
 ……テーブルがちょっと傾いた。
「ねえ、ちょっと落ち着きなよ」
 リィフが肩をぼすぼすと叩く。
 今度はテーブルの上に突っ伏した。
 ……一体何があったというのだ。
「ねえ、あんたどうしたってのぉ?」
「バーダック嫌いに磨きがかかってる気がするわね」
 リィフの言葉に、は突っ伏していた顔を上げた。
 半ば怒りに満ちた目である。
「そうよっ! あたしはアイツなんてダイッキライなんだからね!!」
「だから、何で」
 怒りの形相を2人に向け、は説明をしだした。

 惑星ザッパで、やはりいきなり無茶苦茶言われたということ。
 鬼ごっこという約束で勝負を受けたこと。
 いきなりエネルギー弾を打ち出してきて、負けてしまったこと。
 その上、襲われそうになったこと。

「……いいなぁ
 シルパは何故だかバーダック贔屓である。
 羨ましそうにを見た。
 だが、にしてみればバーダックは人災、天災の類だ。
 羨ましがられても全く嬉しくない。
「でもさぁ、戦いを望まれたからって何でそんなにキライになるわけ?」
 リィフが言う。もっともなことではあった。
 サイヤ人は戦闘種族――戦士だ。
 勿論その血はにだって流れているし、彼女自身、戦いが嫌いではない。
 むしろ好きな方だ。
 だが……バーダックは群を抜いている。
 戦いがメインなので、女遊びはしても、本気にはならないのだという風評だ。
 は酒を煽ると、ぶつぶつと言い出した。
 バーダックがなぜそこまで嫌いなのかという理由を。
「……アイツ、私の妹を痛めつけやがったのよ」


 には1つ年下の妹がいた。
 一般にサイヤ人は親殺しすらするという人種なのだが、は妹をいたく可愛がっていた。
 妹の方もを尊敬していた。
 その妹に好きな男ができたと知って、は両手ばなしで喜んだものだ。
 妹が好きだった男はバーダック。
 最下級戦士である彼だったが、実際の彼の能力は下級戦士とはいえない。
 力もさることながら、あの突き放したような性格がなぜか妹はお気に入りだったようだ。
 一緒に仕事をしたといえば嬉しそうに笑い、一緒に酒を飲んだといえば喜び。
 それなのに。
 あの男は妹を散々いたぶった挙句に、任務の最中に致命傷を受けた妹を見殺しにしたのだと聞いた。
 ……それが真実かどうかなどには分からない。
 だが事実であれ嘘であれ、妹が死んだことは間違いなくて。
 幾ら問い詰めても真実どころか聞く耳すら持たないバーダックに、はついにぶち切れた。
 ところが、が彼を敵視するようになって以来、彼はに構い始めた。
 どんなに無視しても、どんなに文句を言っても、構うことを止めない。
 ついには仕事の管理をする者たちですら、とバーダックは相性がいいらしいから、一緒に仕事させよう≠ネどというバカみたいな考えを持ち始めた。
 彼女にしてみれば苦痛以外の何物でもないのだが、そんなこと回りは一切気にしない。
 結果、とバーダックは一緒にいることが多くなった次第だ。

「……妹ねぇ」
 シルパがこくこくと酒を飲む。リィフも同じように酒を煽った。
「ま、アンタと妹は仲よかったからね」
「そいうことで、私はアイツが嫌いなのよ。以上説明終わり」
「……でさ、気分悪いとこ更に悪くするかも知れないけど」
「ん?」
「……バーダック呼んでるよ」
 見ればカウンターの方で飲んでいるバーダックが、ニヒルな笑いを称えて手招きしている。
 の周りの空気が一気に冷えたという。








そんな無茶な設定。相変らずの無茶苦茶ぶりですが…頑張ります、はい。
ギャグ系なのかマジメなのかといわれれば、どちらかと言うとマジメな話ですよ…
シリアスには見えないだろうけども。

2004・9・14