最悪の仕事 惑星べジータ。 サイヤ人の拠点とも言えるこの星のとある酒場に、その少女……いや女性はいた。 友人と共にテーブルにつき、アルコール度の低い酒をくぴくぴと飲んでいた。 頬杖をつき、幾度となくため息を吐き出す。 回数を増すごとに深さも増していくそれに、友人の一人であるリイフが眉根を寄せた。 「ちょっと。さっきから何なのよ、そのため息のオンパレードは」 リイフは、たむ、と飲んでいた酒のグラスを置くと、じとっとした目でを見た。 それに同意を示したもう一人の友人、シルパも既に空になったジョッキを置き、身を乗り出してきた。 二人とも、年齢の違いはともかくとして髪型はとても似ていた。 戦うのに邪魔だとかで、シルパの髪はショートより少し長め程度だし、リイフは完全にショートヘア。 その二人の間に挟まっただけは、長い黒髪を保持していた。 一つにくくり、上げてテールにしてある。 周りの馬鹿笑いを無視して、もう一つため息をついた。 「……ため息も出るわよ」 「何? 次の仕事のことぉ?」 シルパの問いに、はまたしてもため息と共に頷いた。 そこまで辛い仕事先に配属されたのだろうかと訝る二人。 下級戦士に、そんな馬鹿みたいにレベルの高い星の侵略を任すことはないと思うのだが。 しかし、の問題は星のレベル云々ではなかった。 「仕事はいいのよ、仕事はっ。その一緒に行く相手が問題なのッ!」 一緒に仕事に行く相手が大問題なのだという彼女の顔は、本当に嫌がっている。 はて、と友人二人は首をかしげた。 はむっつりした顔をしながら、仕事の内容を口にした。 次の仕事は惑星ザッパ。 出発は明日(みょうにち)。 惑星に激しく脅威となる強力な敵はなし。 これだけ聞くと別に問題がないように思えたが、は憎々しげに付け加えた。 「でもって、今回一緒に派遣されるのはバーダック」 バーダック、という名前を聞いた瞬間、リイフは 「嘘!」 という声をあげ、シルパにいたっては 「きゃ〜!」 と、何ともよく分からない悲鳴を上げた。 結局のところ、どちらも歓喜の声だったりするのだが。 友人二人はに詰め寄り、頭を小突く。 「いいじゃないの! 何が不満なのよぉ」 「そうよ、いいじゃない!」 矢次に言葉を言われるが、は眉根を寄せて思い切り二人を振り払う。 「冗談ッ! 不満だらけよ。アイツと二人っきりなのよ?」 「この時を利用してモノにしちゃえばいいじゃなぁい」 恐ろしい事を言うシルパ。 の背を、ぞくぞくしたものが走る。 「うげぇ、恐ろしいこと言わないで」 ぶるぶると頭を振った。 「何、そんな嫌いなの」 「だってあたし、前アイツと一緒に仕事行って、エライ目に合ったんだから」 向こうは覚えていないだろうが、は忘れない。 あの男は以前一緒に仕事した時、行った先の敵が余りにも歯ごたえがなく、一日とたらずに全滅してしまったからといって、いきなり 『貴様、暇つぶしに俺と戦え』 とか言って攻撃してきやがったのだ、あの男っ! 確かにサイヤ人は戦闘民族で、好戦的なのだが…… それを抜きにしたってバーダックは極度の戦闘狂だ。 アレに対して、女がきゃーきゃー言ったり、いい男だと褒め称えるその神経が分からない。 いや、自分がおかしいのか。 戦うことは好きだが、激しく好戦的とはいい難い気がするし。 「……まあ、そんなワケで」 「いいなぁ、私が代わりたいよ」 次の酒を頼みながら、シルパは恋慕のため息をついた。 ……理解不能だ。 「是非、代わって欲しいね」 上司(フリーザ)の命令だから、どうにもならないのだが。 「よう、またよろしくな」 テーブルのすれ違い様に声をかけられる。 バーダックが口の端を上げ、を見て、すぐに立ち去って行ったのだった。 「……ヨロシクされたくない」 の呟きは、友人二人の激しく悶える声に遮られ、彼には届かなかった。 殆どバダが出てきてませんねー、すみません。 さんの初期年齢は18歳だったりします。…酒飲むんじゃないよ…(汗) 2004・7・13 戻 |